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秋の短編2017

金曜日のスペースギルティ

作者: 鷹枝ピトン

 やあ!スペースギルティワールドの世界にようこそ!君の名前を教えてくれるかい?


『あああああ』


 あああああ?いい名前だね!ところで、君の性別は?


『女』 


 女の子なんだね!でも、ほんとうの君はどっちなんだろうね!さあ、それじゃあスペースギルティワールドの世界を説明するよ!

 

 時は20XX年。宇宙は、超法律によって、仕切られていた。

 他の星を侵略するならば、超最高裁判所に許可を取らなければならない。それを怠った者には、生まれたことを後悔するほどの罰が与えられる。

 そんななか、武器貿易商人だった君は、銀河を宇宙船で通過中、うっかり生命のいる星にミサイルを落としてしまった。その星の生命は息絶え、君は裁判所で、罪に問われることとなった。

 しかし、君には結婚を誓った婚約者がいた。捕まってしまえば、精神が崩壊し、もはやまともな状態であることはかなわなくなる。そこで、君は逃亡を覚悟した。そして、途中で婚約者をさらって、二人で駆け落ちをするんだ!


 スタートは、始まりの星、アダム。さあ、宇宙逃亡大冒険に出発だ!



「……シューティングゲーム、かな」


 画面が切り替わり、真っ暗になる。そして、小さなロケットが真ん中に現れる。おそらく、このあと、敵が現れるから、撃ち落とせ、ということだろう。


「そら来た」


 赤いロケットが現れたので、照準を合わせ、Bボタンを連打する。命中。爆発するロケット。右上に100001と現れる。


「なんだ、この数字、スコアか?一機落としただけで、こんなに?」


 二機目の赤ロケットが出てきたので、撃ち落とす。すると数字が変化し、100002となる。


「ははあん、どうやら、最初から100000点は持っていたんだな。どこかで使うのかな」

 しかし、そのような場面は現れず、結局、何機かのロケットを撃ち落とし、ゴールの文字が浮かぶ。


 セーブ地点だよ!『造船の星、ポセイドン』。


「セーブっと」


 明日ははやい。今日はこれくらいにして、寝てしまおう。






 次の日。

 チャイムが鳴った。


「あああああ様でございますね」


 そこには、女が立っていた。どこの国のものかはわからないが、軍服のようだ。緑色ベースで、胸には勲章らしきバッジが付いている。女は、異国らしい顔立ちで、金髪ウェーブをゆらしていた。そして、あたまには、……あれ。


 あたまには、触覚が生えていた。二本。


「えっと、どちら様でしょう」


 尋ねる。何者か、知らぬことには要件を聞ける気持ちになれない。まずはその触覚がコスプレなのか、まさかの天然ものなのかを聞いておきたい。


 女はくちびるを動かす。


「〇〇〇〇〇。と、申します」


 聞き取れなかった。まったく知らないアクセントだ。似ているカタカナに直すことすらできなかった。女は、腰ベルトをはずし、それを鞭のようにしならせた。


「超最高裁判所の者です。あなたには、惑星消滅の罪と、その逃亡罪、そして追尾戦闘機妨害の罪に問われています」


「はあ……」


 言葉は聞き取れたが、今度は意味が一ミリも理解できなかった。罪?俺が?何を言っているのだ、この女は。俺はまじめなフリーターだぞ。今日も、朝早くのバイトをきっちりこなしてきたばかりだ。そんな俺が犯罪などするはずがない。


 と、ここでひとつだけ身に覚えのあるワードがあったのに気が付く。


 超最高裁判所。安直なそのネーミング、最近どこかで見た覚えがある。


「あ……ゲームの……」


 思い当たった。あれか。昨日したゲームのなかに、そんな設定が出てきた。しかし、それはゲームの話で、現実ではない。現実でゲームの話をすることはあるが、突然現れた訪問者にゲームの話題を振られるなんて、そうそうありえることではない。


