表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/157

Q:眉毛は書いてもいいですか? A:書きなさい、怖いから

「はい、じゃあ。あなた。実際にやってみせて」

 梢は北条の傍に近づき、膝をついて耳元に口を寄せる。


 それから。

「わーっ!!」と、大音量で叫んだ。


 キーン!!


 突然、耳の近くで大きくて甲高い声を出された周は眩暈を覚えた。

 彼女の声はそれだけで凶器になりうる。


「はい、正解! 他には?」

 北条は周の上から少し身体を起こし、女子生徒達を見回す。

 誰も彼も梢に遠慮しているのか、それとも本当にわからないのか発言を控えている。


「なんだ、他には出ないの?」


 しかし。

「はい!!」


 手を挙げたのは、やはり同じ教場の女子学生、水城陽菜乃みずきひなのであった。


 どう言う訳か彼女はいつも宇佐美梢と張り合っている。それは入校してから約3か月経過した現在、同じ教場の学生達の間では周知の事実だ。


 彼女は許可が降りる前に発言する。


「耳か鼻に噛みつく、もしくは目玉を突く、です!!」

「そうね、それも正解……実演してみせなくていいから」


 北条は周が起き上がるのを助けてくれてから、自分も立ちあがる。そうして一同、特に女子達を見回して言った。


「ま、こういう訓練の場では理屈で解答できるけどね。いざとなったらパニックになってしまうのが関の山よ」

「……」

 全員が黙り込んだ。現実はマンガやドラマのように上手くはいかない。


「パニックになると、冷静な時にはできていたはずのことができなくなる。そうね?」

 いきなり話を振られた沓澤は、はい、と返事をする。


「相手が女だと思ってバカにする男は掃いて捨てるほどいるわよ。警察の中にもね。そういう奴らに舐められないためには、覚悟を決めなさい。女を捨てるぐらいのね」


 それは少し酷ではないか……と、周は思ったが黙っていた。

 女子学生達は誰も返事をしない。


 北条は腰に手を当て、溜め息交じりに続ける。


「だ、か、ら。アタシが言いたいのはつまり……こういうこと。制服がカッコいいからとか、つまらない自己満足のためにこの学校にいる奴は、いますぐ退校しなさい!!」

 急に最後だけが大声になったので、ドキっと心臓が跳ねる。


「特に、そこのあんた!!」

 ツカツカと大股で北条は女子学生達の群れに歩き進んで行くと、いきなり一人の手首をつかんで持ち上げた。


「いい色ね、そのグロス。今年の新色?」

「は、はい……」

 ニッコリ笑ったかと思うと次の瞬間、

「バレないとでも思ってた? メイクは一切禁止。二度目はないわよ?!」


 女子学生は血の気を失った。


 グロスなる物が何なのか、周はそれすらも知らない。彼女が化粧していたことも、まったく気付かなかった。


「ほら、ボンヤリしない!! 次の行動にさっさと移りなさい!!」


 この人の前で隠しごとはできない……。

 周は改めてそう思った。


挿絵(By みてみん)


感想および読了ツイート、いつもありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