21 エルフの子供達2
オリンピアに住む者には、共通語の識字率を100%にとルールに付け足した。
したがって、午後からの授業は、共通語の読み書きの出来ない大人のエルフも混ぜて行う。
「サーシャは、共通語の読み書き出来るの?」
「小さい頃、母に教わりました。」
族長の娘だし、厳しく教育されたのだろう。
大人のエルフも子供のエルフも、ものすごく真剣だ。ワタシ達は邪魔しないように、そっと教会を出た。
辺りを、ふよふよ飛んでいる下位精霊達をつついたりして、時間を潰す。
サーシャに、少し気になっていたことを聞いてみる。
「サーシャ。エジャ族って、サビロニア帝国に住む人族達に襲われたんだよね。彼らの目的はなんなの?」
「我々を捕まえて、奴隷にするためですね。」
「でも理由もなく、同族が攻められたら、エルフの国だって黙ってないんじゃない?」
「エルフはほとんどの者が、シャーウッドの森から出ません。基本、仲間意識は強いのですが、森から出たエルフには無関心なんです。」
「それを知っているから人族も攻めたのね。」
「実は、エルフがシャーウッドの森から出る理由は、外の世界を知りたい物好きか、国を追われた犯罪者が、ほとんどなんです。」
しかし、奴隷という言葉が気になる。世界が発展していれば、この言葉は表に出てこない。表には必要ないからね。勿論、裏で使われる言葉になる。
「ワタシのせいでもあるし、あなた達が1人も死なないで助かって、本当に良かったよ。」
「私達は、そういう風に考えてません。むしろ運が良かったと思ってます。結界が弱くなって、人族に見つからなければ、ここには来られなかった。神様と精霊様の導きです。」
と、言って両手を合わせ祈りはじめた。
たまに通るエルフが、ワタシに挨拶をする。示し合わせているかのように、アカリさんと呼ばれるね。
そして首謀者であろうエジャ神父が、教会からこちらにやって来る。
「アカリさんの周囲には、いつも精霊様がいますね。精霊様は余り人に近づかないのですが。そもそも、精霊様が許可しない限り触れません。」
ワタシが、精霊をツンツンしているのを見て、神父が言う。神だから許可とかなくても触れるんだけどね。
神父はそう言い、目を瞑って祈りだした。
サーシャは、まだ祈っている。なんなのこれ。
「君たち~。戻っておいで~。」
2人は、我に返る。
丁度教会から、授業を受けていたエルフ達が出てきて、ワタシに挨拶して去って行く。
「授業が終わったみたいだね。」
ワタシとサーシャは、神父と別れて子供達の元に向かった。
アンズは授業が終わると、屋敷の仕事があるので、帰って行った。
教室に入ると、勉強で少し疲労気味の子供達の為に、クッキーとジュースを召喚する。
「はい~。みんなお疲れ様~。おやつ持ってきたよ~。」
一番小さいティナの頭を撫でながら、子供達をテーブルに誘う。
みんな小さな口で、食べ慣れないクッキーをポロポロとこぼしながら、食べている。
男の子は一番上のセシル、女の子はリノアが、小さな子の世話をしている。
その姿をワタシは、ほっこりして見ていた。そしてトランプを召喚すると、
「さぁ、子供は、思いっきり勉強した後は、思いっきり遊ぼうか。」
「わぁ、アカリねえ、これどうやって遊ぶの?」
アーシェは、何にでも興味を示す。好奇心旺盛な女の子だね。精霊の時と同じように、とりあえずババ抜きを教える。
そこら辺を漂っていた中位精霊が、集まってきた。
「あなた達も、やりたいの?」
人数が多くなったので、もう3個ほど召喚して、精霊に渡す。突然、精霊達が混ざったので最初は、緊張気味だった子供達はそれでも直ぐになれて、ワイワイし始める。
そして楽しい時間はあっという間に終り、夕食の時間になる。
「さぁ、みんな帰りましょう。そのトランプはあなた達に挙げるからね。アンズ先生が、トランプの他の遊び方を知っているから聞いてみてね。」
「はい。さようなら、アカリさん。今日は、有り難うございました。」
「アカリさん、さよなら。」
「アカリ姉、バイバイ。」
「アカリおねえちゃん、バイバイ。」
みんなにさよならを言って教会を出る。
「サーシャも家が近いから、今日はもう帰りな。」
「アカリさんを1人に出来ませんので、お屋敷までお送りします。」
「それなら大丈夫。シズクいる~?」
シズクを呼ぶと、目の前に転移してくる。サーシャは、突然のことでびっくりしている。
「姫様。お疲れ様です。」
「シズクに送ってもらうから、サーシャは家に帰りな。」
「それでは、今日はこれで失礼します。」
そう言って礼をして、去って行く。
「それじゃ、シズク屋敷に送って頂戴。」
「かしこまりました。」
屋敷の庭に転移する。
今度、エルフ達と機会があれば、バーベキューをしようかな。
そんな事を思いながら、ワタシは屋敷の扉を開けた。