 事態をいまだ飲み込めない俺をよそに、女はベルトを使い、俺に向けて鞭うった。


「イタッッッ」


「抵抗するのなら、このように少々痛い目を見てもらいますが、おとなしく連行されるのなら、裁判の結果が出るまでは安全を保証します」


 痛い。ジンジンする。わからせるために暴力をふるうなんて、動物じゃないんだぞ、こっちは。それに、わかってもいないし。もっと俺に情報をくれ。話はそれからだ。


 と、ここで、金髪の女のうしろから、少女が走りよってきた。


「あああああさんっっっ」


 少女は、金髪の女の半分の背丈であった。小さい。着ているのは、ドレス。お嬢様か?あたまを見る。……案の定の触覚アリ。


「あああああさん、心配しました。まだ、生きていたんですね。よかった……」


 身を案じられた。見ず知らずの少女に。金髪が、少女に注意する。


「お嬢、船からでてはならないといったでしょう。あああああは、あなたをさらって、逃亡しようと画策していたのですよ」


「あああああさんっ。罪を償って!!!わたし、いつまでも待つわ!」


「…………」


 いい加減、混乱が過ぎる。俺は、玄関のドアを閉めると。ガチャリと鍵をかけ、自室へ足速く戻った。そして、テレビのまえに立つと、ゲーム機の電源がつけっぱなしであったのに気が付く。


 ぶちん。電源を落とす。


 そして、窓から、家の玄関を見下げる。誰もいない。


 念のため、玄関へ赴き、ドアを開けるが、やはりそこには先ほどまでいた二人はいなくなっている。


「……なんだったんだよ、これ」


 疑問が尽きない。他人どころか自分にもうまく説明できない。


 ピロリロリンっ。電子音が耳に鳴り響く。


 空中に現れる、文字。『ゲームクリア』。


「あ……?クリア……?」


 その瞬間、俺はすべてを理解した。




 目を開くと、暗闇だった。後ろから、誰かが手を回してくれ、取り付けれられていたゴーグルを外してもらう。


「お疲れ様。どうだったよ」


「…………」


 息をついて、周りの環境を見渡す。モニターだらけの部屋。後ろには、ポロシャツを眼鏡の男性。いつもの、日常だ。


 俺は、この眼鏡とともにVRゲームを製作している。今回はテストプレーをしていた。


 ゲームの内容は、テレビゲームと現実が交差するSFストーリーだったのだが、やってみると、ううん。


「くっそつまらんかった」


「まじで……」


作っているときはアイディアに拍手喝采であったが、これはやってみてようやくわかるつまらなさだ。いや、つまらなさより致命的なのが、構成の偏りだ。


「おい、おまえ。プレイ時間17時間想定って言ってたけどよ……なんでそのなかに、睡眠とバイトの時間があるんだよ。ゲームのなかで、バイトさせるなっ疲れるだろうがっ」


「でも体力は削られないだろ」


「うるせーばーかばーか。はあ……もう、いいや、あしたから修正だ。今日は帰るぞ」


 相棒を背にさっさと帰り支度を始める。そして、今日は眠れるかな、と心配しながら部屋の電気を落としたところで。


 ピロピロリンっ。電子音がなった。


 空中に浮かぶ、ゲームクリアの文字。


「お疲れ様です」


「頭おかしくなるわ」


 俺はバイトでゲームのテストプレイをしている。朝五時からという早朝からの始業時間であるため、あたまがぼうっとした状態で始めたせいもあるが、混乱具合が気持ち悪い。


「ええと、あの、バイトの立場でいうのもなんですけど、まじでこれは販売停止にしたほうがいいっす。現実がどれだかわかんなくなります。精神ぶっこわれます」


「体調もすぐれないようですし、今日はお送りしますよ」


「助かります」


 家に帰って、水を飲み、溜息をつく。誰だ、あんなゲームをつくったバカは。異常者だろ。シナリオ担当、企画者そろいも揃って全員異常者だろ。企画通すなよ、ほんと。


 テレビがつけっぱなしだ。昨日の夜したゲームを、セーブしたあと、電源を落とすのを忘れてもいた。ずぼらさが出てしまった。


 ピンポーン。チャイムが鳴る。誰だろう。俺に尋ねてくる相手など実家のおふくろか、配達くらいだが……。


 玄関を開けると、そこには触覚の生えた女が立っていた。


「ゲームオーバーです」




 目を覚ますと、俺は拷問器具から外された。現在、VR機器は、重罪人への拷問道具として使われている。


 俺の名前は、あああああ。貿易商人だ。ミサイルをうっかり落としてしまい、惑星一個を壊してしまった。超最高裁判所は、俺に最新の拷問方法を試しており……。



明日は、土曜日→https://ncode.syosetu.com/n0019ei/

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