15 エルフ族
屋敷の庭に転移して来ると、ゼロ達が小屋の中から走って出てきて、ワタシに飛びついて来た。
耐えきれず後ろに倒れる。そして、顔を4匹に舐められ続けた。他の3人は、私のことを助けもせず、いつの間にか屋敷の中へ入っていた。
ワタシも負けじと、4匹をもふもふしていると、エレナがやって来て、肉が乗っている大きな皿をだした。
そうしたらあっという間に、ワタシの周りから居なくなり肉に群がっている。
「食事の時間だったか。助かったよ、エレナ。」
「食事の用意ができてます。お嬢様も中にお入りください。」
「ん、わかった。」
キッチンに行き、みんなで夕食を食べて、今日は一人でお風呂へ向かった。
脱衣場で、服を脱いで中に入ると、ゼロ達が待っていた。
「いつの間にか居るし。」
―飯を食べてすぐ来たのだ。―
それにしても速すぎじゃないかな。
「それじゃみんな洗って行くよ~」
「「「ウォン」」」
石鹸を泡立たせ、1匹づつわしゃわしゃする。少し乱暴にお湯をぶっかけ洗い流し、ワタシもサッと洗って、いつの間にかディーネの居るお湯の中に入った。
「アカリ様、残りの3方向への川を引き終えました。」
「もう作ったのか、ありがとうね。これで島の水が多くなれば、生物も生息しやすくなるよね。」
そして島全体が豊かになるはずだ。
「そうですね。」
その後、20分ほどディーネと会話したりして、お風呂から上がる。
脱衣場で待機していた、アンズに渇かしてもらい、寝間着に着替えて自室に戻る。そしてトコトコ歩くワタシの後ろを、当然の様に着いてくる洗い立てのいい臭いのする4匹に、囲まれて眠った。
(エジャ)
わしは寝てる所を、突然起こされ、
「族長、大変です。サビロニア帝国の兵隊が、このエジャの森に向かって、進軍してきています。」
「なんだと!兵士の数は?」
「報告によると、約500名だそうです。」
少し前から、村を守っていた結界が何故か弱まり、我々の存在が帝国にバレてしまった。奴ら人族にエルフ族が捕まれば、男は奴隷兵に、女は辱しめを受ける。
「くそっ、どうして結界が弱まったのだ。」
文句を言っても何も変わらないけど、つい苛立ち言ってしまった。
「ロミ、ランドとサーシャをここに。」
妻のロミは、息子と娘を呼びに部屋から出ていった。間もなく3人が来ると、
「族長、話は聞いた。奴らが来る前にここから逃げよう。」
「いいえ、最後まで戦うべきだわ。」
二人の性格が出る。ランドは争いごとを嫌う。サーシャは、逆で好戦的な性格だ。
「敵は約500名、それに対して、エジャ族の戦える者は、30名にも満たない。これでは、いくら地形がこちらに有利でも、結界が意味をなさない今、勝ち目がない。」
「大丈夫よ、森で奇襲をかければ、何とかなるわよ。」
わしは腕を組んで少しの間考え、決断をする。
「戦って勝てたとしても、こちらも無傷とはいられないだろう。そして帝国は、また確実に攻めて来る。だから村の宝の転移石を使って、ここから逃げることにする。」
「でもあの転移石は、転移先を選べない物だわ。」
サーシャが抗議する。
「それでも転移石に掛けよう。精霊様も見守っていてくれる筈だ。」
「まだ時間はある。それまで、他の者の準備をさせよう。俺は男ども、サーシャは女どもをみろ。」
「ん。わかったわ。」
「それじゃ2時間後、村の広場に全員集めろ。」
「「了解。」」
子供達が出ていく所を見届けてから、ロミに、
「転移先次第では、エジャ族は滅びるやもしれん。」
「大丈夫ですよ、あなた。精霊様が、見守っていてくれる筈ですから。」
確かにそう思いたいが、数日前から、精霊様の気配が、少なくなっているのが気になる。
「わしは、転移石と結界石を取りに行く。ロミは、必要なものを魔法袋入れて、先に広場に行っていろ。」
ロミに指示してわしは、転移石と結界石が奉られている祠にやって来た。
「精霊様。600年以上も続いた、エジャの森のエルフは、ここを離れなければなりません。どうか御許しを。」
転移石と結界石を、大事に袋にしまう。
そして、空が少し明るくなり始めた頃、偵察していたエルフが、戻って来た。
「間もなく、奴らの先陣がここまで来ます。」
「そうか。」
広場に向かうと、エジャ族が全員そろっていた。
「皆のもの、エジャの森をこんな形で捨てることになるとは、許してくれ。」
「族長のせいではありません。悪いのは帝国です。今は全員が、生き延びることが第一です。」
他の者も、同じ気持ちみたいだ。
「それでは転移石を使う。皆も、精霊様に祈ってくれ。」
皆それぞれ祈り出す。わしは転移石を、握りしめ呪文を唱える。
周りの景色が一瞬で切り替わる。
どうやら、どこか別の森みたいだ。見たことのない、木や草が生えているので、どこか遠くに飛んだのだろう。
「ランド、サーシャ全員の確認を頼む。」
ランドとサーシャが確認する。と、言ってもエジャ族は50名しかいないので、直ぐに終わる。
「全員います。」
ランドが答える。
「そうか。とりあえず良かった。」
その時、わし達の目の前に何の気配を感じさせずに、メイド服を着た女性が姿を現した。




