表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村人勇者の英雄譚  作者: ワカメ
2章 出会いと別れ
59/73

第8話 カノン

今回はカノン視点です

 気がつけばアイツはいなくなっていた。

 彼らの歓喜にのまれ、アイツから意識がそれていたのは確かだ。

 私もアイツがいなくなったのに気がついたのはサクラ様に言われてだ。

 アイツがいなくなって心が清々すると思っていたが、いざいなくなると心に靄がかかったような気持ちになってしまう。

 だが今は、彼らの依頼に集中せねばと、その靄を無理やり押しつぶし、日が暮れの奇襲の準備を整え、出陣前にはキッチリ心も落ち着かせ、万全の状態で盗賊の根城を目指した。

 はずなのにアイツはいつも最悪のタイミングで私の前に立つ。


「なぜ貴様がここにいる?よもや別れの挨拶をしいきた訳ではないだろう」


 アイツは飄々としたおもむきではっきりと「当然」と応え。


「ならばなぜ、私の前に立つ」


 と問うと、アイツは全く変わらない態度で。


「盗賊団討伐に行かれたら困るから、カノンちゃんに盗賊団討伐に行かせないための妨害」


 アイツはこちらを小馬鹿にするように、今一番言ってはならないことを口にした、してしまった、ならばこちらのとる行動など一つしかない。


「そうか、ならば貴様を殺してでもそこを押し通る‼︎」


 そう告げ腰に下げた刀を抜き構えた。

 私は一度アイツに遅れを取ったが、二度も同じ手はくわんと、慢心を捨て奴の出方を待った。

 そして返ってきたのは。


「勿論こちらも同じですよ、なので一つ忠告です………そこから一歩でも進んでみろ、テメェの命はねぇぞ」


 それを聞いた途端、体を何か巨大な物体に押さえつけられて感覚に襲われ、脚だけではなく、刀を持つ手すら震えだした、それは隣のガロウとグロウも同じらしく、二匹とも身を低くし全身を震わせていた。


 私は必死に震えを抑えようとしたが、アイツが一歩また一歩と近づくたび震えは酷くなっていき、放たれる殺気はもそれに伴い増していく。

 私は、その殺気が本当にアイツはから発せられているのか分からなかった。

 なぜなら、私の知り得る限りアイツからこのような殺気が放てるとは思えず、その顔も私の知るアイツの顔とはかけ離れていた。

 そして、気がつけばアイツは目の前にいた。

 苦しい、息をする事すらままならない、そのせいか意識も遠のいて行く気がするが、堪え一矢報いようと、アイツの顔を見据えて気づいた。

 笑っていた、アイツは命の取り合いをする戦いの中で笑っていた。

 怖かった、本当に怖かった。

 目の前の男が本物の化物に見えてしまうぐらいに。

 男がこちらに手を向けて来たのを確認した私は、無意識に涙が頬を伝っていた。

 このまま動かなければ死ぬ、思考では考えるコトが出来るが、体が動かない。

 逃げたい、今すぐここから逃げ出したかったが、脚が動かない。

 刀は地に落ち、目を閉じ死を覚悟した。


 だが、そんな私にとんできたのは。


「こんな手荒なマネをしてすみません。本来なら威圧でコロッと気絶して欲しかったんですが………まぁ、カノンさんの覚悟は確かに伝わりましたが、すみませんこれは俺の戦いなんです。

 だから手を出さないで欲しかっただけで、この後のコトも全て安心して欲しい、だから今は寝てください」


「えっ……」


 その言葉を聞いた私はとっさに目を開けようとしたが、その途中で身体中に電撃が走る感覚に襲われ、耐えるコトができず、意識が徐々に薄れていき、そして気を失う寸前に聞こえた僅かな声。


「次に目が覚めた時には、俺の姿はなく、全て上手く終結していますよ」


 それを最後に意識を失った。





 目を開けるとそこには見慣れない木の板が見え、それが天井だと気づくのにしばらくの時間を要し、そして今まで意識を失っていたことに気づくのにも、しばらくの時間を要してしまった。

 私はとっさに体を起こし、体には少しの倦怠感だけで特に痛みなどはないコトを確認していると。


「起きたのですねカノン」


 その声の方を見ると、私が一生お仕えすると誓ったサクラ様がおり、そして思い出す、私が、アイツに敗れたコトを、それと同時に考えてしまう、なぜ私はここにいるのかと。

 だが今はそんなことよりも、盗賊団の討伐に行かなければと、ベットから起き上がり、横に立て掛けてあった刀を手に取り、外を目指し歩いた。


 サクラ様はその後を何も言わずについてくるだけだ。

 そんなサクラ様に対し急ぎ足で歩きながら。


「申し訳ございませんでした。私としたコトが、またあの男に遅れをとってしまいました。

 ですが今度こそ、彼らを助けてみせます」


 とは言ったものの、アイツを思い出すだけで、脚が重くなり、歩く速さも落ちていっていた。

 だが、それでもと自分に言い聞かせ、歩き、そして出口と思われる扉を開けると……。


「ワァァァァーー」


 と大きな歓声が上がった。


 私は何が起こったのかわからずたちろいでいると。


「全て終わったんですよ。

 アナタの嫌いなあの殿方が彼らを救ってきてくれたんです。

 そしてその功績を全てアナタに押し付けて」


 その言葉が頭に入ってきた時には、私の周りには、多くの村人たちが集まり、皆一堂に感謝の言葉を発してくるが、身に覚えがなく、何よりサクラ様の言葉が気になってしまい、村人をなだめ、再び家内に逃げるように入りたずねた。


