69 ドワーフ職人の受け入れ準備
収穫祭が終わって数日後、花妖精のレベッカから蜂蜜が取れたと連絡が入った。
早速ワタシは、ゼロに乗ってお花畑へと向かった。
「ひさしぶり、あかり。」
レベッカはワタシを見つけると、ブンブンと飛んで来て話しかけてくる。
「ん。蜂蜜が取れたって、聞いて来たよ~。」
「うん、そうなの。やっとはちたちが、さいしゅしても、へいきなりょうのはちみつを、ためだしたの。」
「そうなんだね。」
「ろいやるぜりーも、もうすこしたてば、とれるようになるわ。」
それは楽しみだ。なんだか、名前からして高級そうだもんね。
「それでいまいるはちを、ふやしていくことにしたから、あらたに、つれてこなくてもいいからね。」
「うん。わかったよ。」
そしてワタシの手に、蜂蜜の入った小さな瓶が渡される。
「これが、こんかいとれたぶんよ。あかりにぜんぶあげるわ。」
ワタシはお返しに、蜂蜜入りクッキーとケーキを渡した。
「あかり、ありがとう。ひさしぶりだし、うれしいわ。」
いつの間にか、沢山の花妖精が集まってきて食べ始めている。ワタシも持ってきた弁当のおにぎりを、一緒にここで食べる事にした。
「ごちそうさま。」
その日は、レベッカ達とお花畑でのんびりと過ごした。
それからまた数日経って、ギムリからドワーフの移住の件で相談したい事がある、と連絡が入ったので、ワタシとシズクとドンガの3人でアグニまで出向いた。
鍛冶組合の建物へ入ると、ワタシ達は受付の女の子に顔パスで会長室へ通されてギムリと会う。
「おう。アカリ嬢ちゃん。よく来てくれた。」
「ギムリ、ひさしぶりだね~。」
「まずは交易の事だが、ドンベイ酒がドワーフ達のの間で大人気になっている。」
「慌てて、レティスに追加のお酒を運んでもらったんじゃ。」
まあ酒好きのドワーフ達なら、予想はできたけどね。
「噂を聞きつけて、隣街からも買いに来ている、という話もあるくらいなんだ。」
「とりあえずは、交易が上手くいっている様で良かったよ。」
「それでは本題に入るが、ドワーフの移住の件だが、移住先が今人気になっているドンベイ酒の生産地だと聞いて、ほぼ全員の職人が名乗り出てしまった。」
ドワーフの酒好きを、少しなめていたかもね。
「だから、時間を貰って選別したんだか、少し訳ありの奴等でも良いだろうか?」
「それは話を聞いてから判断するよ。」
ギムリはうむと、頷いてから、
「そいつの名前はドランと言ってな。少し前までは、腕の良い鍛冶工房の親方だったんだが、右腕をやっちまってな。」
ギムリは話ながら悔しそうな顔をしている。そのドランって言う人とは、仲が良かったんだろう。
「ドランの右腕は有名な医者に見せても治らんかった。それ以来その鍛冶工房は、満足な仕事も出来ずに沢山の弟子を抱えたまま、廃業に追い込まれちまった。」
そのドワーフ達をオリンピアで、面倒を見て欲しいということか。
「人としてはおれが、保証する。どうかドラン達とその家族も含めて全部で50名、オリンピアへ移住させてやってくれ。」
ワタシはシズクに念話で相談する。
―シズク、右腕の怪我って治せるかな?―
―姫様の神力で包めば治るでしょう。ただ、ドランというドワーフには神聖魔法のハイヒールで治したと言ってください。―
まあ、神力で治したとは言えないわな。
ちなみに世界樹の葉の効果は、シズクが調べた結果、怪我や骨折等ではなくて、病気や毒等の内科的な者に効くらしい。
そして当然シズクも神聖魔法で治すことが出来る。信仰心を得る為に、ワタシに直させようとしているみたいだね。
「ドンガ、貴方は同じドワーフとしてどう思う?」
「ギムリが選んだ者達なら、大丈夫じゃろう。」
「わかったよ。その50名は、ワタシが責任をもってオリンピアへ受け入れるわ。それでいつが良いの?」
「アカリ嬢ちゃんが良ければ、今日でも平気だ。」
それはまた随分と準備がいいねぇ。
「シズク、今日連れて帰っても平気かな?」
「はい。今から彼らの住まいの準備をしますので、少し時間を頂ければ問題ないです。」
そう言ってシズクは、念話で誰かに指示を出している。
「今日の夜は、彼らの歓迎会をやりましょう。」
この前収穫祭をやったばかりだ。オリンピアの住民は、とにかくみんなで騒ぐのが、好きみたいなんだよね。
「ギムリ、どこかに広い場所はある?」
「集会場ならあるが。」
「それじゃ、ドランの親方たちを、家以外の全ての荷物を持たせて、そこに集めてくれるかな。」
「わかった。少し時間をくれ。」
「勿論。私達にも準備があるからね。」
ワタシとシズクは、時間潰しに街を適当にブラブラと歩く事にした。
こうして見るとアグニの街は、噴火などまるで無かったかの様な普通に生活を送っているように見える。
「ほとんどの住民には、混乱を防ぐ為知らされなかったみたいですね。」
それでも避難のために知らせるべきだと思うけど。
ワタシのこの街を見た印象は、スラムと言われる所もなく、鉱山のお陰なのか住民には活気があって良い街だね。
それから、みんなへの土産にでもと、結局いつもの屋台まで来た。
「こんにちは、おじさん。炒めそばあるだけ頂戴。」
ワタシはいつもの場所で売っていた、おじさんに話しかけた。
「今出来るのは10個だけだな。」
「なら、10個頂戴。みんなへの土産なのよ。」
「毎度。それは嬉しいね。」
シズクがお金を払って、出来上がった炒めそばを受け取る。
おじさんと少し世間話をしてから、別の屋台でもお土産を買ったりしていると、そこそこ時間も経ったので、ワタシ達は集会場へ戻った。




