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村人勇者の英雄譚  作者: ワカメ
2章 出会いと別れ
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第6話 道中で5

「あの子が生まれ育ったのは貧民街と言えば聞こえは悪いが、そういった貧しい者たちが集まっている所でな、そんなところで母親と一緒に暮していたんだ。


 それであの子の父親なんだが、それがまたたちの悪い奴でな……そいつは金持ちの家に産まれたボンボンでな、ガキの頃から全て自分の思い通りになると思っていた奴で、そのせいか、大人になったら、女癖に酒癖も悪く女を常に数人は侍らせていたんだ。


 そして娼婦で生計を立てていた母親は、運悪くそいつの目に留まってな、彼女は無理やり犯され、そのうえ避妊薬も使わずだ……そうなれば孕むのも必然だろうな、父親はそんな事を気にも止めず、母親の前から姿を消し、母親はお腹の子を女手一つで育てると決心をし、そうして産まれたのが、カノンだ。

 その後の二人は、貧しいながらも幸せそうに暮していたんだが、それも長くは続かなかった。


 それはカノンが十歳になった頃だ、母親はその仕事のせいで性病に蝕まれ、心身ともに疲弊していき、ついには布団からも立ち上がれないほどに弱りきっていったんだ。


 そんな母を救いたいと、幼いながらカノンは、母に「私に何かあったらあなたの父に助けを求めなさい」とその言葉を信じ父の元へ向かい、初めて会う父に対し、母の容態を話、薬やお金を貰えるようにお願いしたが、返って来たのは、「たかが娼婦風情が‼︎ たった一度の慰めに付き合ってやっただけで、勝手にガキなんか産みやがって‼︎ そのうえ金を出せだと‼︎ 身の程を知れ‼︎ 虫螻どもが‼︎」と激昂だった。


 そして父親は、周りの兵に自分の子を殺すように命じ、身の危険を感じたカノンは、死にものぐるいで逃げ出し、その後を兵が追って来ていた、そしてそんな逃げる背中に対して、父親が最後に放った言葉は「貴様の母親程度の女などこの世には幾万とおるは! ふっ、もし生きて帰れたなら母親に伝えておけ、貴様程度が我に釣り合うと思うなよとな、はっはっはっはっ」とそんな母を侮辱する言葉と笑い声だ……あの子は悔しかっただろう、恨みもしただろう、それでもあの子にはまだ大好きな母がいた、だから必死に逃げた、たとえ肩に投擲された短刀が刺さろうと、痛みをこらえ逃げた、そして貧民街にまで逃げる伸びる事が出来れば、皆がカノンを守ってくれた。


 そして生き延びたカノンは、痛む肩を抑えながら母の元へ急いだ……だがそこに待っていたのは、無残に傷つけられ息を引き取っていた母の姿だった……それを目にしたカノンは、母の横に転がる刀を握り、母をこんな姿にした元凶の父を殺そうと思ったのだろうな、あの子は悲しむ時間も無く駆け出し、その眼は狂気に取り憑かれたかの様でな、そして再び辿り着いた父の屋敷前で、躊躇いなく門番に斬りかかったが、敵は曲がりなりにも戦士なんでな、簡単に取り押さえられ、そして父の前にまでつれていかれ、その場で殺されそうになった時、その屋敷に偶然居合わせた当時四歳のサクラ様の進言により、カノンは命を救われ、それ以降カノンは、自分の命はサクラ様のためと生きていくことを選び、それ以降父の様な奴を心の底から憎むようになったて訳だ……まぁ、だいぶはぶらせてもらったが、ざっとこんな感じだ、だから今回だと兄ちゃんのハーレムを作るってやつがまずかった訳だ、そんでなんか聞きたい事はあるか?」


 その話を聞き、自分が何をしたのか理解し、後でなんと謝ればいいのかさえ分からないでいるが、今はオモダカに気になっている事を聞くことにした。


「それじゃあ、その後、最低な父親はどうなったんですか?」


 オモダカは少し考え。


「死んだよ、彼奴は元々警戒人物でな、今回の件が引き金となり」


「あんたが殺したんだろ」


 オモダカの話の途中で割り込んで、そんな事を発してしまったが、絶対では無いが、少しの確証があったその発言に対しての反応は。


「どうして、そんな結論に至ったか聞いてもいいかな?」


 案外動じる事なく尋ねられたので、自分が思った事をそのまま言うことにした。


「だって、あんた知りすぎだろ、今あんたが話した内容は、実際に見てないと分からないことだし、カノンさんが自分から進んで話すとは思えないし、だからあんたは他の、なんて言うか、全てを知る奴に聞かされたか、自ら事情聴取をしたかなんだよな、例えば本人から聞いたとか」


 今のままではなんの確証も無いし、オモダカが殺したことにはならない。

 それはオモダカも思っていたのだろう。


「おいおい、それじゃあ儂がやったって事にはならんだろ? まぁ、確かに儂は知りすぎかもしれんが、それは俺が身寄りの無くなったカノンを引きとった里親だといったらどうだ? 何らおかしくないだろ?」


