57 スライム
鉱山組合から戻って、ワタシ達3人は農場の場所を聞くのと昼飯もかねて、また屋台へやって来た。
この前の焼きそばに似た物を、売っていたおじさんに聞いてみる。
「おじさん、それ3つ頂戴。」
「毎度あり~。あれ、お前さんは一昨日来た嬢ちゃんじゃないか。又、買いに来てくれたのかい。」
「そうなんだよ。ここの味が忘れられなくてね。」
「嬉しい事いってくれるじゃねえか。それじゃあ、たっぷりサービスしてやるからよう。」
「サービスも良いんだけど、おじさんに少し教えて欲しい事があるんだよ。」
「なんだ。俺でよけりゃ、何でも教えてやるぞ。よし出来た。ほらよ、3つで大銅貨9枚だ。」
シズクが、銀貨1枚を渡しておつりの大銅貨1枚を受け取っている。商品はレフィが受け取り、ワタシとシズクに1個ずつ渡すと、早速食べ始める。
「聞きたい事とは別なんだけど、この商品の名前なんて言うの?」
「おう、よくぞ聞いてくれたな。それは炒めそばっつうんだよ。俺が考えたんだ。」
自動翻訳が仕事してないね。炒めそばって言うなら焼きそばの方が良いのにね。
ワタシも炒めそばを一口食べる。うん、まさにドワーフ風に濃い味の焼きそばだよ。
「それで本題なんだけど、実はここから近くの農場か村を教えて欲しいんだよ。」
「何でぇ、勿体ぶっといてそんな事かよ。そうだなぁ、俺が知っているのは、プルナ山の麓にある、犬人族が住むチワワ村っつう所だな。」
何だか真っ先に犬を連想する村の名だね。
「その村は領主様に見放されて、寂れちまったんだな。でも、鶏や牛を飼って食うもんを自給自足して何とかやっていけてるんだ。」
ん。自動翻訳が、鶏と牛って翻訳した。つまり似たものじゃなくて、ワタシが知っている鶏や牛がこの星にいるって事だね。
「何で領主に見放されたの?」
「只でさえ50人やそこらの寂しい村なのに、なんも利益も無いからじゃねえかな。」
話をしながら、炒めそばを食べる。しかし、これはマヨネーズが欲しくなってくるな。
「嬢ちゃんは、確か卵と乳製品が欲しいんだったよな。」
「そうだよ。良く覚えていたね。卵と乳製品が駄目だったら鶏や牛でも良いんだ、自分達で作るからさ。」
「他の農場は管理が厳しいから駄目だが、チワワ村だったら、もしかしたら金さえ出せば譲ってくれるかもしれないぞ。」
お金ね。自給自足しているのに必要なのかな?
「おじさん、どうもありがとう。さっそくチワワ村って所に行ってみるわ。場所はプルナ山の麓にあるんだよね?」
「ああ、街道から少しはずれた森の近くにある。誰も人が行かない場所だよ。だがその森には温泉が湧いて出てるんだよ。俺はたまにこっそり行ってんだ。」
おじさんと別れて、そのままチワワ村に行く事にする。街の入り口まで来ると、門を通るための列が出来ているのでワタシ達も並ぶ。
「あの門番はこの街に来た時、やたらと偉そうにしてたドワーフだよね。」
「確か、そうですね。」
ワタシ達の番なり、門番にミルドの許可証を見せると、
「これはミルド様の許可証ではないか。さあ、お嬢さん達どうぞお通りください。」
偉そうだった門番は、ミルドの名前を見て急に腰が低くなった。またイラッとしたが、無視して門を通って街の外に出る。
「ここからレフィは索敵に専念してください。私が姫様の護衛を担当しますので。」
「了解~。敵はこのレフィ様に任せなさい。」
シズクがレフィに指示を出す。私は歩くのが遅いので、移動の時は勿論シズクの抱っこだよ。
山を下っていると等間隔にドワーフの警備が配置されていて、魔物を排除ているみたいだね。
特に何事もなく、山の麓まで着いた。何かあったかと言えば、たまにすれ違う獣人族の人が、ワタシを抱っこして山を下るシズクを見て、変な顔をして通り過ぎていくだけだったよ。
麓から少し進んで行くと、東西南北に道が別れて十字路になっている場所に着いた。
「あそこに看板があるので見てみましょう。」
看板に近づいて確認してみる。
「チワワ村は、北へ続く道を山に沿って行けばあるみたいだよ。ちなみにここから西には獣王国の王都があるみたいだね。」
レフィを先頭に看板に従って、北へ続く道を山に沿って歩いていく。そして、少し進んだだけで周りには人の姿が見えなくなった。
あの屋台のおじさんが言っていた寂れたとはこの事だったのだろうね。人の姿がなくて寂しい感じだよ。
そして先程から人の代わりに、スライムがあちこちに見える。青くて半透明のボディが、プルプルしている。
「ファンタジーの定番来たー。」
ワタシは、ついテンションが上がって叫んでしまった。ワタシ達が近づいても、攻撃も逃げもせず、プルプルしながらゆっくりと枯れ木や葉っぱを吸い込んでいる様に見える。
「シズク、触ってみたいから降ろしてくれる。」
シズクに降ろしてもらって、ワタシはスライムに近寄り、とりあえずツンツンしてみる。
スライムのゼリー状のボディは、ひんやりと冷たく、非常に弾力があって気持ち良い感覚だね。
「中の核が赤色のスライムと青色のスライムがいるけど、属性があるのかな?」
シズクに聞いてみる。
「おそらくあるのでしょう。しかし、鑑定結果はどちらもスライムとしか出てませんね。非常に興味があります。今度落ち着いてから、調べてみようと思います。」
シズクの探求心に触れたみたいだね。
「核と魔石って違うの?」
「呼び名が違うだけで役割は同じでしょうね。しかし、全然攻撃的ではありませんね。魔物なのになぜでしょうか?」
シズクにも解らないのに、ワタシが解るわけ無いじゃん。
「スライムの核は、厳密には魔石では無いのかもしれませんね。」
「ああ、それにしてもスライムって触り心地が半端なく気持ちよ。」
ワタシは、先程から触り心地が気持ち良過ぎて、ずっとなでなでしている。
しかし、今回の目的はチワワ村なので、持ち帰りたい気持ちをぐっと我慢した。
レフィはスライムが食べられないと解ったとたんに興味を無くしていて、さっきからずっと早く行こうよオーラを出しているので、ワタシはシズクに抱っこしてもらい進むことにした。
レフィがその辺のスライムを、試しにウィンドカッターで切ってみると、2匹に分裂した。
「なにこれ、核も2つになってるわよ。スライムって不思議な生物だね。」
レフィが面白がって、何匹にも増やしている。
アースのファンタジー小説でスライムを増やして、トイレとかを掃除させている話もあるし、実は凄く優秀な生き物だったりしてね。
今度は核を破壊してみると、スライムはドロドロ溶けて跡形もなく消えた。
「流石に、核を破壊されるとダメみたいだね。」
そして、スライムで暇潰しをしながら進んでいたら、遠くに古びた柵と家が見えてきた。




