66 レティスの訪問
屋敷の庭までレティスと戻って来た。
「ここがアカリの街か。主様の気配に似た感じのする場所だな。」
そうだ、教会の母さまの像に連れていってあげようかな。
「母さまの像が、教会にあるんだけど行ってみる?」
「何!本当か?是非、案内してくれ。」
レティスが予想通り、母さまの像に食い付いたね。
そして遠巻きにゼロ達がいる。いつもはワタシの気配を感じると、走って近寄って来るのに、しっぽを丸めて、ビビりながらこっちを見ている。
レティスに格の違いを感じているのだろう。ゼロに乗って行けないとなると、風の精霊に頼むかな。
「ワタシは、風の精霊に頼んで移動するけど、レティスはどうする?」
「我は龍だ、飛んで行くぞ。アカリも一緒に運んでやろう。」
そう言ってワタシをお姫様抱っこする。レティスって、とてもいい匂いがするよ。
そして胸がデカイ。シズクがメロンならレティスはスイカ位あるよ。
「あっちの方角に教会があるよ。」
レティスに教えると、空中に浮かび上がり、ワタシの指した方角に飛んだ。後ろからシズクが、ついてきている。
レティスの飛行能力は、流石は龍だけのことはあり、今までで一番の速さだった。後ろから追ってきたシズクが離されていたからね。
教会に着くと、レティスはワタシの事を無言で降ろして、中へ入って行く。
「レティスどうしたんだろ?」
「ここは創造神様の気配に包まれているので、彼女はそれを感じ取ったのでしょう。」
ワタシ達も彼女を追って中へ入る。すると、予想通り、母さまの像の前に立っていた。
「おお、まさしくこのお姿は主様だ。」
それだけ言うと、ひざをついて祈り始めた。レティスは、それっきりピクリとも動かなくなる。
エジャ神父が、いきなり教会へ入って来て何も無い所で祈り始める、深紅のドレスを着た綺麗なお姉さんの事を、どうして良いか分からずに見守っている。
そしてワタシに気づくと、
「あの御方はどなたなのでしょう。気配から高貴な方だと思うのですが。」
別にレティスの事をオリンピアの住民には隠す必要もないので、
「名前はレティスと言って、プルナ山の火口に住む火龍だよ。」
目を大きく広げて驚くエジャ神父は、
「ここでは、このくらいの事で驚いてはダメですね。それで彼女は何の用で来たのですか?」
「今度ドワーフと交易が始まるんだけど、その荷物を運んでくれるんだよ。」
「赤龍に運ばせるのですか?」
エジャ神父は、そんな雑用的な事をやらすのか、と思っているみたいだね。
「勿論タダではないよ。代わりにドンベイ酒、飲み放題だからね。」
なぜだか納得顔をするエジャ神父。
「それなら納得です。ドンベイ酒は、酒好きの者ならば、何をおいても欲しがりますからな。」
結構時間が経っているのだが、レティスは相変わらず微動だにしていない。このままじゃ埒が明かないので声をかける。
「レティス祈るのはそのくらいにして、ドンベイ酒でも飲みに行こう。」
それを聞いたレティスは祈るのをやめて、素早く起き上がり、
「それもそうだな。それでどこに行くんだ。」
「酒造蔵に行こうか。ドンベイ酒はそこで作っているんだよ。」
「よし、直ぐに行こう。」
レティスはワタシの手を引っ張って、教会の外へ連れていき、ワタシの事を抱っこする。
「酒造蔵はどこだ?」
「工業区はあっちだね。」
レティスは、ワタシが指差した方向へ飛んだ。
酒造蔵に到着するとレティスは、また黙ってワタシを降ろすと中へ入って行った。
シズクが遅れてやって来て、
「流石は赤龍。とんでもない速さですね。」
「あれなら普通に、プルナ山まで飛んで輸送出来るね。」
「そうですね。あの速度なら直ぐに、ドワーフの街まで着くでしょう。」
ワタシ達も酒造蔵の中へ入る。レティスはベイスにお酒を注いで貰って、もう飲んでいるよ。
「ベイス、このお姉さんが、母さまの眷属で赤龍のレティスね。貴方と一緒で、無類の酒好きだから宜しくしてね。」
ベイスは以前、話を聞いていたので、この方がみたいな顔をしてレティスに挨拶をしている。
「後、ドワーフとの交易の荷物を運んでもらう代わりに、ドンベイ酒を飲み放題になったから、レティス用で作ってくれるかな。」
「うむ。了解じゃ。」
「宜しく頼むね。」
「ドンガもそろそろ帰ってくるじゃろ。秋の収穫が終わったら、新しい酒作りに取りかかるつもりじゃ。」
「次は何を作るつもりなの?」
「ドワーフなどお酒に強い種族用に、アルコール濃度の高いお酒を作るつもりじゃ。」
ウィスキーとかテキーラみたいなのかな。
レティスを見ると、話そっちのけでドンベイ清酒を飲んでいる。
「うむ。美味い。実に美味い。この酒を飲み放題とは、真面目に荷物を運ばねばならんな。」
等と言っているので、まだ帰りそうに無いから、
「ベイスそれじゃ、ワタシ達は帰るから、レティスの事は頼んだよ。」
ベイスにレティスの事を任せて、ワタシとシズクは外へ出る。
「レティスはお酒がすべてって感じだね。」
「龍の酒好きは有名ですから、レティスも例外では無いのでしょう。」
「それじゃ、折角工業区まで来たから、砂糖工場に行ってみようか?」
「かしこまりました。」
シズクと砂糖工場の近くまで来ると、甘い匂いがしているので建物は直ぐに分かった。
中へ入ると、なぜかゴルデンを始め、犬人族の老人連中が砂糖を作っていた。
「何でゴルデンがここで働いてるの?」
「卵や乳製品の生産は、息子夫婦達で足りてるので、ルクロイさんに何か仕事はないかと相談したら、砂糖工場が人手不足だからと言うので、手伝っているんです。」
好きでやってるんなら文句はないけど、
「沢山砂糖を作るんで、任せてください。」
少し様子を見て問題ないなら、彼らに任せてみようか。
「ん。あんまり無理しないでね。それじゃ、ワタシはもう行くよ。」
少しゴルデン達に呆れながら、ワタシはシズクの転移で屋敷に戻った。




