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親愛なる藤江周巡査へ

 拝啓


 親愛なる藤江周巡査へ。


 やっほー!!

 ラブレターだと思った? びっくりした?! ごめんね(*^^)v☆


 実はね、藤江君には謝らなければいけないことがたくさんあるんだ。


 私、沓澤教官のことが好きなの。

 でも、奥さんも子供もいること知ってる。

 許されないことだってわかってた。

 それでも気持ちが抑えられなくて……教官も私のこと、大切にしてくれた。


 だけどね。

 すっごく不倫に厳しいんだよ、警察組織って。知ってた?


 発覚するとすぐ左遷されるか、辞めさせられちゃうんだって。


 教官に迷惑かけたくない。

 だけど好きでたまらない。


 どうしたらいいのかなって、悩んだ時、ぱっと気がついたのが藤江君だったの。


 あなたのこと好きなフリして、態度に出してたら教官と私のこと、疑う人なんてきっといないって考えたんだ。


 初めはね。

 なんだか細っこいし、顔は可愛らしいし、こんな人が本当に警察官になれるのかなってちょっと心配してたんだよ(ゴメンネ)

 でもよく見ていると……藤江君は誰よりも男らしかった。


 いつも皆に気を配って、誰かがミスをしても絶対に責めたりしなかったよね。

 辛くても、決して弱音を吐かなかった。

 私がトマト食べられないのを知って、いつも助けてくれたね。


 あなたの強さと優しさ、本当に……尊敬しています。


 沓澤教官もね、藤江君のこと褒めてたよ。

 ああいう奴が本当に、警官の鑑になるんだって。


 たくさん迷惑かけてごめんね。


 一緒に宮島へ行った時、楽しかった。

 寺尾のクズに脅された時も、庇ってくれたの、本当に嬉しかった。


 普通に出会っていたら私、間違いなく藤江君のことだけを大好きになっていたよ。


 なんて、身勝手もいいところだよね。

 私にはそんな資格ないのに。


【私が警察官を目指した理由】……か。

 きっと藤江君のこと応援するためだったんだよ、うん。


 実は私には兄がいたの。

 双子の兄。事情があって長い間、生き別れだったんだけど。

 兄は寺尾に殺された。

 その事件については、詳しいことはもう聞いたよね。


 私はそのことをどうしても証明したくて、立件したくて広島にやってきた。だから刑事になりたかったんだ。


 でもね、誰もが刑事になれる訳じゃないって知ってた。

 その時、助けてくれたのが梢だったんだよ。


 彼女のお父さん、県警の偉い人なんだ。公にはできないけど、こっそりとね、希望する部署に配置してくれる可能性はあるって言われて。


 びっくりした?

 仲悪いフリしてたもんね、私達。


 そのあたりも、よくわからなかったら和泉助教に訊いてみて。


 あの人、すごいね。

 本物の刑事なんだって思った。

 藤江君もきっと、あんなふうになれるよ。


 頑張ってね!!



 私のことなんて、すぐに忘れてね。


 藤江君、気づいてないだろうけどすごくモテるんだよ?

 あなたのこと好きだっていう女子が、知ってるだけで3人はいるんだよね~。


 だから私、実はけっこう恨まれてました。

 いつも仲良くしてゴメンナサイ……。


 あなたの傍は、春の陽だまりの中にいるみたいで、とても心地が良かった。


 今度は誰が温めてもらえるんだろうね~?


 もしかしてひょっとして、和泉警部補かな?


 あの人、日頃はなんかヘラヘラしてるけど、絶対心の奥に何か闇を抱えてるよね。

 未来の女性刑事、水城陽菜乃の目は誤魔化せないのだ!!


 大切に、優しくしてあげてね?

 それってたぶん、藤江君にしかできないことだから。


 2人で末永くお幸せに。


                                  水城陽菜乃


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