38 孤児院と学校
収穫際も終わって数日経ったある日、待望の孤児院と学校が出来上がった、と報告が来た。
シズクはまた興味を持つ事が出来たのか、別行動するようになった。
朝食後、屋敷の庭で、
「ゼロ、教会まで乗せてってくれる?」
―勿論、さあ乗りな。―
ゼロはワタシを乗せて運ぶのが嬉しいのか、尻尾をぶんぶんさせている。
そしてゼロに乗って教会まで来た。
ゼロから降りて、教会より先に、となりの出来上がったばかりの孤児院へトコトコと歩いて向かう。
「ゼロ、この辺で待っててね。」
「ウォン」
しっかりとした作りの大きな建物が、広いスペースに建てられている。とりあえず建物の中に入るとアンズと子供達が、これから自分達の住む家の中を確認していた。
「アンズ、立派な孤児院が出来て良かったよ。」
「これはアカリ様。早速、今日から私も子供達と一緒に住みます。」
それからみんなで中の様子を見て回る。院長室に応接室、子供達の部屋に子供達の遊び部屋、それに食堂やトイレにお風呂等がある。
セシルとカイは男の子、リノアとサラは女の子の部屋割りを任せて、ワタシとアンズは孤児院の正面に建つ学校を見に行く事にする。
「それじゃ、先生はアカリ様と学校を見てくるから、年長組は年少組の面倒をよろしくね。」
「わかりました。院長先生。」
セシルが代表で答える。
ワタシとアンズが学校に着くと、校門の所で建物を見ているベイスに合った。
「ベイス、お疲れ様。凄く立派な建物を有り難う。」
「うむ。今回は凄く時間を掛けたからのう。今は少ないが、今後、人が増えて行けば2階、3階と増設出来る様に設計したんじゃ。」
「ありがとうございます。ベイスさん。」
「気にするな。これがわしの仕事じゃて。」
一応、中の様子を確認する為に教室へ入って見ると1クラス20人分の机と椅子が置いてある。
「机と椅子はドンガが作ったんじゃ。」
「アンズ、この学校の教育はアースの教育を真似しようと思うんだけど、どうかな?」
「はい。そのようにしましょう。」
とりあえず、アースの子供用の教科書を全教科100セット召喚した。
本来の召喚魔法とは天使や悪魔や魔物を召喚するもので、物を召喚出来る訳ではない。でも、ワタシの召喚は物を呼び寄せる魔法のようだ。
だから天使を召喚した時、本来の使用と違うから身体に負荷がかかって縮んだんだろう。小物を召喚しても、身体は何ともないからね。
「はい。子供用の全教科の教科書を召喚したから、渡しとくね。100セットあるから複製するなり上手く使ってね。」
「貴重な教材ありがとうございます。必ず立派な大人に教育します。」
うん。ワタシの為にね。
まだ必要な物は沢山あるが、とりあえずここから退散することにする。
「ベイス、病院を作りたいんだけど。」
「それなら、空いてる建物がいっぱいあるじゃろ。」
あっそうか。
「後もう1つ、人魚族と取引の輸送手段として、船が欲しいんだけと。」
「わしも、それは思っとった。しかし、問題は造船技術じゃな。とりあえずドンガに相談はしてみるが。まあ、酒作りの合間だから時間がかかるぞ。」
「ん。よろしく頼むよ。」
ワタシとの話が終わると、アンズとベイスが、話を始める。真剣な顔をしているので、ワタシは邪魔しないようそっと学校を後にした。
母さまに挨拶しようと今度は教会に入る。ワタシを見ると、いつも通りエジャ神父が近づいてきた。
「これはアカリさん。久しぶりですね。」
「ん。収穫祭ぶりかな。」
「ところで、孤児院と学校の完成おめでとうございます。しかし、子供達の学ぶ姿が教会で見られなくなるのは、少し寂しいですな。」
「まあ、すぐ隣だし、そこまで寂しくはないでしょ。」
「ふむ。だからかロミは、シスターと先生の両方をやっていくみたいです。」
「そっか。子供達の勉強を見てくれるのか。教師が少ないから助かるね。それじゃ、ワタシはちょっとお祈りしてくるね。」
少し気になっていたことがあったので母さまの像の前に行く。ちょっと前に左腕の腕輪の信者カウンターが、111/100になった。つまり人魚族も全員ワタシの信者になったと言うことだね。
そして、母さまの像の前に来ると、頭の中に母さまの声でメッセージが聞こえてくる。
―信者数100人突破おめでとう。記念に私から褒美を贈りましょう。
「真偽判定」
スキル どちらかを選びなさい。
「眷族召喚」
私からのアドバイスはそろそろ人族と接触する頃でしょうから、真偽判定がおすすめですね。―
何だかアースのゲームみたいになってきたな。母さまは楽しんでいる様に思う。
よし、どっちにするか真剣に考えてみよう。先ずは真偽判定から、これはつまり嘘発見器だね。初めての人や信用できない人にはかなり有効ってゆうか、チートだよ。
次に眷族召喚。眷族ってゼロ達の事だよね。いつでも、どこでも、召喚出来たら便利かも。しかも送還出来ると。ワタシ的には、かなり魅力的なんだけど…。
う~ん、悩む。正直どちらもほしいよ。神眼が使えれば、真偽なんてすぐわかるのになぁ。
暫く頭抱えて悩んだ末に、ワタシは決めた。母さまのアドバイス通り、やっぱり真偽判定にしよう。
ワタシは腕輪の液晶画面の真偽判定をタッチする。
―本当にスキル、真偽判定で良いですか?―
「はい」をタッチする。
―それでは左腕の腕輪にスキルを付与します。使い方は腕輪の「説明欄」を読んでください。それでは次の信者数達成までまたね。―
そう言って気配が消えた。腕輪を見ると、信者カウンターが111/300になっている。次は300人ってことだね。
スキルはワタシにではなくて、腕輪に付与されるのね。真偽判定の説明によると、対象者が嘘をついていると赤に、真実だと白、嘘でも真実でもないとピンク色に液晶画面が変わるらしい。
このスキルはバッシブだがON/OFFの切り替えが出来るみたいだね。そして腕輪はワタシ以外に、天使にさえも見えないらしい。
新しい力を手にすると、試したくなるのが人情、じゃなくて神情、早速エジャ神父に実験台になってもらおう。ワタシは神父に近寄り、
「エジャ神父、オリンピアに来て良かった?」
「それは、勿論です。私達はとても運が良かったです。」
ワタシはチラッと腕輪を見ると、画面は白いままだった。つまり本当にそう思っているようだ。
「ワタシに会えて嬉しいかい?」
「勿論です。」
腕輪は白い。また嘘ではないね。それじゃ、
「ワタシは女神じゃないよね?」
神父は明らかに同様し出して、
「も、もちっ、勿論です。」
腕輪の液晶画面が赤に変わる。やっぱりワタシが神だとバレているのね。
照れ臭くてありがとうと言って、動揺している神父と別れる。
真偽判定は普段からONにしておこう。
それからワタシは教会を出て、ゼロの所に戻った。




