35 ディーネと人魚族
翌日、ドンガにもう少し詳しいことを聴くために、ワタシとシズクで教会に出向いた。
するとワタシの像の前で、エジャ神父とドンガが話をしていた。女神ヒカリの像の話でもしているんだろう。
「こんにちは、アカリさん。」
彼らに近づくと神父が挨拶をしてくる。
「ん、こんにちは。昨日の続きで、もう少し詳しい話をドンガに聞きに来たのよ。」
話を聞くために、4人で近くのテーブルに座る。
「ワシは鍛冶師を引退後、世界中のお酒を飲むために旅をしていたんじゃ。」
ドワーフは、やはりどの世界でも酒好きなんだね。
「そして、ワシはハイドワーフなんじゃよ。切っ掛けは解らんが、ある日突然進化したんのじゃ。しかしこの事は、家族以外には秘密でな。ワシがハイドワーフと解ると、利用する輩が出てくるでな。」
彼がハイドワーフだとばれたら周りは、黙ってないだろう。ワタシと少し似ているね。
「ハイドワーフの寿命は1万年とされる。普通のドワーフは300歳じゃ。家族や知人は当然先に亡くなり、鍛冶の仕事を弟子に任せてワシは引退したんじゃ。そしてハイドワーフだとばれる前に故郷を出て、旅に出たんじゃよ。」
長く生きるとは、多くの別れを経験することだからね。神や天使も永遠の時を過ごす。彼が1ヶ所に留まらなかったり、ここに住みたがったのは、そういう理由もあったのだろう。
「この街で、再び鍛冶師として色んな物を作りますじゃ。」
「ベイスが鍛冶や建設の専門だから色々話し合って見ればいいよ。」
「ベイス殿にはアドバイスをしてもらうつもりじゃ。お酒の趣味でも凄く気が合いそうだしのう。」
それじゃ、ドンガには鍛冶のリーダーに成ってもらおう。少し真面目に言う。
「これから、色々な種族の住民が来るだろう。オリンピアの鍛冶のリーダーに任命する。」
ワタシは真面目モードで宣言する。
「はい。お任せですじゃ。」
堅苦しいのはこのくらいにして、
「秋の収穫になるとベイスは本格的に酒づくりに入るから、楽しみにしていてね。」
「それは勿論じゃ、今から楽しみだのう。」
ドンガと別れて、子供達におやつを差し入れてから、教会を出る。
「シズク、屋敷の庭まで送ってくれる?」
転移で庭まで飛ぶ。ここでシズクと別れて、ゼロ達の所へ行く。そして、いつもの通り、ディスクで遊び、疲れたら4匹と寝そべりもふもふして過ごした。
「神様、少しよろしいですか?」
ディーネが湖から出てきて話しかけてきた。
「これからは誰に聞かれているか解らないから、アカリって呼んでくれるかな。」
「解りました、アカリ様。」
「それで、どうしたの?」
「はい。海の調査ですが、やっと知的生物の人魚族を見つけられました。」
ディーネは水に関してのエキスパートだ。それなのに中々見つからないとはね。
「彼女らは非常に隠れるのがうまい種族な上、海上で巨大タコが暴れていたために、海の底へ逃げて気配を消して隠れていたみたいなんです。だから発見が遅れました。」
「それで、今どんな状況なの?」
「とりあえず巨大タコは、私が倒しました。人魚族は巨大タコに、住むところを奪われて困っています。アカリ様から場所を提供してあげれば全て上手く行くでしょう。」
「で、場所ってどこなの?」
ワタシは、ゼロをもふもふしながら聴いている。
「実は、この島の北側は湾曲になっていて、其処を人魚の住みかにしてもらおうかと。」
「なら北側の海って、ここと距離が近いのかな?」
「北側だけ大きな入り江になっているので、他の方面よりは近いですね。」
「ワタシが何かすることはある?」
「いえ、住む許可をください。」
「ん。許可する。それと人魚の事は全て任せる。」
アカリの必殺スキル「全て任せる」が発動した。
「おまかせを。」
そう言うと、ディーネは湖の中に消えた。
(ディーネ)
