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プールサイドでの異変

挿絵(By みてみん)


sbnb様から再び……って、可愛い、可愛すぎる!!


「誰かー!! 鼻血を吹いて人が倒れてる……!!」

≪木曜日≫


 プールサイドは妙に暑い。

 そしてなんとなく、異様な空気に包まれていた。

 立ちこめる塩素の匂いと、そして……。


「久しぶりね、下僕5号」


 今日の1時限目は、災害現場において、被災者をより迅速かつ的確に救出活動することを任務とする特別救助班(通称P-REX)からやってきた、崎本という講師による、水害時における救出訓練である。


 生徒達は全員がハーフスパッツタイプの水着を着用し、プールサイドに一列に並んでいる。そんな中、お互い鍛え上げた身体を見せつけるかのように、水着姿で向かい合って立つ二人の筋肉マン。


 そして。水着ではなく、活動服姿で、スラックスの裾をまくって裸足の状態でこちらを見守っている和泉がいた。

 周はできる限り奴を見ないように気をつけて、講師と教官の方に注意を集中する。


「あんたの下僕になった覚えはないんですがね……北条隊長」

「お黙り。一度だって、アタシに勝てたことないくせに」


 何の勝負なんだ、と突っ込む勇者はいない。

 腕相撲か何かかな……? 


 すると北条はつまらなそうに、近くに置いていた薄手のパーカーを羽織る。


「それより、授業を始めていいでしょうか? 警視」

 返事を待たずに彼は大きな声を張り上げた。

「いいか、お前ら。今さら水が怖い、泳げません、なんて言うのはなしだからな?!」


 それから彼は授業の概要を説明し、本日の教場当番である倉橋に向かって告げた。

「こっちへ来い」

 彼は皆と違って水着の上にジャージを着用していた。相当、暑そうだ。


 言われるまま教官の傍に寄った倉橋は、前触れもなく、ジャージ姿のままプールの中に蹴落とされた。


「着衣のまま深い水に落ちたら、まずはどうする?!」


「じっとしているべきです!!」

 迷いなく手を挙げてそう答えたのは、西岡だった。

 いつも寺尾とつるんでいる腰巾着のイメージしかなかったが、その時の彼の表情は自信に充ち溢れているように見えた。

「衣類が浮き袋の代わりをします。しかしそれもその内、水を吸い込んで役に立たなくなります。そうなったら……衣服に空気を入れて一時的に浮き袋を作ります」


 西岡の言ったことが聞こえたらしい倉橋は、彼の言う通りにして、少しの間水面に浮かんでいた。


 いいぞ、と合図を受けて立ち泳ぎをしていた彼はプールサイドに上がった。


「それから、これは忘れるな」

 崎本は全員を見渡して言う。

「気付かないだけで水の中でもかなりの汗をかいている。訓練中は、小まめな水分補給を決して怠るな。いいな?」


 はいっ、と大きな声が揃う。


 プールサイドに設置されているベンチには生徒達が持ち込んだ水筒、及びペットボトルが並んでいる。


「今から潜水の練習を始める。いいか、できるだけ長く潜っていろ」


 そうして周達は何度か足のつかない深いプールに潜った。


 決して泳げない訳ではないが、やはり深い水の中は怖い。

 周は何度か潜水を繰り返している内に喉の渇きを覚えた。


 水分補給を怠るな。


 言われた通り、持ち込んだミネラルウォーターのペットボトルを手に取る。一口飲むと落ち着いた。


「よし、あと3回は繰り返せ!! 俺がいいって言うまで自ら顔を出すな!!」


 果たして息が続くだろうか。

 少しの不安を覚えて周が深呼吸を始めた、その時だった。



「西岡?!」


 そう叫んだのは誰だろうか。


 驚いて振り返ると、彼は水の中で苦しそうにもがきながら、助けを求めて腕を伸ばしている。


 すぐに反応したのは教官達だった。

 彼らの手によって西岡はプールから救助されたが、その顔色は真っ白で、なぜか全身がひどく痙攣していた。


「しっかりしなさい!!」


 北条は彼の身体を仰向けにし、気道を確保する。

 そうして即座に人口呼吸を始めた。


 崎本が心臓マッサージを試している横で、和泉は携帯電話を取り出す。


「……救急車をお願いします、場所は……」


挿絵(By みてみん)

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