61 村人の決断
ワタシは、久しぶりにゼロ達に囲まれて、目が覚める。目の前には沢山の精霊達が、空中をふよふよ漂っている。
昨日は屋敷へ戻った後、エレナの作った、いの丼を食べてからお風呂に入った。そして出た後、寝室で精霊達とトランプをしていたら、いつの間にか眠ってしまったらしいね。
ワタシは朝のルーティンのもふもふをしていると、赤ジャージを持ってシズクがやって来る。
「姫様。おはようございます。」
寝間着から赤ジャージに着替えながら、
「ん。おはよう。」
キッチンに向かうシズクの後を、トコトコとついていく。キッチンに久しぶりアンズ以外の全員が揃った。
「おはよう。」
「「「おはようございます。」」」
用意された焼き魚をご飯と食べる。
「やっぱり朝はパンよりお米だよね。」
みんなも賛同してくれる。そして朝食が終わると、シズクが今日の予定を確認する。
「今日はチワワ村に行って、彼らに移住の確認だけして、明日以降、準備が出来次第、引っ越すという事でどうでしょうか?」
今日は、オリンピアも受け入れ準備をしないといけないからね。
「うん。そうしようか。」
今日はシズクと2人で行くよ。レフィが、スライムしか出ないから、行きたくないらしい。もう危険もないからと、シズクが許可をしていた。
ワタシとシズクは玄関まで来て、
「それじゃ行こうか。」
シズクが転移魔法を唱え、チワワ村へテレポートした。
「こっちはオリンピアより少し暑いね。夏に近いのかな?」
昨日、オリンピアで感じた陽気を思い出して、シズクに聞いてみた。
「そうですね。でもそんなに気候の差はないと思います。」
チワワ村に入ると、村人が1人も見当たらなかった。探しながら村の広場まで来ると、そこに村人全員が集まっていた。そしてワタシ達に気づくと、
「おはようございます。アカリさん。」
「おはよう、ゴルデン。みんなもおはよう。自己紹介するね。ワタシはアカリで、オリンピアの街の代表だよ。後ろにいるのがシズク。みんなこれからよろしくね。」
一応村人に紹介しておく。村人は多いのでその内って事でいいよね。
「早速ですが、昨日村の者と話し合ったのですが、少し質問をさせてください。」
「ん、何でも聞いて。」
そりゃそうだね。聞きたいことが沢山あるだろう。
「オリンピアの街とはどこにあるのですか?」
「アルゴスって言う島にあるよ。街の事を説明すると、現在の住民はエルフとドワーフ、後は貴方達と同じ獣人族の子供達もいるよ。全部で61名だね。それと近くの海に人魚族が住んでいるよ。」
「そうですか。ではどうやってそこに行くのですか?」
シズクをチラッと見ると彼女が答えてくれる。
「帰還の転移石を使って行くのですよ。」
いきなりシズクの転移で行くと言うよりは、まだ転移石と言った方が信じられると思ったのだが、ゴルデン達は余り理解が出来ていないみたいだね。
「はあ、移動手段は問題ないと言うことですね。それから荷物は家畜も含めて、全て持って行けるのでしょうか?」
「貴方達の家以外の財産は、全て持っていけますので安心してください。そしてオリンピアであなた方に用意してある家を差し上げます。」
そんな好条件で行けるなんてと、少し疑っているね。
「私達がオリンピアへ行ったら、具体的に何をすれば良いのでしょうか?」
「大人は貴方達の家畜で、卵と乳製品を生産して街へ提供してください。そして子供は昨日も言ったのですが、学校へ行って勉強してもらいます。」
今まで黙って聞いていた村人達は、村長を交えて相談しだす。その様子をシズクと黙って見ていると、ゴルデン村長が代表で、
「決めました。チワワ村の村人全員、オリンピアに移住させてください。」
ゴルデンはそう言うと頭を下げる。ワタシは真面目モードで、
「うん。オリンピアの代表として、貴方達を受け入れるのを許可します。今から移住の準備を始めてください。全員の準備が出来たら出発します。」
「分かりました。準備を始めます。」
ゴルデン村長が言うと、他の村人はそれぞれの家に戻って行った。
リアンがワタシをじっと見ている。
「ゴルデン、貴方も準備があるでしょうから、リアンの相手はワタシに任せなさい。」
息子夫婦が少し心配顔で、ゴルデンを見ている。
「大丈夫だよ。ワタシ達を信用しなさい。」
「分かりました。リアンの事はお任せします。」
リアンの親は、まだ心配顔をしながら準備の為に家へ戻って行った。
ワタシはとりあえずリアンに話しかける。
「リアン、これからお姉ちゃんと遊ぼうか?」
少し考えてから、
「ほぁぁ、うん。いいよ。」
リアンは遊んで貰うのが嬉しいのか、耳はピコピコ、しっぽをブンブン振っている。
「いつもは、何をして遊んでいるのかな?」
「リアンは、いつもみんなと木の実を採ったり、お絵かきして遊んでるの。」
さて、どうしようかな。トランプは、オリンピアに来てからで良いよね。絵本でも出して一緒に読んでみようか。
ワタシは適当な絵本を何冊か召喚する。
「リアン、字は読めるの?」
「ううん。読めない。」
「それじゃお姉ちゃんが、絵本を読んであげるからこっちおいで。」
シズクが敷いてくれたシートに2人で座って、適当に選んだ絵本を読んで聞かせてあげる。
その絵本は子ガエルが、親ガエルに会いに行く聞いたことのない話だね。
「こうして子ガエルは苦労の末、親ガエルに会う事が出来ました。めでたしめでたし。」
絵本を読み終わると、いつの間にか、リアンと同じ年ぐらいの村の男の子や女の子が周りにいて、一緒に聞いていた。
「何、みんなも読んでほしいの?」
みんな耳をピコピコさせてうなずく。
「それじゃ、遠慮しないでこっちにおいで。」
子供達はリアンがワタシの隣にいるので、大丈夫だとおもい、ゆっくり近寄ってくる。ワタシは次に読む本を適当に取って、
「よし、次はこれにしよう。いもむしころりんて言う話だよ。」
それから、ひたすら芋虫が転がるって言う話を、子供達に読んで聞かせた。
隣で黙って聞いていたリアンのお腹が、くぅ、と鳴る。
「シズクお昼ご飯にしようか?子供達の分もある?」
今まで、黙って子供達を監視していたシズクに聞いてみる。
「はい。大丈夫です。」
シズクが大きなテーブルを出して、その上にボアの肉の入ったサンドイッチを大量に置いた。みんなを椅子座らせて、
「さあみんな、遠慮せずお腹一杯になるまで、食べよう。いただきます。」
いただきますの意味が分からないみたいだね。1人の子が食べ出すとみんな一斉に食べ始めた。




