30 それぞれの理由
(盗賊の親分)
俺が目を覚ますと、捕まえてきた獣人のガキどもが、1人残らず逃げ出していやがった。子分の1人を呼んで、
「おい、ガキどもを探して来い。もし、逃がしでもしたら、俺らもただでは済まんぞ。」
「わかりやした。」
子分どもが、アジトの外に散らばって行った。
そして暫くしてから、子分どもが戻ってきた。
「どこにも見当たらねえです。腹を空かせたガキどもが、そう遠くまで移動出来るとは、思えねえんですが。不可解なのは、足跡すら、何の痕跡もねえんでさあ。」
何の痕跡もないのは、おかしいぜ。別の組織の仕業かもしれねえな。潮時かもしれねえ。
獣人のガキを、高く買い取る貴族がいるから、捕まえてこいっていう上からの命令だ。失敗したとばれたら口封じで消されちまう。逃げるしかねぇ。
その前に部下の口を塞ぐ必要がある。ポイズンスパイダーの毒を、ワインの中に入れてから部下どもに言う。
「全員集まれ。話がある。」
4人の部下が俺の前に来る。
「ガキどもは諦める。次の仕事の前に、景気付けの乾杯だ。」
疑いもせず子分達は、ポイズンスパイダーの毒が入ったワインを飲み、苦しんで逝っちまった。
そして逃げる準備をしていると、突然、後ろに気配を感じた。俺の直感が、振り向いたら殺られると告げている。後ろから、
「貴方に質問があります。なぜ獣人の子供達を捕らえていたのですか?正直に答えれば命は助けましょう。」
ヤバい奴が来やがった。近づかれる迄、全く気がつかなかったぜ。こいつは相当のやり手ってことだ。ここは逆らうべきじゃねえな。
「俺は裏の組織の下っぱの構成員だ。どこかの貴族が、獣人の子供を高く買い取るっつうんで、上からの命令でさらっただけだ。」
「貴方の組織の名前は何ですか?」
「スコルピオンっつう組織だ。殺しでも何でもやる、手段を選ばねぇきたねえ組織だ。」
「そうですか。それでは良い夢を。」
そこで俺は意識が途絶えた。
俺は目が覚めた。
「あれっ、何で俺は寝てんだ。」
確か子分どもを殺して、逃げる準備をしてたはずだぜ。くそっ思い出せねえ。まあ今はそれどこじゃねぇぜ。
俺は金目のものを持ち、アジトからずらかった。
(シズク)
少し、あの獣人の子供達の背景を調査するために、姫様がお風呂に誘ってくれたにも関わらず、お断りさせていただき、別行動をとります。
さっそく転移魔法で、先ほどマーキングした盗賊のアジトの近くに転移ました。私自身に隠蔽の魔法を唱えてから、中へ入ります。
暫く様子を見ていると、親分と呼ばれている者が子分達を、毒を盛って始末してます。
そして何かの準備をしている彼の背後に、近づき声をかける。
彼に聞きたいことを聞いたのち、記憶消去の魔法を彼に唱えます。
「これで彼は、私のことを覚えてないでしょう。」
そして私は転移魔法で、オリンピアへ帰還しました。
姫様と獣人の子供達が眠った後、天使達に報告するために、キッチンに向かいます。
他の天使達は毎晩、報告会議と言う名目で、宴会を開いてます。いったいどれほどお酒を持って来たのか。多分ベイスだとは思うんですが。
もちろんセバスも、メイド2人もこの時間は、自由なので参加してます。これに最近はサーシャも、参加してますね。
「皆さん、少しよろしいでしょうか?」
みんなが私に注目します。
「何だい、シズク。」
ライが代表で答える。
「あの後、獣人の子供達を、捕まえていた盗賊に尋問したのですが、スコルピオンと言う裏の犯罪組織が、どこかの貴族に子供達を売るためだったみたいですね。後に別件で、絡んで来るかも知れないので、皆さんも一応頭に入れといて下さい。」
黙って聴いていたアンズが手をあげる。
「私に孤児院を任せてくれませんか?1人でも多くの子供達に、幸せになって欲しいので協力したいのです。もちろん教師も続けさせて下さい。その代わりお屋敷のメイドが、出来なくなるのですが良いでしょうか?」
「姫様は承諾してくれるでしょう。孤児院の事と教師の事を頼みます。子供達の為に頑張って下さいね。」
「ありがとうございます。精一杯頑張ります。」
そして難しい話は終わり、朝までの宴会に突入します。サーシャだけは、エルフなので途中で、退散して行きますね。
(ドンガ)
ワシが神聖な力を感じて、ゴドワナ樹海に入って2日経った。地の精霊の力で、半分位の時間で、ここまでこれたんじゃが、まだ目的地は遠いのう。
目の前に洞穴がある。今日はあそこで、休むとするかのう。ワシは中へ入る。最近まで住んでいたような生活感があるのう。しかもじゃ、死体が4体もゾンビとして動いておる。
ワシは神聖魔法が使えんから、こういう時は打撃で脳を破壊するのが1番じゃな。
愛用のミスリルハンマーをリュックから取り出し、ゾンビの頭目掛けて叩きつける。そして4体のゾンビは、頭が破壊され動かなくなった。
一応、これも何かの縁じゃ、外に埋めといてやるとするかのう。
4体の死体を埋めてやったのち、洞穴を調べる。
「どういう事じゃ?こんな洞窟の中にも僅かに神聖な力を感じるのじゃ。」
とにもかくにも、プルナ山の麓に行くことじゃな。そこに行けば、ワシの運命が変わる気がするんじゃよ。




