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村長 ラガット

小学生の頃から考えていたこの世界の説明です。

考えてたお陰で早めに書けて良かった……。

「さて、先ずは自己紹介から始めようか?」




 爺さんは優しい笑みを浮かべて俺にそう言った。それと、無理に敬語を使わなくても良いと。……この爺さん、意外に俺のことを見透かしてくる。少し不気味な気がしなくもないけど、爺さんのあの優しげな目が、俺の警戒心を解いていく。

 ……考えれば考えるほど、よく解らなくなる爺さんだ。


「あー、でも俺、自分のことはあんまよく解んないっす」


 というか、少し気を抜いた後の方が敬語使い易いわ。……爺さん、その事見抜いてたのかな。


「それはそうか……なら、儂から始めようかな。儂はラガット。この村の村長をしているんだ。見ての通り黒狼の獣人で、一昔前には冒険者もしていた。君の知りたいことも、恐らく全て答えることができると思うよ」


 爺さん、ラガットって名前なんだ。しかも村長……っつーことはかなりの実力者なのかな?

 まあ聞いたとしても答えてくれることは無いようなことは気がするけどな。『能ある鷹は爪を隠す』だったけ? 爺さんが実力者で尚且つある程度の死線を潜り抜けたことがあるなら……答えるわけがないな。無駄だ無駄。考えるのはやーめた。


「じゃあ、俺の番すかね……」

「ああそうだ、やりにくいなら儂の質問に答えるという形を取るかい? その方が考えることも楽になるかもしれないね」

「あ、じゃあそれでお願いします」


 ……やっぱ、この爺さんすげぇわ。俺のことちゃんと気遣いながら見透かしてくる。


「じゃあ、質問して良いかな? 先ずは簡単な質問だけど……名前は?」

「アルーダ・ルミスです」

「ふぅん……記憶がないのに名前が解るのは何故だい?」

「え? あ……」


 一瞬首を傾げて、そして言葉につまる。ステータスという言葉を爺さんは知ってたけど、それを自分で見られるのは普通のことじゃ無いのかも、何て考えたんだ。

 もしそうであれば俺が自分のステータス(名前などの情報)を知っていることは……常識外れで、何かしら良くないことが……とか思ったけど途中で思考を放棄した。ネガティブ思考したってそれを解決することができる訳じゃない。それに普通にステータスは見れる可能性がある訳で……記憶も常識もない俺が悩んでも当て推量にしか成り得ないわけだ。

 それに、この爺さんなら頭が良いだろうし……何より優しそうだ。なんと言ったって俺に向ける視線が柔らかい。アイツやあのローブの人達が俺に向けた視線より優しいし心地良い。だから信じても良いんじゃないかな、って……自分の情報を曝しても悪いようにはしないんじゃないかな、って。

 まあ俺が受けたこの印象が作られたものだったりこの部屋にいることからの錯覚だって可能性は無きにしもあらずだけどね。だとしてもそれはこの世界の常識と同じで、俺が悩んでも意味はない。ただ頭を痛くするだけだ。なら良いよ、面倒臭い。いざとなれば逃げりゃいいんだよ逃げれば!


「えっと、これがこの世界の常識かは知らないんすけど……」




 俺は『ステータス表示(オープン)』と唱えたら自分に関しての情報が表示されたこと、その言葉が何を意味するかが解らずただ記憶(掠れ気味の知識)の片隅に存在していたから唱えたこと、しかしそれでも俺自身の記憶は戻ってこなかった、なんていういくつかのことを爺さんに話した。

 爺さんは表情を崩さず、優しい雰囲気のまま俺の話に一々頷いてくれた。その反応を見て、やっぱりこの爺さんは優しいなって……俺が受けた印象は間違ってなかったんだなって一人理解した。

 良かった、爺さんが優しい人で。




「なるほど、大体解ったよ。さっきは意地悪するような真似をして済まなかった……本当に記憶喪失なのか確かめたかっただけなんだ。焦らせてしまってごめんね。この世界では自分のある程度の情報はそのワードで閲覧することができるんだ」

