2 女神と精霊
(アカリ)
ワタシは結界魔法を発動した日から、3日後に目を覚ました。
「知らない天井だね。」
お約束の言葉を口にしてから、ワタシは周りを見渡す。どうやら木で作られた家に、草が敷き詰めら、その上で寝かされていたようだ。
「シズク~いる~。」
どこにいたのか、転移魔法で目の前に現れた。
「お呼びでございますか?姫様。」
「うわっ、びっくりした、えっと、ワタシどのくらい寝てたのかな?そして今、どういう状況なの?」
「姫様は、あれから丸3日寝ておられました。その間、私の指示で各属性の精霊が周辺を開拓してくれています。姫様の神力を吸収した精霊は能力が上って、様々なことが出来るようになっているようです。」
ちなみに、1日は24時間、1年は360日、四季もちゃんとあることを、精霊たちに教えてもらったらしい。今の季節は春だそうだ。
また、アースのような科学が、この星では全く発達していなくて、独自の魔法力で文明を発達させているらしい。そして、沢山の人種が生息しているんだって。
アースで科学はもうこりごりだから、丁度いいんじゃないかな。
「さすがシズク、ありがとう。とりあえず各属性のリーダーを呼んでくれる?挨拶と、名前を与えたいから。」
「かしこまりました。」
シズクは念話で話をする。そして目の前に火、土、風、水の精霊があらわれた。
「やあ、ワタシが女神のアカリだよ。君たちはワタシにつかえる気はあるかな?」
代表で、女性姿の水の精霊が答える。
「もちろんでございます。神につかえるのが、精霊の役目の1つですから光栄なことです。」
「うん、ありがとう。それじゃ君達に名前をつけるね。火の精霊はファイヤーだからファイ、水の精霊はウィンディーネからとってディーネ、風の精霊はシルフィ、土の精霊は、なんとなくでムーね。」
安易だけど覚えやすいから、これで決まり。すると4体の精霊が一瞬だけ光輝く。
「何が起きたの?」
「姫様の名付けで大精霊に進化したのでしょう。」
そんなに簡単に進化するものなのかな。
「ありがと~神様~。」
風の大精霊進化したシルフィが代表で答える。
4精霊のタイプというか性格は、ファイは強気でイケイケな性格、シルフィは属性が風の為か自由奔放な性格、ムーはのんびり屋の性格、ディーネは冷静で1番しっかりした性格だね。
「これから長くお世話になる精霊たちに、過ごしやすい環境を作った方が良いかな?」
シズクに聞いてみる。
「そうですね。それがよろしいかと。」
「うん。それじゃあ、何をどうすればいいか指示を頂戴。」
「まずは姫様の召喚魔法で、精霊よりも私達が生活するのに必要な物を召喚しましょう。」
「よし、それもそうだ。早速やってみるよ。」
ワタシは両手を広げ召喚魔法をとなえる。すると黒いモヤの中から、机、椅子、食器、棚、タンス、ベッド、じゅうたんなどの日用品が、大量に召喚された。
アースに存在したものを召喚してみたんだけど。この世界に、あるかどうかはわからないが、まあいいだろう。
「ワタシやシズク、精霊は食事、排泄、風呂など必要ないけど、今後のことを考えると必要だよね?」
シズクに聞く。
「それは水の精霊たちと土の精霊たちによって、下水管理をしますので、問題はありません。」
さすが精霊たちだ。とりあえずワタシとシズクの物は必要に応じて召喚する事にして、精霊たちに何か必要な物がないか聞いてみる。
火の精霊は、常に火が灯っている場所が欲しいんだと。
土の精霊は農作物や植物の種。
風と水の精霊は現状十分らしい。
確かに神がいる聖域に近い状態のこの場所は、精霊たちにとって十分な環境なのだそうだ。
「まずは、なんといってもお米だね。」
あとはジャガイモ、なす、きゅうりなど思いつくかぎりの野菜の種と花の種を召喚した。
「これらでいろいろ育ててみて、なんか問題が起きたら言ってね。」
ムーに大量の種を渡す。
「ワカッタ、マカセテ」
そう答えて消えた。さっそく試すのだろう。
次は火の精霊たちのために外に出る。建物の前にキャンプファイヤーのように木が積みたてられていて、そこに火の精霊たちが集まっている。
「ワタシが火を着ければいいのかな?」
「そうみたいですね。」
ワタシは手をかざして集中した。そして積み立てられている木に聖なる火、聖火が灯り始める。
すると火の精霊たちは、待ちきれず一斉に火へと群がった。この火はワタシ達、神にしか消せない神の炎だよ。ありがたく思うがよい。
「これで良いね。後はもう1つ、ついでにやっとこう。」
そして地面に手を当て集中する。すると2メートルくらいの木が生えた。
「これは世界樹の苗木よ。みんなで大切に育てていきましょう。」
そしてワタシは、この体がまだ馴染んでいないのか、世界樹を召喚するのに大量の神力を使ったため、また意識を失った。