56 噴火
(レティス)
我が、何時もと変わらぬ退屈な時を過ごしていると、山の中腹に昔からよく知っている主様の神聖な気配を感じた。
居ても立っても居られず、家から飛び出すと、龍の形体へ戻って気配のする方に向かった。
しかしそこに居ったのは、神と思われる赤い変わった服を着た子供と、その連れの天使だった。
我は主様では無いことに落胆したが、主様に似た気配が気になり、人の形体になって話しかけた。
「我にそなた達への敵対心はない。ただ話をしに来ただけだ。」
天使の1人が椅子とテーブルを出し、座るよう促したので、敵対心が無いように見せる為、大人しく従う。
自己紹介をすると、我のにらんだ通り、どこかの神とそれに付き従う天使だった。
神だと言われても、我は別に驚きはしない。神は、ピンもいれば腐るほどのきりもいるので、存在事態は別に珍しく無いからだ。
しかし、その赤い変わった服を着た小さな神は違った。なんと我が主様の娘だったのだ。我は嬉しさのあまり震えてしまった。
そして、我は運命とも言える物との出会いをする。それは我の素性の話が終わった時に、天使の1人が異空間から取り出した樽の中身だった。
コップに注がれたそれを、我は進められるがままに一口飲んだ。その後の記憶はかなり曖昧で、主様の娘アカリの街に行く約束と、酒の樽を3個持って帰って来た事しか覚えてないくらい、衝撃的な出会いだった。
我は今、アカリとの約束を果たす為に、火口の1番底まで来ている。
「ふむ。この辺で良いか。」
噴火を早めて、溶岩の流れを変える我には簡単なお仕事であるな。
先ずは我の固有スキルの念力で、溶岩を操り噴火させる。今のでかなり揺れたが、まあそれくらいは勘弁だな。
溢れ出てくる溶岩が火口を満たしていく。我の家も底に沈んだが、あれは特別製なので大丈夫だぞ。
「この溶岩をパルテアと言う人族の国の方へ流せば良いんだな。」
よし、これで終わりだ。後は溶岩がおさまるまで、家でドンベイ酒三昧すれば良いだけだ。
(アカリ)
ワタシはホテルクラウンのスイートルームで目が覚めた。何だかんだで、ここに3日滞在しているよ。
「昨日の夜遅くに、かなり揺れたけどあれは何だったの?」
レフィがシズクに聞いている。
「えっ、ワタシ全然気がつかなかったよ。」
「はい。姫様はその時は、ぐっすりとお休みになられていました。」
「ええ、何それ。地震が起きてるのに起きないって、ちょっと自分にショックなんだけど。」
「昨晩の地震は、レティスが噴火させたことによって、発生した地震でした。」
「もう噴火したんだ。それで、この街は大丈夫なの?」
「獣王国側には地震位しか影響がなく、パルテア王国側に溶岩が流れています。後は、溶岩が冷えて固まれば全て終わりですね。」
レティスが約束を守ってくれたんだね。たっぷりドンベイ酒を追加であげよう。
「これからの予定は鉱山組合で、首を長くして待っているミルドに現状報告してから、溶岩が冷えるまでの間、姫様の用件を片付けるというのはどうでしょう。」
「それは良い案だね。そうしよう。」
朝食を食べてから、先ずはシズクとドンガの部屋を訪ねる。レフィは、めんどくさいからと留守番だってさ。
「ドンガ、ギムリとの交渉は任せて良いかな?」
「うむ。ドワーフの事はワシに任せておけばええ。」
「ありがとう。ワタシ達は溶岩が冷えるまでの間、卵と乳製品を調達してくるから。」
「嬢ちゃん達なら大丈夫じゃと思うが、気をつけて行ってくるんじゃぞ。」
「勿論だよ。」
「最後に1つだけええかのう。ドワーフを代表して礼を言わせてくれ。アグニとドワーフを助けてくれてありがとう。」
そう言うと、ドンガは深く頭を下げる。
ワタシは行きなりの事に少し照れながら、
「止めてよ、照れ臭い。ドンガはオリンピアの住民なんどから、このくらいは当たり前でしょ。それにワタシじゃなくて、レティスがほとんどやってくれたんだよ。」
「そうか。赤龍がのう。」
何やらしんみりと考えている。
話が終わってドンガと別れてから、受付でワタシとドンガの部屋を一応10日延長した。
それからシズクと現状報告の為に鉱山組合の建物にやって来る。
建物に入ると、ギムリが居ないのに受付が会長室に通してくれた。中にはミルドがいたので、とりあえず挨拶をする。
「おはようミルド。現状報告が聞きたいんじゃないかと思って、報告に来たよ。」
「おはようございます。アカリさん。」
ミルドに現在の状況を、簡単に説明する。
「それで現在は噴火もおさまり、溶岩が冷えて固まるのを待っている状態なんですね。」
「ん。そう言うことだね。」
「ついでに坑道のフレイムゴーレムが、10体以上いて、全て倒したと。」
「そうだね。坑道もじきに冷えて入れるようになるんじゃないかな。」
「私には、とても信じられません。」
フレイムゴーレムの魔石でも見せるか。
「シズク、フレイムゴーレムの魔石を見せてあげて。」
シズクは、ミルドに異空間だとばれないように上手く隠して、フレイムゴーレムの魔石を出した。
「これは火の魔石ですね。確かにこの大きさなら、フレイムゴーレムの物でしょう。」
「少し日にちが経って、坑道が冷えて入れるようになったら、調査隊を出して確認すれば良いよ。」
「解りました。他に新しい情報が出てきたら、こちらからもご報告差し上げたいので、アカリさんたちの連絡先を教えてもらえますか?」
「ホテルクラウンって所だけど、ワタシ達がいない時は、一緒に泊まっているドンガってドワーフに報告してくれるかな。」
「はい。ドンガさんですね。」
おっと、鉱山の通行許可証を返さないとだね。
「忘れるところだった。これ返すわ。」
ワタシは許可証をミルドに渡そうとすると、
「アカリさん達は、身分証を持ってないと聞いてます。その許可証には、私のサインが入ってますから、この街での身分証に使えるので持っていて良いですよ。」
そう言えばワタシ達には身分証が無かったね。いちいちお金を払わなくて済むんだから、良いとこあるじゃないかミルドよ。
「ん。ありがたく使わせてもらうわ。それじゃあ今日はこれで帰るから。また来るよ。」
「はい。今日はありがとうございました。」
ミルドと別れて、そのままホテルに戻った。