「ああ、いや大丈夫っす。確かに俺が嘘を言わなかったかどうかとかは確かめる必要はあるっすし」

「はは、そう言ってくれると嬉しいよ」


 因みに爺さん曰く、この世界(アラマンデ)では個人の(特に冒険者の)ステータスというのは大きな価値を持つ情報らしい。例えばスキルというものは俺が一度考えた通り使用可能技能のことであり、それに対して対策をされてしまえば戦闘や脅しを掛ける時に優位性を失ってしまう。なのである程度以上の能力がある冒険者は己の実力を隠すために策を高じ隠蔽系のスキルを育てるらしい。

 あと俺が爺さんが看破系のスキル(?)を使ったことに気付いたのは、俺が高Lvの察知系スキルを持っているからじゃないかということだ。確かによく見てみれば、俺はそれらしきスキルを所持している。使い方は全くもって解らないけどな!


「じゃあ次は……君がステータスから得た情報をある程度教えてほしいかな。スキルは別に言わなくてもいいよ。勿論称号もだ。言っても大丈夫だと思ったスキルも、Lvは言ってはいけないよ」

「え、何でっすか? あと称号っつーのは……」


 不思議に思った。爺さんがスキルを言わなくても良い、っつった理由はさっき迄の説明のお陰で解るけど……。あと称号ってなんだ? この『全剣士』……とかのことだってのは解るんだけど……。


「うん、スキルのLvというのは個人の力の方向性や性格、場合によっては限界を示すから……他人に知られるのはあまり良くない。儂は確かに君のことを売るつもりはないけど、世間には記憶を覗くような能力(チカラ)を持つ者も居るからね。一介の村長である儂では対策しきれないんだよ。それと称号……そうか、知らないんだよね」

「うっす、常識とか基本知識とか全く無いっす」


 爺さんは少し考え込んで、そして考えが纏まったのかゆっくりと口を開いた。記憶が全く無い俺を気遣ってか、とても分かりやすい、噛み砕いた言葉で。






 この世界……アラマンデと呼ばれる儂や君が生きているこの世界にはとある"意思"が存在しているらしいんだ。本当なのかは全く解らないし証明もできないけど、そうとしか言えないような現象がいくつもこの世界(アラマンデ)では起こる。君もいつか、きっと解ると思うよ。

 まあそういうのはこれから先の、君の未来での話だから今は関係無いね。取り敢えず称号に関する話か……。


 称号というのはそのままの意味で、『その人を表現する与えられた言葉』だ。問題は称号の殆どが"()()()宿()()()()"から()()()()()()()ことにある。

 世界に宿る意思、通称"世界の意思"は嘘をつかない、そして誤魔化すことが出来ない。例えば儂が持っている称号に『龍に呪われた者』というものがある。はは、字面だけでどんなものか解ってしまうだろう?

 これには迂余曲折あるんだけど儂が昔冒険者だった頃に与えられたものなんだ。でも儂がその称号を受けたのは全てを遮断する"龍の世界ドラグニティ・プリシンクト"の中でね……。しかも龍自身は『祝福だ』と言っていたんだ。

 儂も当時はこれを誤魔化そうとしたんだけどね、できたのは隠すことだけ。『龍に祝福された者』とかであれば見栄もはれたんだけど、ねぇ。笑ってしまうだろう?

 因みに儂よりも隠蔽系スキルのLvが高かったり、若しくは詐称系のスキルを所持している者にも称号だけは偽れないらしい。面白いだろう?

 しかも、だ。称号は変化することはあるけれどもその系統はシフトすることがないし、補正効果も大きさの差はあれ意味は全く変わることがない。


 ここまで言えば解ると思うんだけど、この世界(アラマンデ)での称号は知られてしまえば取り返しがつかないんだ。

 記憶を操作したり消去したり、なんて技能は基本誰も習得出来ないし、洗脳や暗示だって簡単には出来ない。だから冒険者は二つ名となる称号以外はあまり自分の称号を開示しない。実力だったり能力の限界を推測されてしまうからね。

 因みにだけどこの世界(アラマンデ)じゃ五つ以上の称号を"見せても良いもの"として扱えれば一人前だと言われているんだ。


 どうかな、少しは役に立ったかい?





 爺さんの話を聞いて、噛み砕いて、自分の中で理解して……そして思うのは爺さんへの、そして爺さんとの出逢いへの感謝。こんな人に出逢えたことを俺は運命に感謝したいな!

 そんなことを考えてから俺は決めた。




 爺さんに隠し事はしない、ってな。

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