「これはどうゆうコトですかサクラ様⁉︎ 私は何もしていないのになぜ私が⁉︎」


「落ち着きないさ、今から説明しますから。

 では順にコトを話すと、気絶した貴女をムメイさんがここまで運んで、その後、夜の散歩と言い、どこかにいき、そして貴女の姿をし、囚われた人達を連れ帰って来ただけの話です」


 ざっくりとしすぎてよく分からなかったが、この全てにアイツが関係しているコトだけはわかった。

 そして意識を失う前に聞いた言葉を思い出し。


「サクラ様! アイツは‼︎ ムメイはどこに⁉︎」


 焦るようにサクラ様にたずねると、サクラ様は頬を少し緩ませ。


「焦らなくても、ムメイさんなら夜の散歩で疲れて動けないらしいので、今は私達の馬車の中で休んでいますよ」


 それを聞いただけで私は駆け出していた。

 行き先は勿論馬車の中だ。

 今いる場所から、馬車まではそこまで遠くないはずなのに遠くに感じてしまう。

 それでも走り続け、たどり着いた。

 そして馬車の扉を開けると、そこにはサクラ様の言った通り、マントで身を包み眠っているムメイの姿があった。


 私は、ゆっくりと近づきながら刀に手をかけ。


「貴様は一体なんなんだ? 別れる前は、あの様なコトを言って起きながら、結局は一人で全てを済ませて、その名誉は要らぬと押し付けて、本当になんなんだ貴様は⁉︎ 何がしたいんだ⁉︎ 何が欲しんだ⁉︎ 何が目的なんだ⁉︎ どうして私の心を掻き乱す‼︎ 私には、お前が分からない………」


 答えが帰って来る訳がないと思っていた。


「一度にそんなに質問されても答えられませんよ、てか俺の目的はハーレムだって言ってるじゃないですか」


 ムメイは目を閉じたままそんな言葉を返してきた。

 そしてムメイが狸寝入りしているコトに築いた私は、恥ずかしさで、火傷してしまいそうな状態になりながら。


「なっ‼︎ 起きていたのか貴様‼︎ 一体いつからだ‼︎ それよりどこから聞いてたんだ‼︎」


 と怒鳴ると。


「いや、いつ切り掛かって来るか分からない人がいる場所で安心して寝れる訳がないでしょ。

 後ついでに言いますけど、今はその刀を抜かないでくださいよ、本当に不味いので」


 それが私のコトを言っていると理解し、悔しながら、刀から手を離して、改めてムメイを見ていると。


「カノンさんは俺とクズを重ねている様ですが、俺は俺だ。そんな女癖と酒癖が悪いやつと一緒にされるだけ心外ってコトですよ」


 ムメイが言っているのが、あの父である事はすぐにわかった。

 そしてそれに半ろうする様に。


「だがお前の目的は、彼奴となんら変わらんだろ! そこになんの違いがある‼︎」


 その問いにもムメイは目を閉じたまま。


「違いますよ、奴は女をタダの道具としてしか見ていない、だが俺は惚れた女は絶対に幸せにしたいし、ともに人生を歩んで欲しい。

 だから遊びで告白はしないし、責任もとる。

 つまり俺は本気で君に惚れたから、告白しただけだ」


 ムメイはそんなコトを恥ずかしがるそぶりもなく言って来る。

 そしてなぜか私の心臓の鼓動が早く大きくなた様な気がし、あの時とは違う息苦しさに襲われてしまう。

 そしてそれは、ムメイの顔を見ればみるほど激しくなっていく。

 それがきっと、さきの戦いのダメージが残っていたのだと思い、他にも聞きたいコトが有ったが。


「すっ、済まないが、まだ体が本調子じゃない様なのでな、詳しい事は明日聞くことにしてやるから、勝手にここからいなくなるなよ! わかったか⁉︎」


 と少し早口に伝えると。


「分かりましたよ」


 と簡単な返答が返ってき、それを聞いた私は。


「絶対にだぞ‼︎」


 と言いながら早足でその場を後にしながら、意識を失う寸前のコトを思い出してしまった。


 あの時のムメイの顔はとても暖かく、お母様と同じ様に優しく包み込むようだったなぁ、と思ってしまい。

 さらに顔を赤く染め、歩く速度はさらに上がり、サクラ様のいる家内に逃げ込んだ。

盗賊退治は次の話で回想のように書きたいと思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