 カノンさんの里親と言う発言に少し驚いたが、それならなおさら。


「いや、あんたはそんな事をしねえよ、第一そんな事をする奴のとこに行きたいとは思わんしな」


 それには確信があった。


「たった、数時間だけでそこまで信用されているとは嬉しい限りだが、ならサクラ様が聞いたといったらどうだ? 少なくともカノンは話すだろうな」


「あんたそれ本気でいってんのか?」


 サクラちゃんがそんな事をする訳がないし、そんな事をすれば、今の彼女達の関係は生まれないと思う。

 そんな事思いながら、軽くオモダカを睨んでいると。


「すまん、今の発言は度が過ぎた、忘れてくれ。

 はぁ〜……そうだ兄ちゃんの言う通り、聞いたんだよ本人に、彼奴とは腐れ縁って訳では無いが、しばらくの間彼奴の屋敷で世話になっておってな、その時に彼奴がキャッキャッと話しておったの聞いたんじゃ、そんで彼奴が知らないことは、その貧民街で聞いていったって訳だ、これでいいか?」


 それだけでそこまでの事を知れるのかは分からなかったが、とりあえず納得し、本題に話を戻した。


「とりあえずはそうゆう事にしとくさ、そんで何であんたが殺したかだけど、あんた強いだろ、少なくともカノンさんよりも、いやこう言っちゃなんだが、カノンさんが束になっても勝てないだろうな」


 少なくとも俺は知っている、オモダカがただの仕える者では無い事を、先ほど鑑定でオモダカを調べた時に目を見開いて驚いたほどに彼のレベルが高かったからだ。

 そのレベルは俺のレベルよりも高く、357と表示されておりスキルは見えなかったが、このレベルにまで到達するには、普通の魔物を倒していても決して到達することはなく、到達するには、ダンジョンの魔物達を狩るか、同種、つまり同じ人を殺すしかない。


 そのせいで、未だ通常の魔物しか狩っていない俺のレベルは、スキルで経験値ブーストがあっても未だ154なので二倍の差があるオモダカはダンジョンか、人を殺すしかない訳で、ダンジョンで鍛えたとも考えられるが、ダンジョンは冒険者か、そのダンジョンを所有する国の兵達以外は入ることができないので、商人のサクラちゃんに仕えているらしいオモダカではまず挑むことすらできない、だから消去法で人を殺った事になり、国有数の商人なら、暗部がいてもおかしくないのかも知れないが、そうだとしても一つ気になることがある。

 そして、そんなふうに頭を悩ませていると。


「まぁなんだ、別に隠すことじゃないから言うが、兄ちゃんの言う通り奴を殺したのは儂だ。

 昔のわっしは少しヤンチャでな、引かれたレールの上を行くのが嫌でな、親の話など聞かず、国の兵に志願してな、そん中で戦士としての才を開花させてな、そんで王から小隊を任されるようにまでなったころ、偶然奴の護衛の命が来てな、んでそっからは言わずとも分かると思うが、色々あって王の命で奴を殺した。

 これで満足……ではなさそうだな、まぁ兄ちゃんが言いたいことは言わずとも分かるさ。

 なぜ、魔物からサクラ様を護らなかったかだろ?」


 オモダカ隠すことなく全てを伝えてくれたと思うが、少し強引にこの話をそらそうとしているようにも思えてしまう。

 それでも俺はオモダカが言った通り、なぜサクラちゃんを護らなかたかが、レベルを見たときから気になっていた。


「はぐらかされた気がするが、まぁいいよ、俺もそっちの方が気になるからな。

 まぁ、大体の予想はついてんよ……アンタ目が見えないんだろ」


 オモダカは、自重気味に肩を動かし。


「やっぱり気づいていたか、これでも上手く隠しているんだがな、だがそれでは、まだ半分だ、一定時間なら目は見える。

 なら残りの半分は何だと思う?」


 俺はオモダカが戦えない理由は視力だと思っていたから、それが半分で、後半分は何かと聞かれても、直ぐには応えられなかった。

 そんな俺を見かねてか。


「分からんか? ならヒントだ。

 わっしをいくつと見る?」


 年齢のことを聞いているようだが、見た目はどう見ても四十半ばぐらいで、引退には早いと思ってしまうが、とりあえず思った年を伝えて見ると。

 オモダカは可笑しそうに笑い。


「いやはや、四十半ばとは、これまた若く見られたもんじゃな、では答え合わせだが聞いて驚くでないぞ?

 わっしの年は今年で八十になる、若面のジジイだぞ?

 これで分かったろ、いくら強かろうがそれは昔のコト、今は剣を振るだけで息切れよ!」


 そんなコトを言いながら、豪快に笑う自称八十のジイさんから目が離せなかった。

 だってどれだけ見ても、四十半ばぐらいで、どんだけ頑張って見ても、決して八十には見えない、俺は憑依で確認しようとしたが、そのまま本体が馬車から落ちたら即死が確定しそうなのでそれをやめ、渋々ながら、それを信じる事にしようとしていると。


「まだ信じていないようだが、もうすぐ目的の村に着くんでな、無駄話はここまでにして、兄ちゃんはカノンにどう謝るか考えておくんだな」


 それを言われ、本来の目的を思い出し、慌てて頭を抱え、次の村に着くまでのわずかな時間を全て、謝罪文を考えたりで、あっという間に過ぎて行った。

今回は書き始めてから終わりまでに間が開いてしまったのでおかしなところがあるかもしれません。

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