29 獣人の子供達
(アカリ)
おにぎりを食べながら、ゼロに乗って移動し、工業区に着くと、工場のような建物が何件も建てられていた。少し驚いて見ていると、シズク達と出掛けたはずのベイスがやって来る。
「あれベイス。シズク達と出掛けたんじゃなかったっけ。」
「用が済んで、わしだけ先に帰って来たんじゃよ。」
「なるほどね。しかし、いつの間にこんな数、建物を建てたの?」
「酒蔵以外はまだ中はからじゃよ。だから案外、早く建てられるんじゃ。まあ、いずれ来る住人の為の働き場所じゃな。」
おぅ、ベイスがいろいろと考えてくれていたことに、驚いた。お酒以外の事に、あまり関心がないタイプだと思っていたよ。
「秋の収穫を迎えれば、わしも忙しくなる。今の内に出来るだけ建物を建てといた方がいいだろう。」
ベイスには、頑張っていろいろ作ってもらわないとね。その後私達は、他愛のない話をして別れた。
そして次に、教会へ向かう。やはり最後はここだろう。教会に到着すると、エジャ神父が迎えてくれる。
「これはアカリさん。子供達に会いに来たのですか?」
「そうだね。みんな元気かなって。それじゃ行くね。」
神父と別れる。ゼロに外で待っててもらって、トコトコと教会の中を歩いて行く。母さまの像に軽く挨拶をしてから、教室に向かった。
アンズがエルフの大人と子供達に、共通語の読み書きを教えているところだった。
終わるまで、邪魔しないようそっと外に出て、ゼロとディスクで遊んだり、精霊玉をツンツンして時間を潰していると、授業が終わってエルフの大人達が教会から出て来る。そして彼らはワタシに挨拶をして、帰って行った。
教室に入ると、ワタシと入れ違いに、授業が終わったアンズが、屋敷へ戻って行った。
「みんな、お疲れさん。おやつ持って来たよ~。」
ジュースとクッキーを召喚し、机に置いた。
「アカリおねえちゃん、ありがとう。」
ティナが、かわいらしい声でお礼を言う。しっかりとお礼の言えるいい子だね。
リノアがトランプ出し、子供達が集まる。案の定、精霊と同じくトランプが子供達のブームになっていた。アンズから、ババ抜き以外も教えて貰っているみたいだね。
「アカリねえ、トランプもっと欲しい。」
「ん。いいよ。」
新たに5セット召喚し、アーシェに渡す。
「アカリねえ、ありがとう。」
「さあ、皆でババ抜きやるよ~。」
男の子達もいれて7人で、ババ抜きをして遊んだ。その後は、精霊達も入ったりして、あっという間に時間が経ち、お開きになった。
教会から出ると、すっかり忘れてたゼロが、居眠りして待っていてくれた。ワタシはお礼を言って、ゼロに乗り屋敷へ出発した。
屋敷の庭まで戻って来ると、突然、目の前にシズク達と汚れた子供達が現れた。頭から獣の耳が、お尻からしっぽが生えた子供達だった。
「みんなお帰り。この子達は?」
ワタシはあまりのことに、ゼロに乗ったまま話しかける。
「はい。この子達は、獣人の孤児で、盗賊に囚われていた所を救いました。オリンピアの孤児院で、引き取ろうかと思います。」
オリンピアの新たな住民って訳ね。おっと、ゼロから降りて、先ずは自己紹介だ。
「みんなこんにちは。ワタシの名はアカリで、この街の代表者だよ。よろしくね。」
挨拶すると、1番年上に見える男の子が代表で、
「こんにちは。僕はライといいます。この子はサラです。僕たちを助けてくれて、ありがとうございました。」
孤児って聞いたけど、しっかりしている子だね。
「それじゃあ、先ずはこの子達を、綺麗にしようか。それとも先に食事かな?」
子供達を見ると、全員のしっぽが丸まって、怯えてる目をしているね。いきなり知らない所に、連れてこられたら当たり前だよ。いや、でもみんなゼロを見ているね。
―神様、子供達に怯えられてるから、先に家族と風呂に行ってる。―
そう言って、小屋に帰って行った。子供達はゼロに怯えていたらしい。
「食事は、先ほど食べさせました。お風呂に入れましょう。」
「うん。」
屋敷に入るとセバスが立っており、
「お帰りなさいませ。お嬢様に皆様。」
「ただいま。セバス。すまないけど、男の子達を男湯で、綺麗にしてくれるかい。女の子達は、アンズとあたし達で面倒みるから。」
「かしこまりました。」
男の子はカイを先頭に、セバスの後を着いていく。
そしてアンズが姿を現して、
「アンズ、女の子を綺麗にして。もちろん洋服もね。」
シズク達も誘い、お風呂に向かおうとするが、
「すみません。姫様。少し用がありますので、これで失礼します。」
「ん。解った。それじゃアンズ行こうか?」
シズクと別れて、脱衣場に向かう。女の子はサラを先頭に、アンズに着いていく。
脱衣場で、アンズ以外みんな裸になる。
「アンズも一緒にお湯に入れば?」
「いいえ。私は使用人ですので、遠慮します。」
「そう。別にワタシは気にしないのに。」
女湯に入ると、ゼロ達が、お座りをして待っていた。
「ゼロ達はワタシが洗うから、あなた達は、小さな女の子を洗ってあげてね。」
小さな女の子を各1人ずつ、担当して洗ってあげる。サラは一番小さな兎耳の女の子を、石鹸で洗ってあげている。初めて見るだろう泡の石鹸に、しっぽを丸め、目を瞑ってじっと耐えている姿が、少し可愛い。
ゼロ達の事を恐がる余裕もないみたいだね。
ワタシもゼロ達を洗い終わり、みんなでお湯をぶっかけて洗い流し、お湯に浸かった。
アンズだけは、みんなの服を用意すると言って出ていった。恐らくだが、初めて入る温泉に獣人の子供達は、あまりの気持ちよさにサラに捕まり、気を許して眠そうにしている。
サラは慣れているのか、子供達をみながら寛いでいるね。
レフィとサーシャは、何やら仲良さそうに話をしている。今日のことを話してるのだろうか。
ワタシもイチとイチ子を両脇に抱え、のんびり浸かった。
子供達がのぼせる前に上がると、アンズが脱衣場で、みんなの服を用意して待っていた。
子供達は初めてなので魔法で渇かさないで、タオル等、設備の使い方を教えとく。サラが代表で一所懸命、使い方を覚えようとしているね。
子供達が綺麗な下着と寝間着に、目を輝かせて見ている。みんな着替え終わると、
「アンズ、今日は全員を屋敷に泊めましょう。空いてる部屋に連れていってあげて。」
「はい。後の事は、私達に全てお任せを。」
子供達と別れて、キッチンに来る。シズク以外みんな揃っていた。
夕食を食べて、さっさとみんなと別れ部屋に向かう。そして精霊達とトランプを眠くなるまでやって、ゼロ達に囲まれ眠った。




