第49話 武器庫
続きは閑話と言いましたが、やっぱり通常どうりの話とさせていただきました。
急な変更ですみません。
「うひよぉ〜、見渡す限り金銀財宝の山じゃん」
「凄いですねソウジ様! 私もこんなにたくさんの金貨、白金貨を見るのは初めてですよ‼︎」
俺とフィリスは、見渡す限りの金銀財宝に目を奪われ、はしゃいでいた。
「これだけあったら、一生遊んで暮らせるんじゃ無いの⁉︎」
「 一生どころか、永遠に遊べるかもしれませんよ‼︎」
「勝手に、騒ぐのはいいのですが、私の案内を離れて別のところに行くのはやめてもらいたいですね、ソウジ君、それにフィリスも」
せっかく盛り上がっていた空気に水を刺したのは、力を失ってから、案内役が板について来たスパルスだった。
「それにこの部屋は、他の部屋よりも高度な魔法と鍵で守られているはずなんだが? 一体どうやって入ったんだい?」
どうやって、って聞かれても困ってしまう。
「いや普通にドアノブに手を掛けて、引いたら開きましたよ、ねっ、フィリス?」
フィリスも同意らしく、首を縦に振ってくれていた。
「そんなはずは無いはずなんですが、もしかしたら、最後に入った者が閉め忘れたのでしょうね、では今度こそ私に着いて来てください」
俺とフィリスは返事を返して、今いる天国の様な部屋から出て行き、スパルスが、鍵を閉め直しが終わったのを確認すると、そのまま俺たちの前を歩き出した。
今俺がいるのは、宝物庫の中で、さっきまで武器庫まで案内されていたが、無性に宝物庫探検がしたくなり、逃げ出した先にあったのが、さっきの金庫だったわけだ。
そして黙って、スパルスについて行くことすぐ、目的の部屋までついた。
「ここが、宝物庫の武器庫です。
ここにある武器はどれも一級品なので、きっと、ソウジ君が気にいる物が見つかると思うよ。」
そこには、先程の金庫にも負けないほどの輝きを放つ武器が飾られていた。
「この中から好きなのを選んでいいのか?」
そんな事を聴きながら、鑑定スキルを使い周りの武器たちを簡単に見てみたが、その全てが、伝説級や幻想級である事に驚いた。
どうやらこの世界には、武器にランクがあり、下から一般級、名人級、幻想級、伝説級、神聖級とあり、人が作れるのは、基本的に名人級までだが、中には人の手よって作られた伝説級の武器もあるらしいが、幻想級から上のランクは、基本モンスタードロップらしいので、滅多に手に入る物では無い。
そして、驚くと同時に、なぜ彼らが使わないのか? と疑問にも思ってしまう。
だがその疑問はすぐに解消された。
「あぁ、構わないよ、正直ここにある武器は私たちには使えない、難物ばっかりだからね」
つまり、また俺は難物処理をやらされる訳だ。
まぁ、今回は一応ちゃんとした武器だし我慢するか。
「じゃあ、武器を選ばせて貰いますので、一人にしてもらいますね」
前と同じ提案をし、返って来た返事は。
「出来れば、何かしない様に見張っていたいが、それも契約違反と言われれば、王の身に関わるので、大人しく外で待たせてもらうよ。
ですが、ここの武器を全て持ち出したりはしないでください、お願いいたします」
「そんな事はしねぇーよ、多くて二、三個選んだら出て来るよ」
そう伝えると、安心した様にスパルスはこの場後にし、フィリスもこちらを一度確認し、しばらく考えた様な仕草をしてから、軽く頭を下げ、スパルスの後を追いかけて行った。
そしてまた一人になった武器庫の中で、俺は迷いなく、神託を発動した。
「そうでしたね、ソウジにはもう魔力があるんでしたよね。
はぁ〜、最後にあんな事言わなければよかったと今になって思いますよ」
「そんなに、がっかりしないでくださいよ。
別れ際にかっこよく決めて、今夜にはいつも通りにしたかったのかもしれませんけど、そんなの問屋が許しませんよ」
「あれは、絶対に私の黒歴史入りですよ。
はぁ〜、ですが、呼ばれたのでしたら切り替えて行きましょう。
それで、ソウジはどんなご用で、私を呼んだんですか?」
「昨夜の件の続きを」
「失礼しますね」
プッツンと切られてしまった。
その後すぐに、再コールしたが、なかなか出てくれない。
それでも続けた結果36回目でフェルトが折れた。
「なんで、黒歴史だって言っている事を掘り返そうとするんですか? 私にだって大人びたい時だってあるんですよ、なのにソウジは! 仕返しのつもりですか⁉︎」
「ごめんごめん、それについては確かにちゃんと聞きたいと思っているけど、対して必要な事じゃ無いから、冗談で言っただけだから気にしないでいいよ。
でっここからが本題なんだけど、一緒に武器を選んで貰えないかと思いまして」
「冗談で、私の黒歴史をえぐった事は許せませんが、わかりました、微力ながら私も武器選びを手伝わせて頂きますね」
とまだ、若干ふてているフェルトと武器選びを開始した。
「それで、ソウジはどんな武器をご志望なんですか?」
