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帰宅の時間。

帰り道の通学路、駅前には多くの人だまりが出来ている。

学校の帰りにちょっと遊ぼうか、とか残っている学生や

バイトの為に小走りに駆け抜ける学生、中にはすでに帰りの早めのサラリーマンの姿もある。


学ラン姿の学生、岡本と下野もクラスメイト達と下校の途中であった。

今夜放送されるサッカーの試合についてなど話しながらだらだらと歩いていた。

彼らは男児高校生でありながら、割と声が高い。

しかも声質が似ていることもあって、クラスメイト達からは実は双子説なんて

からかわれたりもする。

漫画やゲームの趣味も一緒。これぞ親友!などと小学生から同級生の二人は

たびたび話題にするほどだ。


その時も次に販売されるゲームを発売すぐに買うか買わないか

買ったとしたら協力プレイを行うかなどで盛り上がっていた。


「やっぱ俺はランスで固めたいなー」

「んじゃ僕は手堅く笛か弓ですかねー」

「火力足りるか?」

「そのあたりは募集かけりゃくるっしょ。」


和気藹々と話していた二人はにこやかであった。


中学の同級生に背後から背中を叩かれるまでは。



「二人ともいいところにいたな。」


ポンと叩くというよりも、がっしりと掴み捉えられたという認識。

そしてその声で一気に背中の冷える二人。


まさに親友。

同じタイミングでそろりそろりと振り返ると、そこには見知った黒髪の少女がいた。


「「げぇっ、さ。坂本!?」」


「今は坂本じゃないぞ。茅野だ。親が離婚したからな。」


さらっと爆弾を落とした少女に二人はさらにひきつる。


「そ、そっかー、た。大変だったなー!」

「そうだねえ、こ、高校が違うから知らなくて…その…悪かったねえ…」


ブレザー姿の少女と学ランの少年二人。

少年少女ともに平均身長である為にそこまで差のないことが災いして

彼女の特徴的な瞳に捉えられ目をそらす事が出来ない。

そらしたら何か良くないことが起こるのでは。という不安がぬぐえない。


口火をきったのは岡本だった。


「あ、あのーか、茅野さん?僕らにえーっと何か用ですか?」


そして下野が追随する。


「そうだなあ、なんかいいところとか言ってたし…」


だがそれは明らかな地雷だった。


「そうだ。時間がないからついてきて。」


二人の間にするりと潜り込むようにして一気に手を握りしめて

ずんずんと前を進み始める。


傍目からは綺麗な少女に手を握られた男子学生という青春そのものな見た目にも限らず

彼らの顔面は蒼白であった。


「ど、どこいくんですかぁ~!!」


その声に振り返る少女は決意を秘めた顔できっぱりと言い切った。



「戦 場 だ 。」



果たしてその言葉はその通りだった。

夕暮れ時のスーパーのタイムセール。

たくさんの主婦の群れにもみくちゃにされながら、まるで忍者のように

スッ、スッ、と合間を抜けて籠へと目的の食糧を放り込んでいく少女とは別に

男どもは流れに逆らえず、謝罪マシーンと化しながら、何とかついていく。


そして卵のコーナーではまるで号令のように「一人一個確保せよ!」という

上官(?)命令が発令された。

そのほ限界まで袋に詰めろ!などのミッションをこなし、なんとかレジへとたどり着いた。


混雑したレジで俺たち何やってるんだろう、という既に燃えカスと化している二人。

手早く会計を済ませた少女について、スーパーを出ると

振り返った彼女の華やかな思わず恋に落ちそうな笑顔で出迎えられた。


「助かったよ二人とも。今日はお一人様一つまでだったのだ!

君たちのおかげで私の食生活がより豊かになるだろう。」


うっとりとパンパンに膨れ上がったスーパーの袋3つを抱えて幸せそうである。


彼女はいつもこうだったのだ。

中学生の頃から唐突に彼らを巻き込んでは何かを起こしていく。

そして他の人たちが器用に立ち回り逃げていくのに二人は毎度逃げ損ねる。

まあいつものことか。と久しぶりだったけど。と溜息をついた。


「なあ、さ…茅野。家は相変わらず変わらないのか?」

「ん?ああ、すんでいるところは変わっていない。」

「じゃあ思いだろうし一人一袋運ぼうぜ。」

「んだな。」


茅野の腕に食い込んでいるスーパーの袋を一人一つずつ持ち上げ

仲良く?3人で帰路へとつく。


お互い小声で人がいいな、お前こそなどと言い合いながらも、学校が違う以上

そうそう巻き込まれることももうないだろうことからか気楽なものだった。


茅野の家についたところで、じゃ俺たちはこれで。と帰ろうとしたところで。


「…その、よかったらお礼にごはん、食べていかないか?」

…今日はポトフなのだが…とぽそっと告げた一言に。


久しぶりの再会もあって二人は笑顔で快諾した。

茅野の料理はおいしかった。二人を気にしてか具だくさんにしてくれていたのも嬉しかった。

ごちそうさまー、お邪魔しましたー!と爽やかな気持ちで

あいつもいいとこあるじゃん!なんて二人で笑いながら遅くなった帰り道を歩いていく。


翌週、同じ曜日に校門に茅野が現れるまで。

二人は暫し安息の時を得たのだった。

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