49 ドラゴン
「あれはドラゴンです。しかも上位ドラゴンの火龍です。」
2人は警戒体制に入り、シズクはワタシを下ろして身構える。
「大きいねぇ。体調10メートル位はあるんじゃないかな。とりあえず会話が可能か試そう。上位の龍なら知能は高いよね。」
火龍がワタシ達の前に来ると、急に変形し始める。そして、背が高くて色っぽい深紅のドレスを着た赤い髪の綺麗なお姉さんの姿になった。
ワタシは10メートルのドラゴンを見た事よりも、そのドラゴンが突然、綺麗なお姉さんになった事の方が衝撃的過ぎて、身動き取れずに固まってしまった。
「我にそなた達への敵対心はない。ただ話をしに来ただけだ。」
随分と見た目とは違う言葉遣いだね。
シズクとレフィは少し警戒を緩める。
「まずは、お互い落ち着いてから自己紹介をしませんか。」
シズクが、再び異空間からイスとテーブルを出
す。
私達と綺麗なお姉さんもイスに座る。シズクは、メイドらしく紅茶をみんなに淹れた後、ワタシの後ろへと待機する。
「ワタシはアカリで、後ろのメイド服を着たのがシズク、そしてそっちの魔法使いの格好をしたのがレフィだね。よろしく。」
「我はさるお方にレティスと名を貰った。それで、なぜここに着たかと言うと、我の知っている懐かしい神聖な力を感じたからだ。」
ん?どう言う事だ。でもそれは置いといて、改めて綺麗なお姉さん姿と言葉のギャップ凄いね。
「それってどういう意味かな?」
「すまんが、そなたの素性を教えてくれ。」
ワタシはシズクをチラッと見るが、なにも言わないので、
「ワタシは、現在この星の管理を任せられている神だよ。」
なんだか、目の前の綺麗なお姉さんが、ふるふるしている。
「おお、やはり。ではこの星を作った神を知っているか?」
「勿論だよ。だってワタシの母さまだからね。」
レティスの震えがさらにでかくなる。
「少し我の素性を聞いてくれ。」
それは興味あるね。
「ん。お願い。」
「我はそなたの母、創造神様の眷属で火龍レティスと言う。」
ワタシもシズク達もみんな驚き、
「えっ、なんで、母さまの眷属がこんなとこにいるの?」
「この星が出来た後、星の様子を監視するように命令されて以来、ずっとここにいる。」
「この星っていつ出来たの?」
「約1億年前だな。」
母さまに命令されて、それからずっとこの星を監視してたのか。
レティスの話をもう少し聞いたけど、最初は定期的に母さまとの連絡がついていたのだが、ある時を境に、ぷっつり音信不通になったそうだ。
「それで、ワタシに何かして欲しい事はある?」
「我は別に星の監視をするのはいいんだが、それだけでは詰まらんのだ。だから、創造神様に何か退屈しのぎの命令でも、お願い出来ないだろうか?」
健気や、健気で綺麗なお姉さんがここにいるよ。何か可愛そうになりシズクに、
「シズク、ちょっと可愛そうだから、ドンベイ酒でもあげてくれる。」
シズクがドンベイ清酒が入った樽を異空間から取り出し、コップに注いでレティスに渡す。
「まあ、とりあえず一杯。これはオリンピア産のお酒だよ。龍ってお酒に目がないって言うでしょ。」
レティスが笑顔になって、
「おお、実をいうと我は酒が大好きなのだ。それじゃあ早速、いただくぞ。」
レティスは最初はゆっくりと飲む。そして味を確かめてから、目が変わり残りを一気に飲み干した。
「オリンピアって場所を教えてくれ。我はそこに行きたいぞ。」
「行きたいって、ここは良いの?」
「大丈夫だ。我の分身を変わりに置いて行くから、何かあれば直ぐに解る。」
他のお酒も出してあげるか。
「シズク、ドンベイワインとドンベイビールも出してあげて。」
シズクは異空間から樽を2つ出して、レティスに渡すと、直ぐに両方の味の試し飲みを始める。
「うむ。今まで飲んだ事のない酒だな。益々、オリンピアという所に行きたくなった。」
「別に良いけど、オリンピアには転移して行くから、ワタシ達の用件が終わるまで、このお酒でも飲んで待っていてくれるかな。」
レティスは、この3樽のお酒が飲めると聞いて、ご機嫌になり、
「それでは、我は火口で迎えに来るまで待っているぞ。」
レティスは龍に戻ると口に樽をくわえて山頂の方へ飛んでいった。
「ああ、びっくりしたよ。まさか母さまの眷属にこんな所で会うとはね。」
「やはり創造神様の眷属ですから、彼女は物凄く強いはずです。」
母さまに忘れられているっぽいし、彼女は少し可愛そうだね。
「レティスがオリンピアに来れば、いずれ母さまと連絡がとれるかもしれないね。」
レティスの事は一旦置いといて、ここからは空を飛んで、山頂ルートから一気にドワーフの街まで行くことにした。ワタシは勿論、シズクに抱っこして貰ってだよ。
山頂まで飛んで来ると、レティスが住み家にしている火山の火口が見えた。
「あそこにレティスがいるんだね。」
「おそらくそうでしょう。しかし、この辺は普通の者では熱くて近寄れない場所です。」
火龍だもんね。火にはめっぽう強いのだろう。きっと今頃は、さっきのドンベイ酒3点セットを飲んでいるんだろうね。
それから山頂を越えて、獣王国に入る。ここからは誰かに見られると不味いので、隠蔽魔法をかけて飛んでいる。
そして、一旦ドワーフの街を通り過ぎて、人気のない山の中腹辺りで、ワタシ達は降りた。




