表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村人勇者の英雄譚  作者: ワカメ
2章 出会いと別れ
66/73

第15話 エルフ族

 彼女達と共に行動を始め、かれこれ三日目が過ぎていた。

 今でも体はまともに動かせないが魔法の方は小規模なら使えるまでになっており、今も俺の周りを二個の水玉が浮遊している。


「先程から気になっていたがお前の周りを浮遊するそれは何だ?」


 と真前に座るカノンさんに訪ねられ、その隣のサクラちゃんも同じ事を思っているようだった。


「あぁ、これはですね水魔法の練習ですよ。

 今は体は動きませんが、軽い魔法なら使えるようになりましたので、この間も無駄にしないようにと」


 そう返しながらも水玉を維持し続けていると。


「鍛錬に熱心なのですね。

 ところで水魔法の鍛錬をなされていると言うことは、やはり一番得意な魔法は水魔法なんですよね?」


 とサクラちゃんがなにか確信でもあるかのように訪ねて来たが。


「いや、違いますよ、一応俺の中で最も熟練度の高いのは火魔法で、一番低いのがこの水魔法ですね」


 と周りを浮遊する水玉を指をさしながら言うと、二人は驚きを隠せないように。


「なっ⁉︎ お前は水ではなく火の方が得意だと言うのか⁉︎」


「不本意ながらですがね」


 そう返すと今度はサクラちゃんが恐る恐ると。


「失礼ながら、ムメイさんが使える属性魔法を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」


 俺は彼女らの反応が気になったが、聞かれた通りに。


「え〜と、属性魔法だと、火に風、それと土、雷で、あとはこの水魔法ぐらいですかね」


 聞かれた事を素直に答えると。


「ぐらいって! お前! 今言ったので基本の属性魔法の全てだろ! あっ、あり得ない、人の身で全ての属性魔法など不可能だ⁉︎ いや一応この国には例外もいるが、奴は人生のほとんどを魔術に費やしたからで、ムメイのような若さでは……」


 と最初の勢いはどこえやら、カノンさんの声はどんどん小さくなっていき、最後にはブツブツと聞こえなくなってしまった。


 そんな彼女らの反応の意味が分からないでいると。


「ムメイさんは、属性魔法以外にも回復魔法も使え、さらには剣や弓もなかなかの手練れなんですよね?」


「まぁ、そうですけど、剣と弓に関してはまだまだだと思っていますが」


 と返答を返すと、それで何かを思い出したのか、カノンさんが。


「そう言えば! サクラ様を助ける時に使ったあの矢は、マジック・アローでは無かったか?」


「んっ? マジック・アロー……」


 聞きなれない言葉にしばらく考え


「あぁ、これのことですか」


 そう言いながら俺は、周りを浮遊する水玉を一つ手元に寄せ、その原型を矢の形にへと変え、それを握る手を彼女達の方に向けると、二人とも何かをコソコソと話だし、しばらくし、サクラちゃんが何かを確信したように。


「ムメイさんは、エルフ族だったのですね、それもハイエルフクラスの」


「んっ?」


 サクラちゃんの言葉の意味が分からずフリーズしている間にもサクラちゃんとカノンさんの話は進み。


「確かにそれならムメイの異様な強さにも納得出来ますねサクラ様」


「えぇ、これでそのダサい仮面をつける理由も分かりましたね、正直その様な仮面をつけて行動するからには何かあると思ってはいましたが、まさかエルフ族だったとは、驚きです」


