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村人勇者の英雄譚  作者: ワカメ
2章 出会いと別れ
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第10話 再び

 俺は木々の隙間を器用に避けて飛びながらフェルトに気になるコトを訪ねた。


「なぁフェルト、あの子供が言ってたことって」


「ソウジは、それを知らない方がいいと思います」


 返答はすぐに返ってきたが、答えは教えてくれなかった。

 だがそれだけで分かった。


「つまりそうゆうことなんだフェルト」


「はい」


 俺の考えはあっているらしく、俺もこれ以上この話はしたくなかったので、話を変えようとしたが上手く次の言葉が出てこなかった。

 それはフェルトも同じらしく、お互いに沈黙し、それは敵のアジトをスキルで目視出来る場所に着くまで続いた。


「あれが盗賊の根城ねぇ………奴らにはもったいないぐらいの豪邸だな」


 そこには王宮には遠く及ばないが、貴族達の建物となんら遜色ない大きさの建物があった。


「そうですね、一応昔はここらの土地を管理する公爵の建物でしたからね」


 建物の大きさに納得し、あらためて目視で確認しながらマップで敵の位置も確認しようとしたが。


「やっぱりこのマップには高さの概念がないから敵さんが何階にいるのかわかんねぇ〜」


 マップには、敵を表すマーカーが重なったりで、よく分からない事になっていた。


「これは、陽の光がある時に攻め込むのは面倒だな、まぁ、フェルトが殺すなってヤツを解除してくれれば話は別なんだけど」


「それを私が許すとでも?」


 予想していた反応が返ってきた。


「ハイハイ、分かってますよ。

 じゃっ、夜まで待機としときますか」


 そんなことを言いながらその場にあった木の枝の上に腰を下ろし、屋敷を監視しながら日が落ちるのを待った。


 そして時間が経ち、攻め入ろうと腰を上げると同時に新たな反応があった。

 それを見ながら軽くため息をつき、まずはそちらを処理しようと、屋敷とは反対方向に飛んだ。


「さてと、ここらでいいかな」


 独り言を呟きながら、待ち人が来るのを静かに待ち。

 そして。


「なぜ貴様がここにいる?よもや別れの挨拶をしいきた訳ではないだろう」


 待ち人は俺を見るなり、睨みつけ、話などしたくも無いと言いたげな態度を投げかけて来るので、こちらもなるべくいつも通りに。


「当然」と返すと。


「ならばなぜ、私の前に立つ」


 カノンさんの言う通り、盗賊討伐から逃げた感じになってる俺がこんな森の中にいるのはすごく不自然だ。

 だから、誤魔化そうとする事も出来なかったので素直に告げた。


「盗賊団討伐に行かれたら困るから、カノンちゃんに盗賊団討伐に行かせないための妨害」


 それを聞いた途端カノンさんの顔が変わり、腰の刀に手をかけ。


「そうか、ならば貴様を殺してでもそこを押し通る‼︎」


 勿論さっきのようなコトを言えばカノンさんがこのような対応をするのは目に見えていたが、これでいい。


「勿論こちらも同じですよ、なので一つ忠告です………そこから一歩でも進んでみろ、テメェの命はねぇぞ」


 その言葉が終わると同時に威圧を発動した。

 そして俺はこれで終わると思っていたが、カノンさんは震えながらまだそこに立っていた。

 その姿に、素直に称賛してしまった。

 威圧を受け、まるで生まれたての子鹿のように足が震えていようと、彼女は意識を保ちそこに立っている、これだけで彼女の覚悟がどれだけのものか分かる、俺もそんな彼女を早く楽にさせてあげようと、ゆっくりと彼女の方に向かった。

 俺が近づけば近づくほど威圧の効果も上がるのにもかかわらず、カノンさんはまだ立っていた。

 そんな彼女に俺は、「リンスさん達以外にもこの世界で誰かの為に命を張れる優しい人がいるんだな」とそんなコトを思い、そして自然と笑みが浮かべてしまう。


 そして気がつけば目の前にカノンさんがいた。

 そして未だ立っているカノンさんに対し、最大限の敬意を込め。


「こんな手荒なマネをしてすみません。本来なら威圧でコロッと気絶して欲しかったんですが………まぁ、カノンさんの覚悟は確かに伝わりましたが、すみませんこれは俺の戦いなんです。

 だから手を出さないで欲しかっただけで、この後のコトも全て安心して欲しい、だから今は寝てください」


 手から放たれた微弱な雷がカノンさんの体にふれ。


「えっ……」


 と何が起こったか理解できないような声を残しカノンさんは力なくその場に倒れ始めた。


 そんなカノンさんの体を支えながら。


「次に目が覚めた時には、俺の姿はなく、全て上手く終結していますよ」


 と言葉を告げ、意識を失ったカノンさんを抱え、その隣で怯えながらも必死に威嚇をする二匹に対し「カノンさんを村まで連れてくから、お前達もついておいで」といい歩き始めると二匹も後を追うようについて来ていた。

