60 春の陽気
久しぶりに我が家に戻って来た、という感覚が妙に嬉しい。まずは彼らに会わないとね。
ワタシの気配に気がついたらしく、ゼロ達が走ってやって来た。
「ゼロ、ただいま。久しぶりに帰って来たよ。」
4匹とも、しっぽがはち切れんばかりに、フリフリしている。
―神様、久しぶりだな。別に心配はしてなかったがな。―
ゼロ達はワタシの眷属なので、存在を感知することが出来るはずだからね。
「シズク、チワワ村の犬人族の受け入れ準備をしてくれる。」
「はい。お任せください。それでは私はこれで失礼します。」
シズクはどこかへ転移した。
「それじゃアカリ、私も行くわ。」
レフィはそう言うと屋敷の中へ入って行く。
その後、ゼロ達から数日ぶりのもふもふ成分を補充した。
ワタシが何時まで経っても、もふりを止めそうになかったので、セバスが昼食のハンバーガーを持って来てくれた。
「セバス、ありがとう。」
ワタシは、ハンバーガーを食べる。
「いずれは、パンもオリンピアで生産したいね。」
この星にもパンはあるので、作るのに必要な物はすぐ揃いそうだ。美味しいパンを作ってくれる人を、オリンピアにスカウトしたいよね。
後は衣服の事も考えたないとだね。今は、ワタシの召喚と元々みんなが持っていた物を着ているが、やっぱり行く行くはオリンピアで生産したい。
これは焦らなくても、ゆっくり考えていけば良いかな。その内、機会もあるだろうしね。
「ビックボアのお肉は、ハンバーガーにも合うねぇ。ごちそうさま。」
さて、どこかに行こうかな。子供達は今は授業だから後にして、先ずはレベッカの所から行ってみるか。
「ゼロ、オリンピアを見て回りたいから、ワタシを乗せてくれる?」
―勿論だ。―
「ゼロ子は、子供達とお留守番ね。」
「ウォン。」
ワタシはゼロに乗っかり、農業区のお花畑まで向かう。
「まだ収穫祭から、そんなに経ってないのに、すっかり春だねぇ。」
―この季節は眠くてたまらんな。―
この季節じゃなくても、いつも寝てるイメージだけどね。
ゼロの上からすっかり暖かくなった春の陽気を楽しみながら、お花畑までやって来た。
数日前にはいなかった蜂が、あちこちに飛び回って花の蜜を集めている。少し驚いて見ていたら、レベッカがやって来た。
「あかり、どう、おどろいた?」
レベッカは、えへんと胸を張って聞いてくる。
「そうだね。この感じなら直ぐに蜂蜜が取れるんじゃないの?」
レベッカは顔を横にぶんぶん振っている。
「それがまだなんだよ。はちみつは、はちたちのえさだから、まずはかれらに、いきわたらないとだね。」
蜂達にとって食料の蜂蜜が、安定するまでは取れないんだね。
レベッカはガックリして、ワタシの事をどこか、催促顔で見てくる。
ワタシは、蜂蜜のチーズケーキと蜂蜜入りクッキーを、大量に召喚してレベッカに渡す。
「さすが、あかりだよ。わかってる。」
周りの妖精達も集まりだして、魔法を巧みに操り一口サイズにして、美味しそうに食べる。
「それで、本格的に蜂蜜が取れるのは、何時ぐらいからなの?」
「ふつうなら、つぎのはるなんだけど、ここはとくべつなばしょだからね、ふゆのまえくらいかなぁ。」
「それじゃ、頑張って。また来るからね。」
妖精達は全員、期待した目でワタシを見てくるので、追加のケーキとクッキーを召喚して渡した。
ワイワイしてる妖精達と別れて、次にルクロイを探す。
すると他のエルフと、道端で話をしている彼を見つけた。
ルクロイはゼロに乗ってやって来た、ワタシを見ると少し驚いて、
「こんにちは、アカリさん。今日はどうしたんですか?」
話していたエルフは、ワタシに挨拶をして去っていく。
「少しオリンピアを離れていたから、散歩がてら見て回っているのよ。それで春の農作物の収穫量はどうだったの?」
ルクロイはニヤリと笑うと、
「この春も大豊作です。備蓄が大量にある状態ですね。今は秋に何を育てて収穫するかを決めている段階です。」
何だかルクロイが凄く優秀に見える。農業の事は、彼に任せとけば安心だね。
「まだはっきりとはしてないんだけど、住民が増えるかも知れないから。」
「そうなんですか。何人ぐらい増えるんですか?」
「先ずはドワーフの職人とその家族が数十人で、そして犬人族やその家畜でやっぱり数十人かな。まあ、全部で100人位ってとこかな。」
その話をしていたら、地面からムーが現れる。
「アカリ、ソレハホントカ?」
「まだはっきりとは決まってないけど、牛と鶏が来るかもしれないよ。」
「ソレジャ、ベイスニ、カチクジョウヲ、ツクッテモラウ。」
そう言うと、ムーは地面に消えた。
「まだ、決まってないからねー。」
言ってる間にムーはいなくなった。ベイスの所に行ったのかな?まだ決まってないのに話がどんどん進んでいっているね。
ルクロイはこのやり取りを、複雑そうな顔をして黙って聞いていた。
「まあ、そう言う事だから、彼らが来たら上手くやってね。犬人族の仕事場は農業区になると思うからさ。」
「はい。上手くやって見せます。任せてください。」
「それじゃ、ワタシは工業区に行くからまたね。」
ルクロイと別れて、今度は工業区に向かう。
酒造蔵に向かうと、ベイスとムーが話をしている。ワタシが近付くと、ちょうど話が終わったのかムーが地面に消えた。
「ベイス、こんにちは。順調かな?」
「やあ、アカリ嬢ちゃん。ドンガがおらんから新しい酒作りは、一旦中止にしておる。いないときに試飲すると奴が拗ねそうなんでな。」
ガハハと、ベイスは笑いながらそんな事を言う。
「今は精霊達の手伝いで、ドンベイ酒の量産をしておるよ。」
ドンベイ酒は大人気だから、いくらあっても良いしね。あっ、大人気で思い出した。
「ベイス、今度オリンピアに、母さまの眷属で赤龍のレティスってのが来るから。」
ベイスは目をおっぴろげて驚く。
「なんじゃと!どうして、この星に創造神様の眷属がおるんじゃ?」
「それは来た時に、彼女から聞いてくれるかな。」
ワタシは伝えたい事も言えたので、未だに動揺してるベイスと別れた。
「ゼロ、まだ見て回りたいけど、屋敷へ一旦戻ろうかな。」
―分かった。―
来た時と同じく、のんびり春の陽気を感じながら、屋敷へ戻った。転移も良いけど、たまにはこういうのもいいね。