「えっ! この仮面ダサいですか⁉︎」


「「はい」ああ」


 二人の迷いない返事を耳にし落ち込みながらも。


「結構ショックですが仮面の事はしばらく置いといて。

 俺はエルフ族じゃないんですが」


 と伝えると、二人は可笑しそうに微笑みながら。


「今更隠さなくてもいいだろ、別に私達はお前がエルフだからってとやかくしないからな、安心してくれ」


「そうですよムメイさん、カノンの言う通り、私達はエルフだからといって捕まえて売ろうなどしませんよ」


 二人は全く俺の言うことを信じてくれず、なおも。


「最初に仮面を外された時は騙されましたが、あの姿を変える魔法を見た後では、もう疑う余地もありませんしね」


 などと、どんどん二人の話は進んでいって行き、もう俺が何を言っても信じてもらえほどにまでなって行っていた。

 そこまでなってしまうと、訂正する方が難しいので、諦めようと思っていると。


「ちぃとすみませんがよろしいですかいサクラ様」


 不意に飛んできたオモダカの声に「どうしましたか?」とサクラちゃんが返すと。


「いやですね、兄ちゃんの件なんですがね、兄ちゃんは紛れもなく人間ですぜ。

 あっしは幾度かエルフを目にしたことがありますが、アイツらはなんて言うんですかねぇ? 気配つうか覇気つうか、上手くは言えやせんが、独特のオーラみたいなのがあるんですよ、ですが、兄ちゃんからはその気配みたいなのを一切感じないんですよ」


 オモダカのフォローがあったが、二人はオモダカの話を信じていないのか。


「ですがそれだとムメイさんの魔法の件も謎ですし、それに今の話ではムメイさんがエルフではないと言う事はオモダカ、アナタの勝手な想像の様に聞こえますが?」


「それを言われたら、なんとも言えませんがね、仕事柄そういった事には鋭いんですがねぇ。

 後、魔法のことだって、謎ってわけじゃありませんぜ」



「どう言うことです?」


 オモダカの発言が気になったのか、サクラちゃんとカノンさんはオモダカのいる馭者の席の方に視線を向けその続きを待っていた。


「その例外がこの国にはいるじゃねぇですかい……あのエルフ殺しのパラケスが……」


 それを聞いた途端二人は互いを抱きしめ合いながら、こちらから距離を取る様な動作をしていた。

 俺には彼女らが何故そこまでの行動を取るのかは分からなかったが。


「まさかとは思いますが、ムメイさんも魔術師の禁忌である、エルフの生き血を飲んだのですか?」


 そんな事言われたら少し想像してしまった。


 ウッ! と考えただけでも吐き気をもよおしてしまい。


「変な事を言わないでください、少し考えただけでも気分が悪くなりましたよ」


「変な事を聞いてすみません、ですが人族がそれほどの魔法を極めるには、エルフの血を飲むしか……」


「あーあー、この話はもう終わり! これ以上されたらほんとに吐きますよ」


 てな感じで、サクラちゃんの話を無理やりきり。


「てか一つ言わせてもらいますが、俺にとってエルフはとても神聖なものなんですよ、あのエルフだけに与えられたと言ってもいいエルフ耳に、純潔で清楚な雰囲気を漂わせる、男の憧れにして決して手の届かない幻想の存在なんですよ。それをあろう事か殺すとか! そんなことする奴がいるなら俺が逆にぶっ殺してやりますよ!」