 それを確認し少しテンポを上げ、歩いていると。


「また女の子を泣かせましたね」


 そんな言葉が急にかかってきた。

 自分でも少しやり過ぎた感はあるが、これもカノンさんを行かせないための致し方ない理由があった訳なので。


「それは、この子が威圧でコロッといってくれなかったからで、決して俺の本心では」


「でも泣かせたのは事実ですよね」


 と言い訳ぽいコトを言っていたが、途中で割って入った発言には言い返せず、「うっ〜」と唸るように言いよどんでしまった。


「ソウジは何かをする為に女子供を泣かせないと行動できないんですか?」


 と、なおも続くフェルトの言葉の攻撃に防戦一方の俺はそれを黙って聴くことしか出来なかった。


 その後、しばらく続いたフェルトの言葉の攻撃が止み、今度はこちらから言葉を発した。


「フェルトさん、なんか怒ってますか? 俺なんかしましたか?」


 俺は知っている、フェルトがこんなに小言などを言う時は大抵怒っていると。

 そして、返ってきた返答は。


「別に怒っていませんが………そうですね、強いて言うなら、先程ソウジはカノンさんに、これは俺の戦いと言ってましたよね、そこが俺たちではないのがなんとなく気に入りませんでしたね。

 私は、ソウジの喜びや悲しみなどを共に分かち共に歩んでいくパートナーだと思っていたのに、ソウジはそんなコトを全く思っていたコトを知ってしまったから怒っているわけではないんですからね」


「ツンデレ可愛いフェルトたんいただきました!

 まぁ、それは誰もいないのに俺たちとか言ったら変に怪しまれると思っただけで、俺はちゃんとフェルトたんのコトを大切なパートナーで嫁だと思ってるから大丈夫!

 てか、そんなコトでふてるフェルトたんが可愛すぎてやばいです」


「そんなことばっかり言っても騙されませんよ! もう!」


 いつも通りの会話を楽しみながら歩いて行く。

 後ろの二匹は俺が誰と話しているのか気になるような仕草をしており、それがまた可愛いのでそのままにし、村に向けて歩く、女性を一人抱えているが、その足取りは軽やかなものだった。


 そして村の前まで着くと、予想外のお迎えがあった。


「よっ、さっきぶりだな兄ちゃん」


 そこには威武堂々とそこに立つオモダカの姿があり、オモダカは俺が抱えているものに気づいているはずなのにそれには突っ込まず。


「ついて来な、屋敷でサクラ様がお待ちだ………っと、これを身につけな」


 と、言うと、オモダカはおもむろにボロボロの布切れを投げて来た。

 それをよく見ると、少し前までサクラちゃんが着ていた物だと気づき。


「どうしてこれを?」と尋ねると。


「それを見に纏えば、誰にも悟られず村に入れるんだよ、まぁ、兄ちゃんには必要ないかもしれんが、手に抱えているその子が気づかれたらまずいだろ?

 だから、何も言わず、黙ってあっしについて来な」


 言われるがままに黙って先を歩くオモダカの後を追い、そして一つの屋敷の中に入り、二階に上がり一室の前で止まり、軽いノックの後「あっしです」と小声で呟き扉を開けた。


「元気そうでなによりです、ムメイさん」


「そりゃ、別れたのはついさっきなんだから元気に決まってんでしょ、サクラちゃん」


 この部屋にいた、彼らの主人に返事を返し中に入った。


「いろいろ聞きたい事は有りますが、まずはその子をこちらに」


 そう言われ、サクラちゃんが指すベットにカノンさんを寝かし。


「それで何が聞きたいんですか?」


 尋ねると。


「そうですね、募る話は有りますが、ムメイさんはお急ぎのようですので一つ………この後どうするかだけ聞かせてもらっても?」


 サクラちゃんの問いに。


「夜の散歩ですよ………まぁ、その途中で偶然、盗賊団と鉢合わせて、偶然囚われの人を拾うかもしれませんけど」


「そうですか、分かりました。

 では、このようなコトで時間をとらせるわけにはいきませんでしたね。

 お止めして申し訳ありませんでした。

 それではご武運を」


 と言うと、ドアの前に立つオモダカは扉の前から退き、道を開け、扉を開けよとしていたがそれを制し、サクラちゃんの方に歩きながら、後ろの窓まで行き、窓を開け、窓枠に足をかけ。


「彼女にも言いましたが、全てうまくいきますよ、だから何も気にしないでカノンさんと眠っていてもらっても構いませんよ」


 と言い、彼女たちの前から姿を消した。

投稿とが遅くなりすみませんでした。

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