―数時間前―
神様の命令で、海の知的生物を探して数日がたった時、精霊専用の精霊念話が入った。
―ディーネ様、アルゴス島から東にある大陸に近い海の底で、少数の人魚族が隠れ住んでいました。―
―そうですか。しかし、一時的とはいえ水の精霊から、水の中で隠れられるとは、人魚族とは侮れませんね。―
―それが、少し問題があります。人魚が隠れていたのには理由がありまして、近くで巨大タコが暴れている為なのです。―
―それでは私が行きましょう。直ぐに向かいますので、貴方はそこでそのタコを見張っていなさい。―
―はい。―
ディーネは屋敷の湖の北側にある入り江から海に抜けた。そこから、中位精霊の位置を確認してワープする。
大精霊のディーネには、水の中でなら相手のいる所の座標さえ解れば、どこにでもワープ出来る。
ワープをすると、目の前で巨大タコが何故かは解らないが、暴れていた。これでは周りの生物はすでに殺られているか、逃げているだろう。
―なぜあのタコは暴れているのでしょうか?―
―さぁ、私が来た時は既にあの状態でした。―
「気にはなりますが、今はあれを止めるのが先ですね。」
ディーネは、タコの体の中にある水分を操作し全部体から抜いて、あっという間に干からびさせる。
これがディーネの一番恐ろしい所だ。水分なら体の中だろうが遠隔操作出来る。実は生きている生物なら、ディーネが精霊の中で1番、殺傷能力を持っている。
ただし、1つだけこの技には欠点がある。それは倒した相手が干からびてしまって、食べられなくなることだ。
―こっちは片付きましたね。それで人魚族はどこにいるのですか?―
―こちらです。着いてきてください。―
暫く中位精霊について海の底に潜っていくと、50体の生命反応があった。
―確かに人魚は隠れるのが得意な種族ですね。ここまで近づかなければ感知出来ないとは。―
―私の時は偶々外に出ていたのを見つけてあとを着けたのです。―
「私は水の大精霊ディーネと言います。そちらの代表者と話をしたいのですが?」
暫く待つと、下半身が魚で上半身が大人の女性の姿である、1人の人魚族が前へ出る。ちなみに、人魚達は全員、スカートのような腰巻きと胸はチューブトップをしている。
「これは失礼した。巨大タコの為に、必要以上の警戒してしまってね。アタイはこの辺りに住む人魚族の族長マリンと言う。大精霊様、助けてくれて感謝する。」
「それではマリン、あなた方の今の状況をお聞きしても宜しいので?」
「勿論だ。何故か、突然現れた巨大タコのせいで、アタイ達の住み家が破壊されてしまった。このままでは食料も満足に捕れないし、外敵からもみんなを守ることが出来ないので困っている。」
ディーネは少し考えてから、
「私が住む所はここから少し遠いですが、割りと安全で、食料の豊富な場所ですが来ますか?」
「嬉しい提案だが、アタイ1人で決められない。少し時間をくれないだろうか?」
「良いでしょう。では明日の朝、またここに来ますね。」
そう言って、ディーネは、彼女らに中位精霊の護衛をつけ、屋敷に戻った。
屋敷に戻ると、丁度、神様がお庭でゼロ達と、もふもふするいつもの時間だった。
「神様。少しよろしいでしょうか?」
それからディーネはアカリ様に事情を説明し、島に人魚達が住む許可をもらった。
翌日、再び人魚の所にワープして、マリンに会う。
「みんなと話し合った結果、ディーネ様の提案を人魚族全員、受けることにした。よろしく頼む。」
人魚達は、ディーネの提案を受け入れた。
「では、中位精霊達をあなた方の案内と護衛でお供しますので、ついて行ってください。昼過ぎにはそこに到着出来るでしょう。私は戻って色々と準備しますので、これにて失礼します。」
「それでは、後で。」
ディーネは、屋敷の湖にワープした。




