第7話 メイドさん
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
俺は慌てて体を起こした。
荒い呼吸を繰り返しながら、自分が生きていることを確認した。
全身、汗でびしょ濡れだったが、特に損傷がないことを確認し、安堵の息を吐いた。
「夢だったのか?」
「どのような夢を見られたのですか?」
「あぁ?いきなり幼女が現れて、訳わからん物を見せられて、奈落に落とされる夢だよ。んっ?」
声のした方を向くと、そこには2人のメイドがいた。
「おはようございます。ソウジ様」
「あんた達は?」
当然の疑問を口にした。
「私達は、ソウジ様の身の回りのお世話をさせていただきます。アシスと申します、そしてこちらのメイドが」
アシスさんが、手をもう1人のメイドに向けたので、そちらを見た。
「フィリスと申します。どうぞよろしくお願いします」
丁寧に腰を曲げて、挨拶をしてくれた。
それに遅れてこちらも挨拶を返した。
「こちらもよろしくね、でっ聞きたいんだけど、お二人さんは、苗字とかないの?」
挨拶ついでに気になっていたことを聞いてみた。
「すみません、そのミョウジとはなんでしょうか?」
メイドを代表してアシスが訪ねてきた。
「あっ、ごめんごめん、あっちの言葉で言ってもわからないか、えっとつまりね、グリシア様みたいに、セシア的なのは無いのって聞いたんだよ」
メイド達は納得したように頷いた。
「そお言うことですか、では質問の答えですが、そちらの言葉で言うのなら、苗字があるのは、貴族以上の者になります。
ですので私達のような、一般人には苗字はありません」
「なる、質問に答えてくれてありがとね」
「いえ、これも仕事ですので」
「仕事熱心だねぇ、じゃあついでに聞きたいんだけど、お二人は何しにここに」
「朝食の準備ができたので、起こし、案内するために来ました」
たしか、昨夜、グリシア様がそんなこと言ってたような。
「そっ、じゃあ案内をお願いねぇ」
「はい」
ベットから脚を下ろし靴を履こうとしたがその手が止まった。
グリシア様で思い出したが、あの夢がもし本当なら、このまま朝食を取りに行ってもいいのだろうか?
そお言えば、あの自称神様が話の続きは、起きてからって言ってたな。
「どうかしましたか?」
アシスが心配そうに訪ねてきた。
「んっ、あぁすまないだけどしばらく一人にしてもらえないかな?」
「何かお有りでしょうか?」
「そうそう、ほら着替えないといけないし」
「そお言うことですか、気が利かず申し訳ございません」
「いやいや、分かってもらえれば十分だよ、じゃ後はわかりますよね?」
「はい」
分かってもらえて何より。
「では失礼しますね」
「えっ?」
アシスとフィリスは気がつけば、俺の目の前にいた。
「あのなんで、目の前にいるのですか?分かってもらえたんですよね?」
「もちろんです」
「じゃあなんで?」
「おかしなことをおっしゃるのですね、私達がお着替えのお手伝いをなさいますね」
「えっマジで‼︎、ヤッターー、じゃなくって、俺は出て行って欲しんだけど‼︎」
「それは出来ません、お着替えのお手伝いも仕事の一環ですので、では失礼します」
アシスは俺の服を掴んだ。
イヤァァァァァァオーソーワーレールー。
冗談言ってる場合じゃないね。
「ごめんウソウソ、着替えは嘘だから服を引っ張らないでぇー」
「そうなのですか」
服を引っ張る手がはなされた。
取り敢えず貞操は守れたぜ。
いや待て、あのまま流れに任せた方が良かったのではないか。
この日丿輪総司、一生の不覚。
「では、なぜあのようなことを?」
「それはですね」
俺は真剣な顔を作った。
その顔をみたメイドさん達は固唾を飲んでこちらを見守っていた。
「僕も男なので、朝はアレがアレになっているので処理がしたいのです。
これ以上、僕に言わせるつもりですか?」
「今すぐ、退室させていただきます。
終わったら声をかけてください」
二人は足早に部屋を後にした。
やった人払いができた。
そこには謎の達成感があった。
「個人的には、夢であってほしいが、確認のためにやってみるか」
覚悟を決め、深呼吸一つつき。
例の言葉を口にした。
「神託開始」
何も起こらないことを願ったが、結果は。
「信じてくれたのですね」
直接脳に語りかけられてる気分だ。
「個人的には、夢であって欲しかったよ」
深い溜息をついた。
僕もう何を信じたらいいのかわからないよ。
今回の件で、俺は疑心暗鬼を学ぶことができた。
知りたくなかったけどな!




