第9話 冒険者
「行っちゃいましたねソウジ」
「ああ、行ったなフェルト」
カノンが立ち去り、一人になった俺は先ほどまでずっと話し相手になってくれていたフェルトに返事を返すと。
「でも勿体無いですね、もしソウジが素直な子ならこの村の人から恨まれず、むしろ英雄のようになれたかもしれないのに」
確かにフェルトが言う通りで、俺が最初から助けていれば、今のように馬車の中で身を潜めて身を休める必要は無かったと思う。
「フェルト、姫さんにも言ったけどこれで良かったんだよ、べつだん英雄になりたいわけじゃないし……いっツゥ!」
「まだ体が痛むんですか? だからあれほど身体強化と全能力強化を同時に使ってはダメと言ったんです、私の言うコトを聞かないからそうなるんです」
俺は少し動くだけでも、全身に電流走るような痛みに耐えながら。
「まったくその通りですよ、おかげでかっこよく立ち去りたかったのに、動けず馬車の中で休ませてもらうこの不始末。
ハァ〜、カッコつかねぇ〜」
「まっ、そうゆうコトなので今はゆっくり休んでくださいね、私も考え事があるので、今日はここまでですね」
今回は反対することなく受け入れた。
そしてフェルトの声も聞こえなくなった暗い馬車の中で。
「英雄ねぇ〜」
と呟き、数時間前のコトを思い出していた。
サクラちゃん達と別れた俺は、一人で歩いていた。
しばらく歩くと脚を止め、フェルトを呼び出した。
フェルトとの最後は喧嘩別れみたいになっていたがきっと出てくれると言う確信があった。
そしてしばらくし。
「なんです? 女子供泣かせのソウジさん」
「うっ!」
フェルトの言葉が胸に刺さる。
それに俺に対する態度も他人行儀になっているフェルトに。
「こっちとら今から盗賊の根城にカチコミに行こうと思ってたんだけどなぁ〜、フェルトの態度がそんな他人行儀なら行く気なくなるなぁ〜」
その発言に対しフェルトは。
「も〜、何言ってるですかソウジ、私の態度も何も、いつも通りですよ」
一瞬で元に戻った。
ここまですごい手のひら返しを見たことはなく、ついつい。
「尻軽女神」とボソッと呟いてしまい。
当然聞いているフェルトから「何か言いましたか?」といつもと同じ声なのに、全身が身震いしてしまう、そんな声を発せられ、慌てて弁解し、フェルトの許しを待っていると。
「どういう風の吹き回しですか? さっきはあんなコトを言っていたのに。
もしかして私の機嫌取りの嘘ですか? もしそうなら、今から一週間はソウジと口を聞きません」
そんなフェルトの問いに対し。
「んっ? あぁ、いや元から助けには行く予定でしたよ」
「え? 元からって、最初から?」
「はい」
「話を聞いた時から?」
「はい」
しばらくの沈黙後。
「ならなんで! あの時に! あんな態度をとったのですか⁉︎」
フェルトの雄叫びのような声に対し、意味はないが、耳を抑えるフリをし。
「それは、あいつらは冒険者のコトを何も分かっていない。
だからあえて冒険者の俺があんな態度を取って、冒険者に対する認識を改めさせたんですよ」
「それって、つまりどういうコトですか?」
意味が分かっていないようなので。
「えっとですね、冒険者を知らない一般人から見た俺たちはきっと、私達を助けてくれる善良な人達と思っているんですよ、まさにさっきの村のような感じで。
でも実際は、学歴がなく、真っ当な仕事に就けないような奴らがほとんどで、そんな奴らがさっきの村の依頼を受けたらどうなると思います?」
「えっ! えぇっと…… すみません分かりません」
答えがわからなかったらしいので。
「素直なのはフェルトのいいところですよ、では答えの発表です。
答えは、捕らえられた村の人達は皆帰って来ず、冒険者の奴隷になって、ついでに村の人達も奴隷になるでした」
「なんでそうなるんですか⁉︎ その答えはさすがに飛躍しすぎだと思います」
俺の答えに納得出来ていないようだったので。
「確かに飛躍し過ぎかもしれませんが、これが本当なんです。
まずですね、依頼を受けた冒険者がいます。
そいつが村で説明を受け、そして成功報酬の話になります」
「待ってください! 報酬は依頼を受ける時に決まっているはずですよ」
「確かにそうですが、今回の依頼の場合、それは仮なんですよ。
いいですか、依頼と言っても大きく分けると、国・ギルドからの依頼と一般からの依頼の二種類があります、それで国・ギルドからの依頼は討伐系が主でこちらは報酬が固定されていますが、一般からの依頼は、このぐらいは最低で払える、という感じなので、その後、依頼主との交渉でそれ以上の報酬を手にすることが出来ます。
つまり、今回のは後者で、報酬は変動しますが、彼らはそんなことも知らず、馬鹿正直に今出せる全てをさらけ出しました。するとどうでしょう、依頼を受けた冒険者がそれを知ったらまず、女でも犯すか、村の人を数人奴隷にするか」
「だからなんでそうなるんですか⁉︎ それも飛躍しすぎでは⁉︎」
再び、話に割って入ってきたフェルトにたいし、この調子だと話が進まないと思い。
「今からその説明をしようとしていたんです。
まったく、人の話を最後まで聞いてください」
と注意を促し続けた。
「まず、あの村人達にも言いましたが、盗賊達の討伐は金貨五枚が相場で、最低でも同等かそれ以上を払わなければなりません、ですがもしそれが払えないのならどうでしょう。
依頼を受けたものが、差額分の支払を指定することが出来ます、当然これには人権も含まれており。簡単に言えば、差額を理由に好き勝手出来るって話で、実はこれは、ギルドとかのルールではなく、世界のルールなんですよ。
つまり、ちゃんとした対価が払えないなら、自身を担保にしろってことですよ。
そして、荒くれ者達の冒険者はそこにつけ込んで、金儲けするですよ。
後ついでにいうなら、あいつらが囚われた仲間を救ってくれって言ってたけど、それは叶いませんよ、これも世界のルールとして、盗賊などが保持していた盗品などは全て、討伐した者の物になるので、わざわざ金なる木を人に返すなんて物好きは、冒険者の中でも河川敷で一つの石を探すようなもんですよ。
まぁ、簡単にまとめると、彼らは依頼が成功した場合、囚われた者はそのまま奴隷に、そして依頼主達も奴隷にって最悪の結果になるわけなんです」
「そうなんですね、つまりソウジはワザとあんなコトをいい、彼らにたいして冒険者に対する評価を変えたってコトなんですね」
やっと分かってくれたフェルトにたいし。
「そっ、つまり、彼らには簡単に冒険者に依頼をするなってコトを知って欲しかったわけです」
「なるほど、ちゃんと意味のあったコトだったんですね、もしあの発言などに意味がなかったのなら、二度とソウジと関わらないと決めていたので良かったです」
さらっと、俺にとっては死ぬほど恐ろしいコトをいうフェルトにたいし。
「てか、囚われている中に女性がいる時点で俺が助けて行くことぐらい察して欲しかったんだけど」
そんな冗談ような発言にたいしフェルトは、嬉しそうに「ふふ」と笑い。
「そうですね、ソウジはそういう人でしたね」
といい、俺も。
「今更思い出すなんて遅いよ……じゃっ、行こうか」
「はい」
とフェルトからの返事が返ってきたコトを確認し、事前に調べていた、盗賊団の根城に向けて飛んだ。
遅くなりすみません。




