70 新たな住民2
集会場に戻ってくると、ギムリに移住者と思われる人達が集まっていた。
「ワタシが貴方達の受け入れる街の代表で、名前はアカリ。そして隣がワタシのメイドのシズクね。」
「オレがこいつらの代表でドランと言う。よろしく頼むぜ。」
他のドワーフより、少し年老いた髭もじゃのおじさんがワタシに挨拶をした。
「まあ、詳しい話はオリンピアへ着いてからにしましょうか。ドラン、貴方達の荷物はこれで全部かな?」
「ああ、大きい荷物は魔法袋に入れて運ぶから大丈夫だ。」
それだけ聞ければ良いね。
「それじゃギムリ、ワタシ達は行くね。このドワーフ達の事はワタシに任せときなさい。後これから起こることは、誰にも言わないように。」
ギムリの返事を待たず、シズクに目で合図をすると、ワタシ達は50名のドワーフと一緒に集会場から消えた。
後に残ったギムリだけが、寂しく立たずんでいた。
ワタシ達は、居住区の新しく出来た宴会場へテレポートして来た。
初めてシズクの転移魔法を経験したドワーフの反応は、エルフの時と同じで、頭で理解出来ていないのか固まっている。
「アカリ代表、我々が転移したように見えたんだが……。」
「うん、ここにいるシズクの転移魔法だよ。そしてようこそオリンピアへ。ワタシ達は貴方達を歓迎するよ。」
驚きすぎて固まっているドランが、何とか口を開く。
「我々を受け入れてくれて、ありがとう。」
そう言って頭を深く下げる。
「これはオリンピアの住民になるもの達への義務なんだけど、大人はこの街の発展のために働いて、子供は学校へ通って勉強をすることが仕事です。これ絶対に忘れない様に。」
子供を学校へ通わせてくれるのかと、喜ぶ親もいれば、街を発展させる事は当たり前だろうと考えてる者もいる。
ドワーフ達の家族構成を聞くと、親方のドランも含めて職人の男が20名、その奥さんが20名、その半数の家族に子供が1人ずつの10名いて全部で50名なんだそうだ。
先にシズクからの念話で、連絡を受けていたエジャ神父とドンガに彼らの住むところを案内して貰う。
「それじゃエジャ神父とドンガ案内頼むね。」
「ドランは少しワタシ達についてきてくれる?」
シズクがドランの腕を直すのは、教会の女神像の前が良いと言うので、3人で行くことにした。
転移で教会の前まで来て、中へ入る。
今は授業の無いシスターロミが、エジャ神父の代わりにワタシ達を迎えてくれる。
「これはアカリさん。ようこそ、お出でくださいました。」
「ロミは学校と教会で忙しいんじゃないの?」
「いえいえ、私なんかアカリさんと比べたら、全然忙しくないですよ。」
ワタシ、結界張っただけで、いつもゼロ達とまったりしてるだけなんだけど……。
「それで、今日はこのドランに女神像を見せたくてね。」
いまだに、何でここへ来たのかを知らされていないドランは、そういう事かとやっと納得の顔をしている。
「それはよろしゅうございます。私が案内しましょう。」
案内してくれるロミの後をついていく。
「ドラン、その腕もう動かないんでしょう?」
ドランはいきなり腕の事を聞かれて反応が遅れる。
「あ、ああ、少し前に腕を挟んでしまってな。そのお陰でオレは弟子もろとも、仕事が思うように出来ず、路頭に迷っていたんだ。でも、腕が振るえなくても弟子達に教える事は出来るぜ。」
ドランは追い出されるかと思ったのか、ワタシへ必死にアピールしてくる。
「そう言う意味じゃなくてね、この女神様の像が貴方の腕を治してくれるんだよ。」
ドランはまるで信じられん、という顔をしている。
「そんなバカな、オレの腕は、隣街の名のある医者に見せても治らなかったんだ。」
まあ普通、口で言っても信じないよね。
「ワタシを信じなさいって。」
「いや、腕が治るんだったらオレは、何でもするぜ。」
「それじゃ、あの女神ヒカリ様の像にお祈りしてみて。」
ドランは膝をつき目を瞑ると、腕が上がらないので組めないが、そのままブツブツと祈り始めた。
シズクを見ると、どうぞ初めて下さいと言う感じなので、ワタシは彼の動かない右腕を神力で包む。
それから暫く経つ、ドランは腕の感覚に気がついたのか、祈るのを止めて腕を動かす。
「な、何てこった!動く、腕が動くぞ!」
ドランは涙を流しながら、信じられないと腕をブンブンと振っている。
「ドラン、良かったね。女神ヒカリ様が慈悲をくれたんだよ。」
ワタシがわざとらしく言ったら、ロミがワタシの事を、やけに暖かな目で見ているのが気になるが、とりあえずほっとこう。
「ありがてえ。オレはもう諦めていたんだ。お礼にこれから色んな物をじゃんじゃん作って行くからよ。」
真偽判定を使わなくても本心で言っているのがわかるよ。そして何気に信者カウンターを見たら、162/300に増えていた。シズクの狙い道理だよ。
「それじゃ、シスターロミ。夜は宴会場でドワーフの歓迎会をやるから、みんなで来てね。」
「はい。既に連絡を貰っていますので、必ず参加させて貰います。」
ワタシの知らないところで、連絡網が回っているらしい。
シスターロミと別れて教会から出た。
「それじゃ、シズク。居住区までお願い。」
そして他のドワーフ達と合流した。
「神父、居住区の案内は終わった?」
「はい。これからドンガさんが、鍛冶工房へ案内するところでした。」
「それじゃ、ワタシ達も行くよ。シズクに送って貰おう。」
ワタシ達は職人達の奥さんと子供を残して、彼らの仕事場である工業区の鍛冶工房へ転移した。




