58 チワワ村
「あれが、チワワ村じゃないかしら。」
レフィが、先に気がついて教えてくれる。
「ここまでは誰とも会わなかったわね。」
「森が近くにあってスライムしかいない所に、誰も来ないんじゃ無いでしょうか。」
「あっ、やっぱりここがチワワ村だわ。あそこの看板に書いてある。」
柵が1ヶ所だけ切れてる入り口らしき所に、チワワ村と辛うじて読める、ボロボロの看板が立っている。
村の周りの柵は外敵から守るためではなく、村人達の家畜が逃げないようにする為の簡単な作りになっている。
レフィを先頭に村の中へ入ると、直ぐに彼女は異変に気がつく。
「アカリ、シズク、少し不味い事になっているかもしれないわ。」
シズクも探知魔法を唱えて、辺りを確認しする。
「村人と思われる者達の生命反応が弱くなっています。」
「シズクどうする?」
ワタシはこういう時、いつもシズクに意見を求める。
「レフィ、先ずは倒れている人達を、村の広い所に集めてください。」
シズクはレフィに指示をすると、近くにある1番大きな家に入る。
家の中に入ると広い部屋に、この家の家族と思われる5人が、布団のなかで苦しそうにして寝ていた。
「とりあえず、この1番いい服を着たお爺さんから、話を聞くために直しましょうか。」
シズクは異空間からきゅうすと煎じてあるお茶の葉を取り出すと、お湯を淹れてそのまま無理やりお爺さんに飲ませる。
「鑑定した結果、この5名は何かしらの毒に犯されているみたいで、危険な状態です。今回お爺さんには、世界樹の葉を煎じたお茶を飲ませてみました。」
お茶を飲んだお爺さんは、苦しんでたのが嘘のように健やかに眠っている。
「どうやら効いたみたいですね。魔法でも良かったのですが、世界樹の葉の効果を知りたくて、このお爺さんで確かめさせて貰いました。」
シズクには、ディスペルの魔法がある。だけどあの魔法を唱えられるのは、ワタシ達の中でもシズクしかいない難しい魔法だ。
ちなみにレフィでも唱えられないからね。
ディスペルと違って世界樹の葉なら、誰にでも扱えるから使い勝手が良いのだが、無闇に扱うと世界のバランスが壊れそうなので、使用する時は注意する必要があるだろうね。
効力が分かったので、他の4名にも急いで世界樹のお茶を飲ませる。
やがてお爺さんが目を覚ます。周りを見てワタシ達を確認すると、
「うん。ここはどこいや、あなた達は誰ですかな?」
ワタシが代表で答える。
「ワタシ達は旅の者で、ワタシはアカリ、隣がシズクね。お爺さん、体は大丈夫?」
「腹が減っているだけで、体はすこぶる調子が良いですな。紹介が遅れましたが、ワタシはチワワ村の村長をしている、ゴルデンと言うものです。」
それからお爺さんが寝ていた時の状況と、今の状況を簡単に説明をした。
「大変ありがとうございました。他の者も私達家族同様に治してくれるのですか?」
「うん。そのつもりだよ。」
お爺さんはホッとした顔をしている。
「大変厚かましいですが、家畜達も助けてください。」
そうか、家畜も毒にやられている可能性があるね。もし死んでしまったら、ここに来た目的が果たせなくなる。
「シズク、家畜の方も頼めるかな?」
「かしこまりました。今から行ってきますので、それまでお爺さんの話を、聞いておいてください。」
そしてシズクは家から出ていった。
「村長さん。どうして村人が毒に犯されることになったかわかるかな。」
ゴルデンさんは少し考えてから、
「今日の朝、いつもの通り村の井戸の水を飲んだら、急に苦しくなってそれで寝ていたんです。そういえば、井戸の水を飲む前に、紫色のスライムが森の方へ去っていくのを、見た気がしたんですが。」
「ただいま戻りました。」
シズクが戻って来る。
「どうだった?」
「家畜はほとんど無事でした。それでも何頭かが、毒に犯されていたので、治療しておきました。」
「シズク、村長のゴルデンさんが言うには、井戸の水を飲んで倒れたみたいだよ。」
直ぐに、シズクと村に1つしかない井戸の所までやって来る。
「鑑定した結果、やはりこの井戸の水は毒に犯されています。どうやら、村人がこの水を飲んで、毒に犯されたのは間違えなさそうですね。」
シズクはそう言い、ディスペルの魔法を唱えて、井戸の水を浄化する。
「この井戸の水に毒があったと言うことは、既に広範囲に汚染されている可能性が高いですね。この村はもうダメかもしれません。」
シズクと会話をしていると、レフィがやって来る。
「村の真ん中の空き地に、全員寝かせといたわよ。」
「よし、直ぐに行こう。」
村の中央の広場へ来ると、村人4.50人が寝かされていた。1人ずつ世界樹のお茶を飲ませるのは、大変なので今回はシズクの魔法で治すことにする。
「エリアディスペル。」
全員が光に包まれて毒が抜ける。
「流石はシズク。これで村人は大丈夫そうだよ。でもさ犬人族は全員、頭から犬耳がお尻からはしっぽが生えているんだね。」
つまりもふもふだよ。
「孤児院のカイやサラと同じですね。」
確か、あの子達も犬人族だったよね。
「あっ、村長が毒になる前に、紫色のスライムを見たと言っていたんだけど、何か怪しくないかな。」
「どのみち、原因は調べないといけませんが、それは村民が回復してからにしましょう。彼らはお腹を空かせて起きると思いますので、今から食事の準備をしておきます。」
シズクはバーベキューセットを出して、ビッグボアの肉を大量に焼きだした。
すると、村民は匂いつられて目が覚めると、シズクの周りに集まり始める。
しかし、肉を焼いているのが知らない人なので、どうして良いか分からずにざわついている。
ゴルデン村長がみんなに状況を説明する。ワタシも挨拶をすることにした。
「チワワ村の皆さん。ワタシはアグニの街から来たアカリと言う者だよ。みんなお腹が減っていると思うから、好きなだけお肉を食べて良いからね。それではいただきます。」
みんなは我慢できずに、一斉に食べ始める。シズクは1人では間に合わないので、追加のバーベキューセットを出して、村民達にも焼かせた。
そして、みんなが満腹になった所で、
「今日はみんな回復したばかりなので、この後はゆっくり休んでください。明日ワタシ達が毒の原因を調べます。」
それを聞いて、みんな食事のお礼を言って自分たちの家に帰って行った。
「村長、今日はもう暗くなるし、詳しい話は明日にしよう。」
「そうですか。治療だけでなく食事まで貰ってしまって、村民を代表してお礼を言わせてください。本当にありがとうございました。」
「気まぐれだから気にしなくて良いよ。そんじゃ、また明日の朝来るから、じゃあね。」
そう言って、ワタシ達は村の外に出て、シズクが、明日来る時の為に目立たない所にマーキングしてから、転移してホテルまで帰って来た。




