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村人勇者の英雄譚  作者: ワカメ
2章 出会いと別れ
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第16話 オモダカの忠告

「んん〜〜、はぁ〜」


 俺は登りかけの朝日を浴びながら、体を伸ばし一呼吸。

 体を動かすごとにパキパキと鳴るが、今はそれも心地が良く感じられる。


「んっ、早いですねムメイさん」


 起きたてのサクラちゃんが目元を擦りながら馬車から降りてきた。


「あっ、おはよサクラちゃん、まぁそりゃ、七日ぶりに体が動かせるとなったら、のんびり寝ている訳には行きませんよ」


「そうですか、もう七日になりますか。

 それで体が治ったと言うことは、今日から?」


「はい、今日の今この時から仕事に入らせていただきます」


 サクラちゃんにそう伝えると、こちらに来るサクラちゃんに少し遅れてカノンさんも馬車から降りてきた。


「カノンさんおはようございます」


「んっ………」


 一応挨拶の返しだと思うが、カノンさんは朝に弱いらしく、なんとか起きては来るが、寝ている時とあまり変わらない。


「ほらカノン、お前も早く顔を洗ってこい」


 オモダカがそう言うと「んっ……」と先程と変わらない返事でフラフラと行ってしまった。


「まったくあいつの朝の弱さはなんとかならんもんかねぇ。

 まぁ、それはそうと、今日から頼んますぜ兄ちゃん」


「もちろん、俺が仕事を受けたからには、皆さんに危険はありませんよ」


「言ってくれるねぇ〜、それならあっしらも安心して旅させてもらいますぜ」


「ああ、大船に乗った気でいてくれ」


 そんなオモダカとの会話の後は、予定を立てすぐに出発となり、オモダカと同じ運転席の方に向かっていると。


「あれ? ムメイさんはどちらに行かれるのですか?」


 そう不思議なことを聞かれたので。


「いや、今は仕事なので馬車の中ではなく馭者の席にと」


「えっ! なんですかそれ私聞いてませんよ!」


「言ってませんので」


 そう伝え再び歩き出そうとしたが。


「まっ、待ってください! 護衛なら馬車の中でもできますよね⁉︎」


「出来るには出来ますが、何かあった時に内より外の方が対処しやすいので、それでは」


 と言い、軽く頭を下げ今度こそオモダカの隣に向かった。

 その間にも。


「なんかいつもより反応が冷たくありませんか⁉︎」


 それに対して歩みは止めずはっきりと。


「仕事ですので」と伝え、背後から「そんなぁ」となんとも情けない声が聞こえたが、聞かなかったことにし、オモダカの隣に座り、ゆっくりと馬車が動き出した。


 しばらくすると、隣に座るオモダカが不意に。


「本当に良かったのかい?」


「んっ? あぁ、仕事分以上の金を貰ってんだ、文句も何もありませんよ」


「いやそっちじゃなくてな」


 こっちじゃなければなんなのか分からない。


「中でサクラ様達と一緒でも良かったんだぞ」


 ああそう言うこと、と納得し。


「それを言われたら、隣がおっさんよりかは、美女美少女の方が良いに決まってんが、俺は仕事を受けた以上はその値につりあう仕事をするのがモットーなんでね。

 だから中で楽しく駄弁って少しでも反応が遅れるのが嫌なんだよ」


「仕事熱心で何よりだが、あまり根を詰め過ぎるのもよかねぇもんだ。

 確かに兄ちゃん見てえな奴は自分を厳しく律する奴はよくいるが、そのほとんどが短命だ。

 だからな、仕事だと自分を律するのもほどほどにしとかねぇと本当に大事な時に、取り返しのつかない事故を起こしてしまう」


「それも、長年生きる年寄りからの忠告ですか?」


 そう尋ねると、オモダカは嘆息をつき、少し遠い目をしながら。


「あっしはそんな奴を多く見た。

 皆、忠義だの誇りだの口走って、勝てもしない敵を前に逃げる事を捨て、命を無残に散らしていた。

 あいつらは常に自分を律する鎖で自信をつなぎ止め続け、そしてそれは、本当に大事な時には足枷となり、あいつらから逃げると言う選択を奪ってしまう。

 かと言うあっしも、その一人なのだがな……」


「もうこの話は聞かない方が?」


 そう尋ねたのは、オモダカから哀愁漂う感じがしたからだ。

 だがオモダカは、また嘆息をつき。


「いや……構わんさ……それにこれは兄ちゃんが、あっしの様にならんようするためのもんさ」


「それってどう言う事です」


「特に深い意味はねぇさ、ただ兄ちゃんは少し昔のあっしに似ていてな、だから兄ちゃんにはあっしみたいに何かに縛られて愛す……いや、何も救えなかったなんて事になってほしくないだけさ」


「そうですか……分かりました、オモダカさんの忠告は肝に命じておきます」


「そうしてくれ」


 それを最後にしばらく二人の間に会話は無かった。


 さっきの話だけでオモダカの全てを分かったなんて言えないが、オモダカは俺にとってのフェルトの様な大切な存在を守れず失い、そしてかつての自分の面影が俺に重なってしまったのだろう。

 一体何がそこまで似ているのかは分からないが、なぜかこの話は俺の胸に残り続けた。

投稿が遅くなりすみません。

今後は、もう一つの作品と同時進行にしていきます。

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