第20話 小さな戦争
「彼奴らは、何処だろうと御構い無しかよ、普通こんなところで爆弾は使わんぞ。
それより怪我はないですかサクラちゃん」
俺は悪態をつきながらも、未だ抱きしめたままのサクラちゃんに怪我の確認をすると。
「普通は真っ先に私の心配をすると思うんですが? ですが、ありがとうございます、ムメイさんのお陰で怪我はありませんよ、ただ………」
そう言いながら俺の手から離れ周りを見渡すサクラちゃんの姿を見て、顔は見えないが何を思っているかには察しがついたので、初めてではあるが、脳内で〈グランドヒール〉を唱えると、自分を中心に薄緑色の光を放つサークルが生まれ、魔力量を増やす事でサークルはどんどん大きくなっていき、そして爆発に巻き込まれた一般人を皆サークル内に入れ、それを維持するように集中した。
そしてサークルの発生源が俺である事を察したサクラちゃんは、笑顔をこちらに向けたが、余裕のない俺の顔を見て、何も言わず、また、倒れる一般人の方に向き直った。
今再び襲撃を受けたらマズイと思いながらも、マップに敵対反応がない事に安堵しながら治療を続け、数分もしないうちに倒れていた人達は立ち上がり始め、俺も魔法を解除したが、予想以上の魔力の減りに、脱力感を感じるが、毅然な振る舞いを続け、サクラちゃんの手を引き急いでこの場を後にしようとしたが、先程助けた人達に囲まれ、各人がさまざまな感謝の言葉を口にして、進もうにも進めない状況が続いていると、そこに。
「ここが報告にあった場所か?」
「はっ! ここが何者かによって爆破された場所になります!」
とそんな声と何重にも重なるガチャガチャと鉄の擦れる音が聞こえ、先程まで俺たちを囲んでいた人達は、皆彼らの方を向き、何の指示があった訳でもないのに彼らに道を譲り、自然に通り道ができ、俺も好機とその通り道を使い足早に立ち去ろうとしたが、長槍が二本俺たちの前で交差するように組まれ。
「待て! 貴様らはセイランの者ではないな? ならば貴様らが犯人である可能性があるため、しばらく身柄を拘束させてもらう。
だが安心しろ無罪が証明されれば直ぐに開放してやるからして、無駄に抵抗せぬよう我々についてきてもらう、いいな?」
そう言う男の言う通り抵抗せず従うのが正しいと思ったが、王国兵の姿を見て怯えるように俺の後ろに隠れたサクラちゃんの姿を見て、彼らに従うのはヤバイ気がすると思い、自分も余り王国兵には関わりたいと思っていないので。
「すまないが、急いでいるんだ、そこを通してもらえないか? それに、俺たちの無実は周りの彼らが証明してくれるはずだ」
と言いながら周りを見渡すと、先程まで俺たちを囲んでいた人達は、皆口々に「彼らも爆発に巻き込まれた被害者だ!」「彼らは怪我をした私達を助けてくれたのよ!」と俺たちが無実である証明をしてくれた。
「これで分かりましたよね? では行かせていただきます」
そう伝え、今度こそこの場を後にしようとしたが、ガッと強く地面を蹴る音と共に、王国兵達は俺たちを取り囲むように並び、槍先をこちらに向け静止した。
「何のつもりですこれは? 私達の無罪は証明されたはずですが?」
と不満の色を隠さず、なおかつ相手を威圧するように尋ねると。
「ああ、確かに今回の件では無実が証明されたが、だがしかし、そちらのお連れさんは別だ。
お連れさんには別件で拘束命令がかかっている、また抵抗するようであればその場で殺す事も認められている」
訳のわからない事を言う王国兵のそれは決して冗談という訳では無いらしく、言葉通りどんどん間合いを詰めてくる兵達。
頭が回らない、今何が起こっているのか全く理解できていないがなるべく平然を装いながら。
