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僕に託されたものはなかった。
だから僕は僕に、意味を見出だせなかった。
僕は人柱に選ばれなかったらしい。
だから僕は犠牲の上に成り立った自由を生きている。
僕は老いることを知らなくて、だから仕方がなく生きてきた。
僕には友達も親も近くにいなくて、けど目的があったから生きてきた。
僕には兄さんがいた。
僕には母上がいた。
僕には父上がいた。
けれど父上にとっての僕は息子以上のものではなかった。
僕は守られるものでしかあり得なかった。
守られる側にしかなれなかった。
僕は守る側に立てなかった。
僕は時を無為に過ごしてきた訳じゃなかった。けれど僕は、自分の価値を見出だすだけの成果を生み出せなかった。
兄さんの背中に追い付けなかった。
父上に一太刀浴びせることは、きっと今でも無理だろう。
僕には力がなくて、それと同時に勇気も足りなかった。
僕にはきっと追い付くだけの資格もなかった。
僕は、復讐を求めてきたつもりだった。
けれど世界はそれを認めなかった。
僕は復讐者になれなかった。
僕に勇気はない。僕には敵愾心もろくにない。
僕は足りないものばかり。
僕は欠けたものばかり。
僕は、自分の唯一の兄弟すら探し出すことができない無能。
父上も母上も救えなかった臆病者。
僕はこの左目にかけて誓う。
この痛みが消えたとしても僕は、僕の復讐を忘れない。あの日の憎悪を失いはしない。
例えあの真っ黒い影が母上にしか殺せないはずの"悪魔"だったのだとしても。僕が、おいそれと手を出していい存在ではなかったとしても。
そんなことは関係ない。
僕は僕の復讐を遂げる。
僕の恨みを晴らす。仇を取る。
けれどもしもそれが叶ったとして、僕はそのあと、どう生きていけばいいのだろう?