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後悔後先たたず

「あぁ……」


 解っていない、俺は何も解ってない。解った気になって、解る筈だと過信してそしてこんな事をしてしまったんだ。何が記憶の鍵だ……どう考えたって怪しいだろ。

 ていうか俺って誰なんだろうな。記憶が無いせいでどうでも良い気がするけど、本来名前とか出自ってのは……大切なもんだし、誰かの信用を得るためには必要──みたいな予感がするから多分必要──なんだと思う。勿論確証は無い。あったらあったで怖いし不思議だな。



 ……にしても、


「やっちまったなぁ……黒焦げじゃん。ごめんなさい、名前も解んないローブの皆さん」


 記憶が無いとは言え、今の俺でも一つは言えることが有る。それは、俺がやり過ぎた(死者を冒涜した)ってこと。救世主(メサイア)だの悪魔だの言われはしたが、……言われはしたが! だからと言ってこの人達の遺体を黒炭にするとかいう暴挙が俺という存在に許される訳ないだろ!? というか許されても俺の気が済まないから自害するからな?! こう、この(名前も解らないけど性能が凄い良い)大剣で首をバッサリと!


 ……とまぁ誰も反応してくれない茶番は良いとして、俺は……どうすれば良いかなぁ。この人達は俺を崇拝(?)してくれた(?)みたいだし、よく解らないけど色々と申し訳無い気がするようなしないような……。取り敢えず何となくのモヤモヤが収まらなくて気分が悪い。

 記憶が無いせいか何なのか少々淡白な言い方になっちまうが、この人達はもう死んじまった。俺が幾ら謝ったって、泣いたとしたって、たとえ神様(そんなアホなもんが居るとすればの話だが)に赦しを願って祈ったとしたって……まぁどうも為らないよな。為ってたまるかって話だ。ウエェ、意味が無さ過ぎること考えたせいで反吐が出る……。

 はぁ……ごめんなさい、としか言えないだろ。

 俺を襲ったアイツとの戦いに巻き込んだような気がするし。アレだよな……もう少し早く、確実に反応してたら誰か一人くらいは助けられた様な気がしなくもない。それに魔法だってちゃんと考えて──例えばだが、俺の記憶紛い(知識)の片隅にある……詠唱が短くて威力の弱そうな魔法を選んで──使っていれば、少なくとも遺体を黒炭にしないで済んだかもしれないし。


 ……まぁ、どれもこれも後悔後先たたずな訳だけど。

 後悔は遅すぎる。許しを乞うても意味は無い。ならどうする? 思い出せ、思い出してみろ……。




 ……なんか、悩むのは性に合わない気がするなあ。





* * * *





「ええと、取り敢えず……安らかにお眠りください?」


 何を言えば良いのか解らない。ので、取り敢えずそんなことを言っておく。心が籠ってないとか、近くに誰か居たら言われそうな気がしないこともないけど、実際言われる訳でも言われた訳でも無いので考えなかった事にしておく。考え過ぎは頭痛を招くしな。痛いのはごめんだよ。


 目の前にあるのは、取り敢えずで作った墓──死んだ人を眠らせる場所って解釈であってるよな?──みたいなもの。土魔法(正式名称があるのかどうかは知らないけれど、大地や土を操った摩訶不思議な術)で硬い洞窟(?)の地面に人が入る位の穴を十一個位掘って、そこにローブの人達を寝かせて……首は仕方ないから切断面と直感で入れて。

 せめてもの償いって言うのかな……それで、土を掛けた後に冥福を祈ることにした。


 巻き込んじまってごめんなさい。それと、俺を召喚してくれてありがとう……なのかな。記憶が無いのもそうだし、あんた達が俺に何を望んでいたのか解んないからあれだけど、多分感謝するべきだろうし……そう言っとくよ。

 できれば生きてる内に言えれば良かったけど、仕方無いから許してくださいよ。




「さて……じゃあそろそろこの湿っぽい洞窟から出るかな。あんまり長く居ると俺まで腐っちまいそうだし」


 まあ、まずは外に出てから考えるかな。






 光が見えるまで歩いて、歩いて、歩いて……漸く洞窟の出口かな、何て思う頃には体と頭に纏わり付いてたモヤモヤを粗方反芻し終えてた。

 結果として、俺がこれからするべき事はない。強いて言うなら自分探しの旅だけど……宛もないし手掛かりだって無い。仕方がないから今は村でも集落でも旅人でも何でも……取り敢えず生きてるマトモな人を探して、話をして、それでどうするかを考えるしかない、よなぁ。非常に不本意だが今の俺はどこからどう見ても不審者だし。常識らしき知識は殆ど持ってないし。


 ただ、一つだけ収穫があった。


「ステータス表示(オープン)


 意識(掠れ気味の知識)の奥の、そのまた奥の方で燻ってた言葉を唱えてみたら……あら不思議、数字と文字の一見無意味な羅列(ステータス)が表示されたじゃないか! マッタクモッテイミガワカラナイヨ!


 はぁ……困ってること、先ずは一つ目。俺のポンコツな頭の中にはこの言葉以外に『ステータス』なんて単語に関する言葉や知識が存在しない。

 次に困ってることの二つ目。表示される内容は……俺の能力が基本だ。その他にスキル(つまりは使用可能技能?)、名前、属性、年齢、種族とかの……つまりは見られたら洒落にならないもの。これが解ったら誰と戦っても大抵勝てるよな、なんて内容だ。名前が解ったのは良いが、出来ることなら年齢とか種族も知りたかったかな! なんだよ〈?????〉って! クエスチョンマーク羅列されたって俺にも解んないよ! 寧ろ俺が知りたい情報なんだけど?!

 ……最後に三つ目の困ってること、自分の姿形が解らない。はあぁぁ……。


 なんだろう、並べてったら気が重くなったわ。村とか人里の方向が解んないのがどうでも良い気がしてきた……。いや、確かにこれも困ったことの一つかもしんないけど……なんかなぁ。




 記憶もない、金もない、あるのはただその事実だけで……それなら途方に暮れるのが"普通"とか"基本"なのかもしんない。でも、俺にはそれがない。なんなんだろうな……全く以て謎だ。


 ……はぁ、腹減った。

名前:アルーダ・ルミス

年齢:?????

種族:?????

属性:無

HP:1276

MP:4491

魔力:2524

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