36 親睦会
(アカリ)
ディーネに人魚のことを任せた日の翌日の午後何時ものように、ワタシは1人ゼロ達とまったり過ごしている。
シズクはレフィとサーシャの3人でゴドアナ樹海の探索に出かけて行った。いずれは人族の街まで行くつもりのようだね。
ドンガに街のことを尋ねたら、
「セナの街は、樹海の豊富な資源や魔物の素材で発展した、探索者と呼ばれる者達の街じゃ。探索者とは、魔物を倒して生計を立てる者達や、遺跡やダンジョン等のお宝を狙う、トレジャーハンター達の事をそう呼んでおるようじゃな。」
ワタシも機会があれば人族の街に行って見よっかな。などと考えていたら、ディーネが湖から姿を現す。
「アカリ様、人魚族が北の入り江に到着しました。人数は50名です。」
「それじゃ1度会って話をして見ようか。入り江まで、今回はシルフィに運んで貰うかな。」
すると、何処からかシルフィが姿を現す。
「オ~ケ~。まっかせなさい~。」
体の周りに風が吹き始めて、ワタシはその風に乗って浮き上がり、入り江に向けて出発した。
風の抵抗が全くなくて、ただ立っているだけで良いので、とても快適な移動手段だね。空から見るといつの間にか川沿いに道が舗装されいて、歩きやすくしているみたいだ。
そして空の旅を30分位満喫して、入り江に到着する。
入り江には海の中から半身出す、お姉さん達がたくさん見えた。新しいすみかに到着して間も無く、引っ越し中の為ドタバタしている。ワタシが近づくと、ディーネが1人の人魚を連れて来たので挨拶する。
「ワタシはアカリ。この島にある街オリンピアの代表だよ。ヨロシクね。」
「アタイは人魚族の族長マリンと言う。アタイ達に住む場所を提供してくれて感謝する。」
マリンと名乗った人魚を観察してみる。青いウェーブの髪が腰まで伸びて、目尻のキリッとした20歳くらいに見える美人さんだね。
「今後、街に人が多くなったら、貴方達と取引をしたいのよ。ワタシ達が陸の物を、貴方達は海の物を交換って感じでね。」
「それはこちらも同じ気持ちだ。それで、我々人魚族の繁栄につながれば喜ばしい事だ。」
「うん。後悔はさせない。取引が始まれば、間違いなく人魚族は繁栄するはずだよ。ここに港を作り海に住むものを集めて、ゆくゆくは港街にすれば良いんじゃないかな。」
「仲間や知り合いをここに呼んでも良いのか?」
「勿論。ここに地名がないと、不便だから着けなよ。」
「是非。貴女が着けてくれ。」
ワタシは少し考えてから、
「うん、決めた。アルゴス島のアルゴスの港、港町アルゴスにする。」
「港町アルゴスか、了解した。」
「それじゃ、みんなは引っ越しで忙しそうだから、今日はもう行くね。あとの事はディーネ、上手くやってちょうだい。」
「はい。おまかせください。」
他のもの達には顔見せだけして帰ることにする。帰りも来た時と同様で、シルフィに屋敷まで送ってもらった。勿論、夕食まではゼロ達と、もふもふして待ったり過ごしたよ。
それから、人魚族が来てから1週間経って、少し落ち着いたころ、オリンピアの住民との顔見せの為に、アルゴス港予定地の広場で歓迎会をやることになった。
勿論全員参加で、ワタシ達を含めずに島の住民61名とプラス4匹、人魚族50名と、後は数えきれないほどの精霊達だね。
そして問題は、アルゴス港までの距離が約25キロあり、その住民達の移動手段だった。
シズクの転移でも良いのだけど、今回はエルフも多いし、シルフィに頼むことにする。もともとエルフ達の移動手段て、今回のように風の精霊に頼んでウィンドウォークと言う魔法で移動するらしい。
シルフィが風を起こして、61名を包む。そして体が少し浮き上がり、アルゴス港に向かって結構なスピードで移動して行った。ワタシ達とゼロ達はシズクの転移で送ってもらうよ。
セバスとエレナは忙しそうに準備している。シズク達はここ数日、魔物を狩りまくって、大量の肉を提供しているし、マリン達も海の食材を沢山用意してくれている。
ベイスはお酒の提供。どんだけ天界から持って来ているんだろうね。ワタシも勿論、大量のお酒を召喚して提供したよ。
夕方になり、皆で港に転移した。シルフィに運んでもらった61名も全員いるのを確認する。
セバスとエレナがイスやテーブル、食器類を並べていくと、子供達の落ち着きがなくなり騒ぎ始めて、アンズやセシルに叱られている。
そして、食材もお酒も準備が出来たので、ワタシは即席の壇上に登り、
「みんな、こんばんは。オリンピアの住民と新たにこの島の住民になる人魚族の親睦を深めるための宴会を開きたいと思います。乾杯~。」
大人はビールを子供達はオレンジジュースを飲む。セバスとエレナだけでは手が足りないので、皆それぞれ肉や魚を焼いて貰うことにした。
人魚達はお肉が好物のようだね。ダークベアーの肉やいのししの肉ばかり食べているよ。
「うん。皆でこうして食べると、また格別に美味しいよね。」
「そうだね~。何より楽しいからね。」
レフィもお酒が回り楽しそうだね。
「アカリねえ。お肉焼いて。」
「アカリおねえちゃん、ティナもおねがい。」
アーシェとティナがやって来てねだってくる。
「こらっ、アカリさんに迷惑をかけない。」
リノアがこの子達の面倒役なのね。
「別に良いよ。皆のお肉を焼いてあげるから、ほらカナンもこっちにおいで。」
ワタシはいのししの肉を焼きながら、こっちを見ていたうさみみの可愛い女の子、カナンも呼ぶ。
「うん。カナンもたべたいの。」
「みんな、焼き上がったのから遠慮せずどんどん食べて。熱いから気をつけるんだよ。」
今まで遠慮気味だった子供達もみんな集まって来て、焼けたお肉から我先にと食べ始めた。ワタシは肉焼き係となり、子供達が満足するまで焼き続けた。
満足そうに、お腹をさすって喋っている子供達をほっこりしながら見ていると、お皿にイカやタコに似た物を、セバスが持ってきてくれた。
「お嬢様、お疲れでしょう。これをお食べください。」
お皿を受け取り、醤油をつけて食べる。
「うん。まさにイカにタコだね。」
鯛に似た魚も焼いて食べてみる。
「どれも美味しいね。海の食材は絶対にオリンピアに必要だよ。」
人魚達はマリンを始め、いのししやダークベアーの肉ばかり食べている。
「人魚は魚を食べるんじゃないの?」
「魚しかなければね。アタイ達は陸の肉の方が好きだよ。しかし、ダークベアーの肉は初めて食べたけど、陸の人族でもあまり食べれない高級食材だろ。」
ダークベアーってそんなに貴重だったのか。誰も言ってなかったけど。
「それじゃあ、この島にはダークベアーが沢山いるから、海の食材と定期的に交換するかい?」
「おおっそうか、それは嬉しいな。是非そうしよう。」
人魚達と商談が成立した。物々交換だけどね。