 と声を荒げながら語っていると。


「分かりましたから落ち着いてください……」


 気づくと二人に軽く引かれていた。

 俺としてはもうしばらくエルフについて語っても良かったが、流石にこのまま続けたら、馬車から降ろされそうなので諦めた。


「ふぅ、すみません少し熱くなってしまいました」


 そう謝罪したが、二人は未だ引き気味の笑顔のまま。


「ムメイさんのエルフに対する思いは充分に伝わりましたので」


「そうですか、てかさっきの話で思いついたんですが、二人のどちらかにでも俺の血を飲んでもらえば俺がエルフじゃない事がわかるのでは。

 そう言うことなので、カノンさん、その刀で指先でも軽く切ってくれませんか?」


 そう提案してみたが。


「嫌に決まってるだろ!」


 とすぐに否定されてしまった、だがそれだと俺がエルフじゃないことが証明できないので、こちらも引き下がらず。


「なんでですか? いつもなら喜んで切りかかってきて来るのに、そんでその後に刀についた血を舐めて高笑いするような人じゃないですか!」


「貴様は人をなんだと思っているんだ⁉︎」


 勢いよく立ち上がり、刀の柄に手をかけたが、思いとどまり。


「危うくお前に乗せられるところだったが、普通に嫌だろ」


「何が?」


「何がって……人の血を飲むことに決まっているだろう」


 それもそうだと今更気づいたが。


「でもそれだと俺がエルフじゃない証明ができませんが」


 そう彼女らに伝えると。


「それならもう大丈夫です。

 先程の発言でムメイさんがエルフではないことがわかりましたので」


「んっ?俺なんか言いましたけ?」


 自分でもそんな事を言った記憶がないが、と思いながら、言った事を思い出していると。


「えぇ、先程ムメイさんは軽々しく俺の血を飲めばと言いましたが、エルフ族にとって血とは神からいただいた神聖なものと考えられているので、それを簡単に誰かに飲ませる事は無いんですよ」


 なるほどと、自分でも気づかないうちにエルフじゃない証明になっていた事を知り、かつ、それだけで信じてもらえるということに驚いてしまう。


「そんな事で信じてもらえるとは思いませんでしたが、まぁいいでしょう」


「そんな事ではありませんよ、エルフ族なら一大事ですよ。

 ですがこれで魔法の事は迷宮入りしてしまいましたね」


 そう言いながら残念そうな顔をするサクラちゃんを見て。


「分かりました、特別に俺のつよさの秘密を教えてあげますよ」


 そう言った瞬間。


「「本当か?」ですか?」


 と二人が身を乗り出しながらこちらによってきたので、一度落ち着かせ。


「俺の強さの訳ですが、実は………俺には神様が付いているんです」


 二人は最初は呆気に取られた顔をしていたが、少し時間が経つと、二人は顔を見合わせて。


「「プッ……ハハハハハハハハハハ」」


 二人ともお腹を抱えて笑いだし。


「おっ、お前、神様はないだろうヒィー、笑いすぎてお腹痛い」


「はぁはぁ、全くその通りですよ、変な事を言わないでください、ふぅ〜、笑いすぎてお腹と背中がくっつきそうでしたよ」


「その言葉の使いどころは違いますが、二人とも信じてないな?」


 二人を軽く睨みながらだったが。


「「もちろん」」と二人は息ピッタリに返答を返してき、また思い出したのか、クスクスと笑いだす始末、俺も諦め不貞るように、目を閉じ、水玉だけに意識を集中させようとしていると。


「サクラ様、もうすぐ村に着きますんで、今日はそこで一夜を明かすことにしやせんか?」


 そんなオモダカの声が聞こえ、サクラちゃんは笑いながらも「そうですね」と返した。

 そしてしばらくすると馬車は止まり。


「着きましたぜ、それじゃサクラ様、カノンは先に行ってもらってていいですかい。

 あっしは、ちょいと馬の世話でもしてから向かいますんで」


 サクラちゃんは「分かりました」と言うとカノンと共に馬車から出て行ってしまい、一人きりになった馬車にいると、不意に外から。


「兄ちゃんさっきの話だが、冗談とはいえ、もう二度と神様が付いているなんて言わねぇ方がいいぜ、これは長年生きる年寄りからの忠告だと思いな」


 いつもとは違うオモダカの声色に返事は返せなかったが。


「そんじゃ、また後でカノンに飯でも持って来させるからそれまでのんびりしてな」


 それを最後にオモダカも、村の方に向かっていき、今度こそ一人になった馬車の中で、さっきのオモダカの言葉の意味を考えながら、ゆっくりと時間が経つのを感じ、日が落ちるのを待った。

言い訳のようですが、メモ書きが消えたので遅くなりました、すみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