「それは出来ません、私は冒険者であり、今現在、こちらの方の護衛の依頼を受けていますので、理由も分からず護衛対象を拘束させるわけにはいきません。なので罪状を教えてもらってもよろしいでしょうか?」
そう伝えると王国兵は、こちらを小馬鹿にするようなうすら笑みを浮かべ。
「ほぉ〜、君は冒険者の中でも多少はまともな教育を受けているようだが。君に罪状を伝えても分からんだろ? 所詮冒険者など知能の無い出来損ない共の集まりなんだからな⁉︎ ふっ、だがまあいい、特別に教えてやろう、罪状は、国家転覆罪だ!」
「はぁ?」
意図せず間抜けな声が出てしまったが、これは仕方ない事だと思う、だっていきなり国家転覆罪なんて言われたら誰だってこうなると思う、だから仕方がない事なのだが、どうやら兵達は俺の反応を別の意味で捉えたらしく、先程から会話をしていた兵を始め周りを取り囲む兵達も、「クククク」と笑い始め。
「クク、だから言ったろ? お前に言っても分からんと、くだらん見栄を張るから恥を書くのだ、クククク」
こいつらの反応に、どうしようもないほどの殺意が湧いたが、なんとか抑えながら平然を装いつつ。
「意味は分かります……がっ、なぜ彼なんです? 少なくとも私は彼とここに来るまで常に一緒でした。これは虚偽の情報ではありませんよ、それは貴方方もよく分かっているのでは無いのですか? 冒険者は契約で仕事に関わる又はそれに順ずる嘘を付けないと、ですのでもう少しお調べになってから出直して来てもらえませんか、優秀な王国兵様方ならそのぐらいは朝飯前ですよね?」
多少は仕返しを込めた返しに、沸点の低い王国兵は、先程までのニヤついた笑みはどこえやら、苛立ちをにじました顔で。
「貴様の言う契約はただの紙に書かれたルールにサインをするだけのものだろうが‼︎」
「それを世の中では契約というんですよ、えっ! そんな事も知らないんですか? ぷっ、散々バカにした冒険者に言い負かされるとか、ダッサ」
王国兵達は煽り耐性が低いらしく、会話をしていた兵は顔を真っ赤にし、剣帯に刺してある剣を引き抜き、今にも突っ込んで来そうだったが。
「あれれぇ〜、王国兵さんが、冒険者に手を出していいのかなぁ〜?」
それを聞いた兵の手は止まったが、怒りは収まらないらしく、声を荒げながら。
「事を大きくせぬように、これだけは言いたくなかったが、これは! セイラン領主の命では無い! この命はシン王国! 国王‼︎ エルス・セシル国王陛下の勅命である‼︎ これに逆らう事は冒険者であろうと認められていない‼︎ それとも貴様は王の命に逆らい戦争の引き金を弾きたいのか‼︎」
王の名を聞いた瞬間俺たちの周りにいた人達は後ずさりながら、どんどん距離を取っていた。
兵の言う通り、これが王の命なら多国籍みたいな扱いの冒険者でも逆らえず、逆らえば、それを引き金に戦争が始まる、実際に昔、その国の王の命に逆らい要人を逃した冒険者により、国益を守るためと言う名目の元、戦争が始まったらしい。
が俺はそんな事よりも、久々に聞いた王の名に嫌気が襲い、そしてアイツの命に従うなんて真っ平ゴメンだっと思い。
ちょうど良く、王の名を聞いた瞬間から俺たちの周りにいた人達は後退を開始し、どんどん距離を取っていたので、俺は後ろに隠れるサクラちゃんの方に向くと、おもむろにお姫様抱っこをし。
「飛びますので、下を噛まないように、お口をしっかり閉じておいてください」
兵達は俺の不審な行為に反応し槍先をこちらに伸ばして来たが時は既に遅く、ヒュッン‼︎ と言う風の音と共に俺は既に建物の屋根の上にいた。
そして、その場に尻餅をつき倒れる兵達には目もくれず、屋根の上を走った。
すぐに笛の音が鳴り響いたが、俺は一直線に目的の場所に向かって、走り続けた。
来週も投稿出来るように頑張ります。




