74 ヤマト号の処女航海
収穫祭から数日後、ついに船が完成した。
「アカリ代表、やっと船が完成したぜ。」
ドランが報告に来たので、ワタシとシズクは船を見る為に工業区へ向かった。
「船の名前はヤマト号にしたからな。」
ドランよ。完全にアースの本から取って着けた名前だろ。
名前は置いといて、ワタシは大型の漁船ぐらいをイメージしていたのだけど、そのヤマト号は小型の戦艦並みの大きさだった。
それが今、シルフィや他の風の精霊達によって、工業区からディーネの湖まで、空中に浮かんで運ばれている。
「アカリ様~、凄い大きさだよね~。」
シルフィにとってもヤマト号はでかいらしい。
普通では考えられない光景をオリンピアの住民は、みんなが固まったまま驚いた状態で見ていた。
そしてヤマト号がディーネの湖まで到着すると、ゆっくりと着水した。湖の水はディーネのお陰で全然溢れないから不思議だ。
船の大きさに、急きょアルゴス港まで続く川の広さと深さを5倍に広げられた。
「ヤマト号もこの広さなら川を進んで行けるぜ。」
ドランは川の広さまで計算して作ってなかったみたいだ。
「しかし、こんなにでかくしなくても良かったんじゃない?」
「大型の水の魔石を6つも使ってんだぜ。このくらい大きくしなきゃ、もったいねえよ。」
あまりでかくすると、小回りが聞かなくなると想うんだけどね。
「後は人魚族に船の操作を教えて、操縦してもらえばばっちりよ。ヤマト号の船内は、彼女達の為に全て広めに作ったんだぜ。」
川の方を見ると、船が出来上がった連絡を受けたのか、マリンが他の人魚族を引き連れてやって来た。
「船を見に来たぞ。」
マリンは一応ワタシへ挨拶をしているが、明らかに目の前の船の大きさに意識を持っていかれちゃってるね。
「ワタシ達も予想よりもかなり大きくて、驚いているんだよ。」
「あんな大きな船が水の上に浮いて走るのか?」
「いや、走るも何もあの船は、貴方達人魚族だけで操縦するんだよ。」
「どうもそうらしいな。シズクの念話で聞いたよ。本当にアタイ達に扱えるのかな?」
「ちゃんと人魚族の体に合わせて作られているんだって。あと、船の名前はヤマト号ね。」
それから1週間、ドラン達の指導のもと、マリン達はヤマト号の操縦を一応、一通り覚えたようだ。
試運転で湖を1周する時に子供達が乗せて貰って、ワタシに嬉しそうに自慢していたよ。
そしていよいよ海に出発することになった。ワタシ達の中でヤマト号に乗るのは、ワタシ、シズク、レフィ、サーシャのハーレムメンバーで決まった。他には船の操縦をする人魚族とドラン達が乗るよ。
いつものごとく、ライとベイスにはワタシ達の留守を守って貰う。
「それじゃ出発しようか?」
「了解だ。ヤマト全速前進!」
マリンの掛け声で船が進み出す。
「行ってくるね~。」
見送りに来ていた子供達に手を振って答える。
向こうからも手を振り返してくれたが、直ぐに子供達の姿が見えなくなった。
「シズク、これって魔石で動いているから凄く静かなのかな?しかも、全然揺れないし。」
「魔法で揺れないように制御しているみたいですね。ドランが、高度の重力魔法を使えるみたいです。」
この星の者でも重力を知っているのか。それは意外だね。
しばらく進んでいると、アルゴス港が見えてきた。
「久しぶりに来たけど、随分と賑やかになったね。」
前見たときは、まだ開発途中って感じだった
けど、今は建物が沢山建っているし、道も綺麗に整備されている。
透き通る海の中にも、彼女達の家が沢山建っていて、その真ん中にひとまわり大きな神殿のような建物が建っていた。
「あの真ん中の建物は何?」
「あれはオリンピアの教会にある女神ヒカリ様の像と、同じものを祀った人魚族の神殿だな。」
あれは母さまの特製だよ。
「ベイス殿に似たものを頼んで作って貰ったんだ。」
どうして人魚族全員が、ワタシの信者になったのか理由が分かった気がするよ。
「それじゃあこのまま、マリン達を気に入らないっていう連中の所へ向かおう。」
そしてヤマト号は、アルゴス港から外海へ出た。
風と景色を楽しむ為に、直ぐには潜らずに海上を進んだ。
「シズク、船のスピードの単位ってノットだっけ?」
「はい、そうですが、ノットだと面倒なのでキロメートルで良いんじゃないでしょうか。」
「そうだね。ところで、今のヤマト号は時速50キロくらい出ているのに、風を全然受けないんだけど何でかな?」
「あそこについてる風の魔石で、防いでいるみたいですね。ちなみにヤマト号の最高時速は100キロ出るらしいですよ。」
「100キロって、ヤマト号はかなり近代的なんじゃないだろうか。」
「そうですね。おそらく世界で一番性能が良い船だと思いますね。」
そんな話をしていると、マリンがやって来て、
「アカリ、そろそろ奴等の住みかだ。ここからは水中を行こう。」
「オッケー。既に結界は張ってあるから、いつでも良いよ。」
ワタシの言葉を聞くと、操舵室へ戻って行った。そして船内マイクから、
「みんな聞いてくれ、これからヤマト号は水中へ潜るから一応、何かに捕まっていてくれ。」
そしてどういう仕掛けか分からないが、ヤマト号はゆっくりと沈みだした。
ワタシの張った結界が海水を防いで、シャボン玉の中に船があるみたいになっている。
「うむ、どうやら良さそうだな。いきなり海中も進めるようにしろってんであわてて作ったんだが、どうやら問題は無さそうだ。」
ドランがどや顔で自分の仕事に満足している。
「もう少しすると、魚人族の住む岩場が見えてくるぞ。」
マリンが船内放送で喋る。
「ところで、あのスピーカーはなんなの?」
「防音魔法とは逆の拡声魔法でしょう。」
「ああ、あの本を参考にさせて貰った。」
ベイスと同じく、ドランがもの凄く優秀に見えるね。
そして船はゆっくりと潜って行くと、問題の岩場が見えてきた。




