第13話 約束
屋敷に入り、カノンさんの眠る部屋に入ると。
ドサッ
と音を立ててその場に腰を下ろし、背中を壁にあてながら、ハァ、ハァと荒い呼吸を吐きながら。
「彼らは開放して来たので、少し休ませてもらったらすぐに消えますよ、ハァ〜〜」
と適当に手を振りながらそう伝えると、クスクスと静かに笑う声が聞こえて来た。
「なんですか?」と笑う人に向けて言うと。
「フフ、いえ、その姿でそんな格好をしてそんな事を言われたら、ッフフ」
言われ自分の格好を見ると、カノンさんの姿で大股開いて座って、口調も戻していたので、俺だと分かっているサクラちゃんからすれば面白いのか、と思いながらスキル〈擬装〉を解除すると。
「やっぱりムメイさんでしたか、最初にその姿を見た時は、心臓が飛び出そうなくらい驚きましたよ」
「そんな訳ないだろ」と返すと今度は。
「にしても兄ちゃん、姿を変える術たぁまた奇怪な術を使うんだな? 」
興味があるのかオモダカは楽しそうな顔でこちらを見ていた。
「これは魔術って言うよりは、技の方に当たると思いますが、自分でもよく分かってないので。
後、面白いのは分かりますが、俺はカノンさんが起きるより早くここから立たなきゃいけないので、今は休ませてください、正直喋るのだってかなり辛い」
「それは分かりますが、それは少し休めば治るのですか? 見た感じですとムメイさんの状態は今や意識を保つことがやっとの様に見えますが?」
サクラちゃんの的確な発言に。
「ご明察……その通りですよ。
でも、それでもカノンさんに約束したんですよ、起きた時には俺はいないってね。
なのに起きた時に俺がいたら、それこそ最悪だ」
「それは分かりますが、だからと言って、まともに動けない人を追い出したと知ったら、それこそカノンが起こりますよ?
カノンはあれでも義理人情の厚い子なんですから。
だからどうです、私達の馬車の中で休むと言うのは? ムメイ様がこの村にいにくい事も分かりますが、馬車の中なら村人にも気づかれないですし、カノンとの約束も守れます」
正直サクラちゃんの言う提案は嬉しいが。
「その提案は俺としても嬉しいのですが、カノンさんとの約束も守れるってどういう事です?」
馬車の中では、少なくとも明日にはカノンさんにばれてしまい約束が守れない。
「だってムメイさんが言ったではないですか? 起きた時と、なら起きた時にそこにいなければいいだけなんでしょ? その後に会ってしまってもそれは、偶然で、ただの事故ですよ」
「それってただの屁理屈じゃん」と思った事を口にしたが。
「えぇ、屁理屈で私の我儘です。
惚れた殿方とまだ一緒に居たいと言う我儘です」
と涼しい顔で返され、その上サラッと告白もされたが。
「俺、幼女趣味は無いんで、ごめんなさい」
とこちらもサラッと返したが。
「あらそれは残念ですね。
ですがこのままムメイさんが立たれたら、きっと罪悪感で私の心が押し潰されて心が病んでしまいかねません、だからどうか私を助けると思って」
どれだけ離しても、一向に離れないサクラちゃんに対し、このまま続けてもやぶ蛇だと諦め。
「負けました、サクラちゃんの言う通り、馬車の中で休ませていただきます……が、俺をどうやって馬車まで運ぶんですか? 正直今の俺は一歩も動けませんし、表口は村人達がいてここにいる誰か一人でも出たらすぐに大騒ぎ、残った出口はそこの窓からだが、どうするんです?」
と尋ねると。
「そうですよ、そこの窓から馬車まで運びますよ、オモダカ」
「はいよ、失礼するよ兄ちゃん」
サクラちゃんの声に反応した、オモダカが俺を肩に担いぎ、窓に向かって歩き出していたが。
「これってあれですよね、お米さま抱っこってやつですよね? いや別に文句がある訳じゃ無いんですけど、こんな物を運ぶようにじゃなく、もうちょっと丁寧な運び方があるんじゃないかと?」
と雑な運び方をするオモダカに軽い文句と持ち方改善を要求したが。
「ならお姫様抱っこにしてやろうか」と言われ諦めて。
「いやもうこのままでいいですよ」と返して抵抗するのもやめて、おっさんの肩に全てを託し目を閉じた。
そして気づけば馬車の中に運ばれていた。
窓から飛び降りた時はなんらかの衝撃があると思ったがそれが無かった事に驚いたが、無事についた事に安堵していると、オモダカは俺を馬車の隅に下ろし。
「んじゃ、しばらくそこで休んでな」
と言われ「はいよ」と返答を返すと、オモダカはその場を後にしたがその途中で「後、カノンが起きたらまず此処に来るように伝えておくから安心しな」と恐ろしい事を言っていたが、止める暇もなく場所から去るオモダカを見ることしか出来ず、いつ来るか分からない斬り裂き魔を恐れゆっくり休む事が出来ず、そして本当に訪れたカノンさんには斬りつけられる事はなく、ましてや此処にいろと言われ、そのままこの場を去っていき。
そして今に至る。
ここまでの事を思い出したが、俺はやはりフェルトが言ったような英雄では無いと思い、軽く嘆息をつき、もう俺を襲う輩がいない事を確認し目を閉じ深い闇の中へと落ちて行った。
投稿が遅くなりすみません。次回の投稿もいつになるか分かりませんが、なるべく早く投稿します。




