75 魚人族の住みか
突然、戦艦並みの大きな船が、水中を進んで自分達の住みかへと近づいて来たので、魚人族は警戒しながら穴から出て来る。
「なんか、みんな槍構えているんだけど。」
「そりゃそうだよ。自分達のテリトリーに、こんな得体の知れない船が近づいてくれば、誰だって警戒するよ。」
今までずっと黙っていたレフィが、少しあきれぎみに言う。
「あー、アクトン、聞こえてるか?アタイは人魚族のマリンだ。」
マリンが、船についている拡声器を使って喋りかける。
「アクトンて誰?」
「ギガトってのがここのリーダーだったんだが、今は体の調子が悪いらしくて、彼の代わりにアクトンが代理でしきっているんだ。」
何か、胡散臭い話になってきたね。
しばらくすると、人魚族とは逆の頭が魚で体が人族の姿をした者達がワタシ達の所へやって来る。
「おい、マリン。そんな馬鹿でかい船で何しに来やがった。おまけに陸上人何かを大勢連れて来やがって。」
先頭の一番高そうな槍を持った、おそらくこいつがアクトンと思われる者が話しをしてきた。
「おたくらが、アタイ達へ文句があるみたいだから、わざわざこうして出向いてやったんだよ。」
アクトンは少し考えるそぶりをして、
「そうか、それじゃあんたらを客人扱いで、住みかへ招くとしよう。しかし、中へ入るのは女だけにしてくれ。」
ん?何か怪しいぞ。
「シズク、何か企んでいるかもしれないから、調べてくれる?」
「かしこまりました。ここは水の中なので、ディーネに調べて貰いましょう。」
いつの間にか、ディーネの姿があった。
「アカリ様、私にお任せください。」
そう言うとディーネは、水の中へと消えていった。
「今、住みかの様子を調べに行ったのでしょう。」
「アクトン、なんで女だけしか入っては駄目なんだ。」
マリンが当然の事を聞く。
「そこのごついドワーフどもが、何をするか分からないんでな。」
ワタシは腕輪がピンク色に変わっているのに気づいた。これはアクトンって奴が、マリンの質問を誤魔化している証拠だね。
「まあ、私達がどうにかなるわけないでしょう。アカリ、シズク行くよ。」
レフィは売られた喧嘩を買うタイプだからね。
「そうですよ。何かあっても私にお任せください。」
サーシャも顔に似合わず好戦的なタイプだよ。
「あ、行く前に結界で水を防がないと。」
ワタシも含めて4人に結界を張る。マリンは当然水の中でも平気だからいらないよ。
「では、行くとしますか。」
水の中をアクトンに案内されながら、彼らの穴の中へワタシ達は入った。
「なんで陸上人が水の中でも普通でいられるんだ?」
彼の質問に誰も答えない。皆無視しているね。
そして海の中なのに、机と椅子がある会議室みたいな所へワタシ達は通される。
(ディーネ)
私は水に同化して、彼らの住みかへ潜り込みました。
丁度、見張りと思われる2人の魚人族が話をしているので、盗み聞きしてみます。
「奴等から砂糖や塩だけでなく、あの船まで奪えるとわな。」
ん?どういう事でしょうか。
「奴等から全部奪ったら、マリーナは俺のもんだぜ。」
「そりゃねえぜ兄貴。」
「うるせぇ、お前は他の人魚で我慢しろ。」
「ちぇ、しょうがねえ兄貴だぜ。」
大分、読めてきましたね。どうやら魚人族は、マリーナという者を人質に使って、マリン達から全ての物を、奪うつもりでいるみたいですね。
そして彼らを通り過ぎて、私は住みかの一番奥へとやって来ました。
そこは鉄格子の牢屋があり、番人が2人います。彼らに騒がれるとまずいので、とりあえず気絶させましょうか。
スリープの魔法で2人の門番は、糸の切れた人形のように倒れる。
牢屋は2つあって、1つには魚人族が10人ほど入れられており、もう1つ牢屋は、気絶させられた人魚が入れられていますね。
私は魚人族に姿を見せて、
「私は水の精霊のディーネと言いますが、貴方達は何故そこにいれられているのですか?」
彼らは、目の前に私が突然現れたので驚いているようですね。
「ディーネ様、返答が遅れて申し訳ありません。僕はここの魚人族のリーダーをしている、ギガトという者です。」
彼は何とか我にかえると、私に挨拶をしてくれました。
「僕にはアクトンという部下がいまして、そいつにここを乗っ取られてしまったのです。それで彼らは邪魔な僕らを牢屋へ入れたんです。」
「そうですか。ところで向こうの牢屋へ入れられている人魚は、どなたなのか分かりますか?」
「はい。彼女はマリーナという人魚で、マリンの知り合いです。アクトンは彼女を盾にして、自分の言う事をマリンに利かせる魂胆みたいなんです。」
それなら、人質を無くしてしまえば良いですね。
「少し待っててください。」
私は今聞いたことを、シズクに念話で伝える。
―そうですか。彼女は魚人族にバレないようにして、船まで連れてきてください。―
―捕まっている魚人族はどうしましょうか?―
―鍵だけ開けてあげて、後は彼らの判断に任せましょう。―
―分かりました。―
「貴方達に聞きますが、この牢屋の鍵を開けて欲しいですか?」
「もちろんです。どうかお願いします。」
私は鍵を開けました。
「ディーネ様、有り難うございます。」
「こちらは私が連れていきますから。」
そして私はマリーナを連れて、ヤマト号へテレポートしました。




