ロベリー
太陽の光は夜を照らし朝を作る
もし太陽が消滅したら
誰も夜の中から逃げられない
ベッドの上で毛布をかぶると
猫のように丸くなっていたジェリーは一睡も出来ずに今日をスタートさせた
動きが鈍くなった体をシャワーで温め
身だしなみを雑に整えると
二人掛けのソファに乗り
朝食がわりのジャーキーを噛んでいた
あれほど真面目で大人しい子が
一体何をやらかしたのか
何故リカファミリーに追われているのか
何よりロベリーは生きてるのか
誰もが知っていること
世界中では今この瞬間でも
新しい命が生まれ
そして誰かが消えている
もしかしたら自分や大切な人が
消えてしまう誰かになるかもしれない
そこまで深く考えてしまう時は
きっと何かに追われている
彼女の不安と苛立ちはジャーキーに向けられ
何度も噛みつき引きちぎる
ロベリーは彼女の親友
ジェリーが悪いことを覚える前
幼い少女達はあまりに多くの時間を共に過ごした
出会った時の記憶はない
何も覚えていないほど小さな頃から
すでにロベリーは傍にいた
思春期に2人の価値観に違いが生まれ
真っ直ぐに育ったロベリーは
それなりの学校で学び
人並みの恋と失恋を経験して
ごく普通の女の子のまま
街で評判のパン屋「イーストンズ」で働き
今では腕の良いパン職人に成長した
歪んでしまったジェリーは
悪い仲間とつるみ安い悪事を繰り返す日々の中で
裏切る馬鹿には殺意を覚え
死んだ阿呆を想い涙を流す
それが日常の環境に疲れ
彼女は娼婦として働くようになり
今では「リップローズの女」と呼ばれている
大人になってからも2人はお互いを尊重する事で
変わることのない大切な親友でいられた
ロベリーは優しい子で
ジェリーも本当は優しい子
たくさんの優しさを持つ少女が
みんな真っ直ぐに大人になれるとは限らない