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13 新聞



 行きと同じ最短ルートで我が国へと向かいます。違いは、馬車が豪華なのと、伯父様がいるので使用人や護衛がついてきて、人が多いことです。


 私たちは、一泊するために町へ入りました。あれから2日が経ちました。明日には、我が国との国境付近にある町に一泊する予定です。そこで準備を整えて、我が国に入国し、そのまま王都を目指します。


「ご主人様、これを。」

 馬車に乗ったままの伯父さまに、護衛が窓から一枚の紙を手渡しました。

 伯父様の前に座っている私は紙をのぞくこともできず、伯父様がこちらに見せてくださるのを待つしかありません。なので、伯父様と伯父様の隣に座るアンの様子をうかがっていました。紙をのぞいたアンの表情は変わりませんが、伯父様は目をわずかに見開きました。


「・・・髪は隠した方がいいかもしれないね。」

 私のことを見ながらそう言った伯父様は、私に紙を手渡しました。私はそれを受け取って、隣のディーと一緒に紙に書かれている内容を読みます。


 紙は、ちょっとした新聞でした。どうやら我が国で起きていることのみを載せているようで、号外というものかもしれません。


 隣国で降る『死の雪』未来の王妃の呪いか?


「・・・つまり、ゴシップですね。」

 書かれていたのは、我が国で起きた死の雪のこと。そして、指名手配された私のことです。簡単に文字のみですが、容姿も書かれています。


「不可思議なことが起きて、それで被害を被るとね、人間っていうのは誰かのせいにしたがるんだよ。今回は、国が指名手配をしているし。」

「・・・伯父様、このまま国に戻れるでしょうか?」

「簡単で難しいよ。たとえば、君の命を軽く見るなら、そのまま国の国境に行けば王都まで連れて行ってくれるだろうね。丁重に扱ってくれるとは思えないけど。」

「さすがに、罪人の扱いは嫌ですね・・・覚悟はしていても。」

「覚悟ね・・・その覚悟はいつしたものなのかな?」

 それは、この世界が乙女ゲームの世界だと気づき、私が悪役令嬢だと、運命を知ったときからです。


「ねぇ、レナ。君は変わってしまったけど、それでも半分は君だ。」

「・・・」

 変わってしまった。


 何度も言いますが、伯父様と会ったのは今回が初めてです。だから、変わるも何も、伯父様は前の私を知らないはず・・・

 前の私?それは何を指すのでしょうか?


 その言葉で思い浮かべるのは、乙女ゲームの悪役令嬢ヘレーナです。

 まさか?


「伯爵、変なことを言うのはやめてください。レナは、前から優しい子です。変わったと言いますが、あなたが見たのは幼いレナでは?幼いレナと今のレナを見て変わったと思われるのなら、それは成長というのですよ。」

「・・・僕は、幼いレナとは会ったことがないね。きっと、可愛らしかったんだろうなぁとは、思うけど・・・」

「伯父様が知っている私は、どんな私ですか?」

「レナ?」

 もう、うやむやにするのはやめようと思います。私は、伯父様に続きを促しました。それを見て、ディーが驚いています。ディーからすれば、変な言いがかりをつけられているようにしか見えませんものね。

 私の顔を見て、伯父様は目を細めて口を開きました。


「・・・復讐者だよ。」

「・・・!」

「復讐者?いったい何を・・・」

 意味が分からないというディーとは違い、私はその言葉だけでわかってしまいました。


 この人は、悪役令嬢ヘレーナを知っている。

 思い出されるのは、鏡に映る悪役令嬢の冷たい瞳。凍えるほどの冷たい表情の中にある、復讐の熱い炎。


 伯父様と2人きりで話すべきでしょうか?せっかく乙女ゲームの話が分かる人がいるのです。追放や処刑を回避するために協力を仰ぐべき・・・ですけど。

 残念ながら、今は本編と逸脱しています。私自身の破滅よりも国の破滅を回避する方が先決で、国を救うのが私の今の目標です。


 なので、これ以上の問答は必要ありません。


「確かに、私は変わりました。それで、何か問題がありますでしょうか?私だって自分がかわいいのです。でしたら、変わることも仕方がないと思いませんか?」

「問題・・・は、ない。君は君のようだし・・・ただ、伯父さんは少し心配なんだよ。君の状況は少しおかしなことになっているようだから。」

「確かにそうですね。でも、今はそのことにかまっている場合ではありません。国の危機なのです。」

 悪役令嬢に転生したのは、かなり大ごとでしたが・・・今指名手配されていることも大問題ですが、それ以上の問題があるのです。とりあえず置いておくしかないでしょう。


「・・・よくわからないけど、レナの言う通りですね。伯爵、変なことを言っていないで、しっかりレナを安全に王都まで連れて行ってくださいね。何かあっても私が守るつもりですが、何もないほうが最善ですから。」

「アンも、守ります。ですが、アンが守れるのは命だけです。心までは守れませんので、何もないことが一番です。」

「うん、レナの侍女はわかっているね。優しいレナに、激しい戦闘だとか血だとかを見せたくないからね・・・」

「・・・友達の前で変なことを言って悪かったね。まぁ、王都に着けば何かわかる気がするし・・・この話はこれで終わろう。話を戻すけど、レナの銀髪は目立つと思うんだよね。」

「伯爵の銀髪もですよ。」

「ま・・・僕は男だからいいとして、問題はレナだ。染めるのも嫌だしなぁ・・・帽子で隠すにも限度がある・・・」

 私の髪は長いですからね。お団子にするにしても、帽子の中が窮屈そうですし、髪が入り切るとは思えません。


「レナの美しい髪が染められるなんて、冒涜です。伯爵、レナの髪は私が魔法で変えますので安心してください。ついでに伯爵も変えませんか?」

「それは便利だね。だけど、僕は遠慮しておくよ。僕は、僕として入国したいからね。そのほうが自然だし。」

「わかりました。とりあえず、髪色を変えていれば雰囲気も変わるから、こそこそ隠れる必要はないと思うよ。また、屋台で食べ歩きでもしようね、レナ。」

「はい。ありがとう、ディー。」

「あ、伯父さんも混ぜて欲しいな・・・むしろ、レナと2人きりで・・・」

「伯爵は目立つので。」

「アンも、もちろん行きます。ご安心ください、アンは目立ちませんから。」

「護衛はアンに頼むわね。」

「なら、3人で女性だけの息抜きといこうか。」

 笑い合う女性陣の中で、一人伯父様だけが肩を落としていました。

 伯父様とは、すべてが解決した後に、王都のご案内でもさせていただきたいと思います。




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