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16 特別な剣



 国境を無事に越えた私たちは、我が国に戻ってきました。

 国境を警備する兵に、死の雪が降っているからと止められましたが、伯父様は公爵夫人の兄だと話して、妹が心配だからどうしても入りたいこと、自分で責任はとるということを話し、最後に隣国の許可も取っていることを話しました。いつの間にか許可を取っていたのですね。そこまで頭は回りませんでしたが、当り前ですよね。


 生まれ育った我が領土の町へと着きましたが、人っ子一人歩いていません。死の雪は降っていませんが、馬車の外には時折白い玉が遠目で確認でき・・・


「伯父様!玉がこちらに向かってきます!」

「当然だろうね。」

 のんびりと答える伯父様。護衛たちは剣を構えます。


「伯爵!あれは、剣できることはできません。本当に、大丈夫ですか?」

「・・・やってみないと分からないけど、理論上はあれを壊すことは可能だよ。まぁ、見ていなさい。」

「わかりました。でも、私が剣で相対したときは、なかなか斬れず弾き飛ばされてしまいました。やっと斬ったと思っても、あの玉は真っ二つになっても動きを止めませんでした。」

「ディー・・・それでよく玉を一人で抑えられましたね。」

「斬るのをやめて、遠くに吹き飛ばすことにして時間を稼いだんだ。結構大変だったけどね。洞窟のあの仕掛けがあってよかったよ。」

 追っ手を撒くために用意した道をふさぐ手段、あれが無かったらどうなっていたのでしょうか。悪役令嬢でよかったと思いました。悪役令嬢でなければ、あんなもの用意いたしませんもの。


 ディーと会話をしている間に、すぐ近くに来た玉を護衛が突き刺しました。見事に玉を突き刺した護衛の剣が、光を放ちます。あれは、魔法の光?


 パァンっ!

 破裂音と同時に、護衛の剣に突き刺さっていた玉がはじけました。


「な、あれは・・・あの魔法は何ですか、伯父様!」

「見たことがないですよ、あんな魔法。」

「魔法とは言えない代物だね。あれはただ、濃密な魔力を流しただけだから。」

「濃密な魔力ですか?つまり、普通に魔法を使う時よりも多くの魔力を使ったということですよね?」

「そうだよ。成功してよかったけど・・・魔力を使うからね、壊せる数は限られる。」

 馬車の外では、新たに現れた玉がまた破裂音をたてました。


 パァンっ!パァンっ!


「伯父様、玉はまだまだやってくるようです・・・このままだと。」

「護衛の魔力が持たないね。実験終了、撤収!」

「「「はっ!」」」

 伯父様が叫ぶと、護衛たちは剣で近くの玉を弾き飛ばし、馬車はスピードをあげました。


「揺れるよ。みんな馬車の手すりにしっかりつかまって。」

「は、はい。」

「なぜこのようなところに手すりがあるのかと思っていましたが・・・こういうことだったんですね。」

「まぁ、それもあるよ。あの玉から逃げる必要はあるし、一応追われる身だからね・・・」

「あ、私が・・・」

 そうです、指名手配犯の私がいるのなら、追われる前提で考えるでしょう。

 一応、ディーに髪の色は変えてもらっていますが、ここには私を知る人がたくさんいます。バレない保証はどこにもありません。


「あの剣は僕の作品でね。常に所有者の魔力を吸い取って、ためておくことができる。だから、いざ使うとなった時も少ない魔力で済む。まぁ、元に必要な魔力が多いから、少ないとは言っても通常よりは多いけどね。」

「なるほど。あれの剣はもう一振りありますか?」

「・・・実はね、君の剣はもうすでに護衛たちと同じものだ。」

「え、そんなはずは!」

 ディーは慌てて確認しますが、やはり愛用の剣だったようです。自分が扱う剣がすり替えられていれば気づくはずだと言っていましたから、交換されていることはないでしょう。


「驚かさないでください、伯爵・・・」

「嘘は言っていないよ?その剣も同じような効果を付与しておいたから。普通はそんなことできないけど、その剣の素材は僕の作った剣と同じでね、魔法を付与するだけでできた。ずいぶん、珍しい素材を使っているけど、知っていたかい?」

「いいえ。ただ、これは家宝ですから・・・そういえば、伝承がありました。この剣を使った当主が、発動された喰らいの書を止めたと・・・仲間たちと共に止めたそうですが。」

「あぁ、君の家だったのかい。確かに数百年前に喰らいの書が使われてことがあったそうだ。僕が読んだ文献には、当時の状況が事細かく書かれていたんだけれど、最後の方は汚れがひどくて読めなかったんだ。そうか、君の家が終止符を。」

「私の先祖だけではありませんが、止めた者の中に私の先祖がいたようです。まさか、本当の話だとは思っていませんでした。だって、七禁書が発動すれば国は亡びるというのが常識です。なのに、今も我が国は存続しているのですから。」

「まぁ、喰らいの書の場合は対抗書があるからね。七禁書の例外なのかもね。」

 話が一区切りついたところで、私は伯父様に質問しました。


「あの、なぜ玉は破裂したのですか?」

「あぁ、その説明をしていなかったね。あの玉は魔力を吸うって話をしたよね?」

「はい。そして、魔力が少ないものからは生命を吸うと。」

「そうそう。あれはね、魔力を吸って成長するんだけど、成長するたびに一度に吸える魔力の量が大きくなるんだ。ということは、一度に吸える魔力が限られるということ。その限界を超える量を強制的に流すことで、容量を超えさせて壊せるんだ。」

「・・・それって、かなり成長した玉相手だと・・・」

「そうだね。壊すのは難しくなる。だから、早く止めないとね。」

「そうですね。」

 今はまだ壊せますが、いずれ壊せなくなるほど成長した玉が現れます。そして、その玉はほぼすべての人の生命を吸えることでしょう。今は安全な魔力が多い貴族も、例外ではなくなります。




 馬車は、荒々しく我が屋敷の敷地内に入りました。

 開け放たれていた門は、私たちが入ると同時に固く閉ざされます。玉が侵入してくれば危険ですからね。それはわかっているのですが、何か胸騒ぎが致しました。


 でも、もう遅かったのです。

 馬車は、騎士に囲まれました。何度か見た王城の騎士。


 指名手配犯の自覚が足りませんでした。我が屋敷は一番に見張られる場所でしょうに。

 私たちは、王城の騎士に包囲されました。




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