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43 第2回春の収穫祭

 住民がオリンビアで初めて迎える冬は、子供達には残念ながら、雪が降らなかった。雪の遊びを色々教えてあげたかったのにね。


 各家庭では火の精霊のおかげで、暖かくて過ごしやすく、逆に戸惑った事だろう。これは慣れて貰うしかないけどね。


 段々と暖かくなって冬が去り、代わりに春を迎え、この世界にやって来て1年が過ぎた。


 そして、ドンガとベイスが冬の間ずっと研究、開発に力を注いでいた、日の本酒とワインが完成した。


 酒好き達による試作品の飲み比べと言う名の宴会が、夜な夜な繰り広げられていたけどね。


 今、ワタシの前には「ドンベイ清酒」と「ドンベイワイン」が置かれている。


「これらが製品版の初物じゃ。アカリ嬢ちゃん、飲んでみてくれい。」


 それではありがたく頂こうかな。


「うん。どっちも美味しいし、アースの産と比べても遜色無い出来だよ。」


 その後はみんなで乾杯をして、それぞれの初物を味わった。


「ベイス、新作のお酒は春の収穫祭に出すんだよね。」


「当然じゃよ。折角作ったんじゃ、みんなに飲んでもらいたいからのう。」


「まだまだ他のお酒も作るんでしょ。」


「勿論じゃ。それがわし等の幸せなんじゃからな。ドンガに聞く限り、この星にはドンベイ酒ほどの美味しい酒が無いんじゃ。無いならわしらが作ればええんじゃよ。」


 後は、ガラスの問題だけかな。


「ドンガ。石灰って、ドワーフの街で採れるの?」


「そうじゃ、鉱山があるからのう。」


「ドワーフの街にワタシ達みたいな、よそ者が行っても平気かな?」


「まあ、大丈夫じゃろ。なんと言ってもこの酒がある。ドワーフ達はこの酒でイチコロじゃて。」


 そう言ってドンガは、ドンベイ清酒の入った樽を指差す。やっぱりドワーフはお酒ってことだね。


「それじゃ余裕が出たら、ドワーフの街に行って見るか。」


「まあ、どちらにしてもまだ先って事じゃな。」


 まあはっきり言うとそういう事だよ。


 そしてオリンピアでは、アカリ元年4月1日になり、第2回春の収穫祭が開かれた。


 今回は初日からマリンが沢山の人魚を引き連れて川を登って来た。


「アカリ、久しぶりだな。アタイ達は冬の間、テンタクルスの肉を食べながら海の底で大人しくしていたよ。」


「ん、久しぶり~。オリンピアの収穫祭へようこそ。今回は初日から来てくれたのね。オリンビア産のお酒がたっぷり出るから楽しんで行ってよ。」


「おう。それは楽しみだな。お祝いに海の物を沢山持ってきたから、食べてくれ。」


「うん。ありがとう。」


 マリンと話をしていると、ベイスがルクロイを連れてやって来た。 


「やあアカリ嬢ちゃん、ちと宜しいかのう。」 


「ん。何かな?」


「うむ。実はマリン殿に用があってのう。」


「アタイにかい。なんだい。」


 いきなり話を振られて、マリンが少し驚いた顔をしている。


「実は塩の事なんじゃが、人魚族は塩をどうしているのかな?」


「勿論、海水から作っているぞ。時期は夏の暑いときだな。お日さまの力で蒸発させて作るんだ。陸の奴等も同じじゃないのか?」


「ちと違うのう。海水を煮て作るんじゃよ。」


「で、それがどうしたんだ?」


「ここからは、ルクロイが話す。」


 今までベイスの後ろで、黙って聞いていたルクロイが前に出て来て、


「オリンビア内での砂糖と塩の貯蓄量が残り僅かなので、ベイスさんに相談したんです。砂糖の方は充分な量のサトウキビが、今回の収穫から採れるので問題はなのですが、塩の方は原料になる海水のある海がオリンビアから遠いという事なんですよ。」


 確かにここから1番近い、アルゴス港の海でもここから25キロはあるからね。


「それで海水をここまで運ぶより、アルゴス港で塩を生産した方が良いかと思って、マリンさんに相談しに来たんです。」


「どうじゃなマリン殿。建物と塩作りに使う機材は、全てこちらから提供しよう。勿論、塩を煮て作るやり方も教える。」 


 ワタシからも少し後押ししよう。


「出来た塩は全て人魚族の物で良いよ。その塩でオリンピアと定期的に取引すれば良いんだよ。ワタシのおすすめは砂糖だね。」

 

 ずっと考えていたマリンは、


「その話に乗った。アタイらは塩でそっちは砂糖だな。でも良いのかい、そちらに特が無いように思うんだけどね。」


「アルゴス港の特産があった方が良いでしょう。塩は生きていくには絶対必要な物だから、安定して生産が出来れば、人魚族の繁栄の足掛かりになるはずだよ。芋づる式でうちらも繁栄していくということだね。」


「話は決まったようじゃな。収穫祭が終わったらアルゴス港に行って建物と機材を用意するからのう。でも今は祭りを楽しむのが先じゃよ。」


 そう言ってベイスは何処かに行ってしまった。


「それじゃ、マリンも楽しんでね。」


「ああ。それじゃまたな。」


 そう言って、マリンはふよふよ浮きながら去って行った。


「さて、収穫のために農業区に行くか。」


 風の精霊に頼んで、ウィンドウォークでルクロイと一緒に農業区に来た。今回もムーとルクロイの監督のもと、住民がほぼ全員集まり収穫を始める。


 今回のワタシの担当は長ネギの畑で、それから1日収穫を手伝い、収穫祭の初日が終わった。 


 2日目は、精霊達による収穫の仕上げの日なので、ワタシ達は祭りを楽しんで過ごす。


「ドンベイ清酒」「ドンベイワイン」それと、「ドンベイビール」のお披露目で、住民達に振る舞われた。


「ここの酒は何なのだ。もう他の酒は不味くて飲めないぞ。」


 今まで人魚族は、他の魚人族から取引して酒を手に入れていたらしい。


 人魚族は意外にもお酒好きの種族で特にマリンが収穫祭の3日間、たらふく飲んだ挙げ句にたっぷり土産に持ち帰って行った。


 勿論、オリンピアの住民にもすこぶる好評で、


「ドンベイ酒を飲めて幸せです。特に私達エルフはドンベイワインが人気です。」


 エジャ神父がワインを飲みながら誉めている。


 実は神父もお酒好きで、夜な夜な宴会の常連者なのをワタシは知っている。


「今までのお酒とは何だったのでしょうか?」


 サーシャも夜な夜な宴会メンバーの1人で、すっかり「ドンベイ酒」の信者になってるよ。


 子供達は孤児院の遊び部屋で、トランプやチェスなどをやって過ごしている。


 そんなこんなで3日目も過ぎて、2回目の収穫祭が無事終わった。今回は2回目なので住民達は各々楽しんで過ごしたと思いたいよね。





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