「俺的には、剣と弓があればそれでいいと思っているので、取りあえずそれから選ぼうと思っています」
そんな事を言いながら、置かれている剣を見ていると、一際目を引くものがあった。
俺は迷わずその剣を掴むと、鑑定を返ししようとし、同時にフェルトから興奮した声が聞こえて来た。
「ソウジ! ソウジ! その剣はすごいですよ‼︎ ランクで伝説級! その上、能力も伝説級の中でもトップクラスですよ‼︎ さすがソウジ! 見る目があります」
フェルトはなぜか俺のことをべた褒めしてくれているが、俺の内心では、「えっ! そうなの! 」と心の中で思いながら、今更、俺がこの剣を手に取った訳が、刀だったからとは言えなかった。
そんななんとも言えない気持ちを抑えて、刀の詳細を見てみると。
名〈聖刀・絵苦水火力刄一〉
そっと刀を元の位置に戻した。
「さってっと、剣探しでもしますか〜」
「ちょっと待ってください‼︎ なんでそれにしないんですか⁉︎ 庫の中では一番と言っても過言ではないんですよ⁉︎」
「だって酷いんだもん、特に名前が、いや名前しかないけど、こちとら、いろいろ失った気がするよ」
「なんて事を言っているんですか⁉︎ とても素晴らしい名前では無いですか? エクスカリバーだなんて、名前だけで、清く、そして強力な力を秘めていそうな名前じゃないですか?」
確かにフェルトのイメージは、俺のイメージと同じだがそれでも譲れないものがある。
「俺の知ってるエクスカリバーは、刀じゃ無くて! 剣なんですよ! それにこの当て字はなんですか? 〈絵苦水火力刄一〉って酷いにもほどがありますよ‼︎ 返して! 俺の中のエクスカリバーを‼︎」
なんで刀にこんな名前をつけたのか、つけた奴を今すぐ殴ってやりたいと思い、抑えられない怒りで、息を荒く繰り返していると。
「ソウジがそこまで怒る訳が分かりませんが、この剣は、初代勇者が愛用していた剣に似ていますし、勇者が使っていた文字が使われている上に、これは、人の手によって作られており、その作り手の名が、かつて初代勇者と共に冒険した鍛治師の名前と同じなんです。
以上の事から、これは、初代勇者の時代を生きた骨董品なんです!
それならその性能にも納得が行きます。
だからその剣にすべきです‼︎ いえ! しなさい‼︎」
最後が命令文だったので、断る事が出来ず渋々もう一度手に取り、改めて確認してみることにした。
名〈聖刀・絵苦水火力刄一〉
作り手〈ゲイルド・ドド〉
所有者〈〉
能力
〈自然修復〉〈身体回復〉S〈弱体耐性〉S〈状態異常耐性〉S〈魔力変化(聖)〉S〈聖属付与〉S〈魔特攻〉S〈魔法剣〉B
能力の部分は初めて見たがこれが、いいのか分からず、隣に書かれている、アルファベットの意味がわからず、フェルトに尋ねると。
「それは、その能力のランクを表していて、上のSから下はFまであり、ランクが高いほど、その能力も高いと言った感じです」
つまりこの武器はかなり強いんですね、分かります。
俺はフェルトに命令されたのと、能力値の高さから、名には目をつぶり、この武器にする事にし、一応、能力の詳細も見てみる事にした。
〈自然修復〉
説明〈武器の耐久値を自然に回復する〉
〈身体回復〉
説明〈所有者の怪我などを回復させる〉
〈弱体耐性〉
説明〈所有者が弱体攻撃、魔法に耐性をもつ〉
〈状態異常耐性〉
説明〈所有者が弱体異常に耐性をもつ〉
〈魔力変化(聖)〉
説明〈この剣に流し込まれた、無属性魔力を聖属性に変える〉
〈聖属付与〉
説明〈聖属性魔法の威力を上げる〉
〈魔特攻〉
説明〈魔物など対する攻撃威力が倍増する〉
〈魔法剣〉
説明〈この剣に、属性魔力を流しこむと、その属性を纏う事が出来る〉
能力はとても素晴らしかった。
後に聞いた話だが、自然修復は幻想級より上の武器には、すべてついているらしい。
そして、剣が決まったところで、刀を左手に持ち、そのまま、次は弓を選ぼうと思ったが、残念ながらここには、弓は一本しか無かったので、それを手に取ろうとすると、さっきの興奮したフェルトの声とはうって変わり、焦った声を投げかけてきた。
「ソウジ! その弓に触れてはいけません‼︎」
だが時既に遅し。
「えっ?」
と反応を返した時には、右手にしっかりと弓が握られていた。
「あぁ〜‼︎ 今すぐ離して早く‼︎ ポイッて! ポイッてして下さい‼︎ あっ! 呪われてるから捨てる事が出来ないんでしたぁ‼︎」
なにこれ呪いの武器なの! 早く捨てなきゃ‼︎
ポイッ
「「えっ?」」
二人の声がハモってしまった。
「捨てれましたよ? 意図も簡単に? あれ?
これって呪いの武器なんですよね? 捨てれないんですよね?」
「あれ? あれ? 確かにそれは呪いの武器のはずです・・・なのですが、あれ?」
お互いにクエスチョンマークになってしまっている。
呪いの武器がどんなのかは知らないが、フェルトの慌て様からヤバイやつなのはわかった。
なので、俺も少し離れた所から、弓を見て見たが。
名〈蒼穹・デプレスィオ―ン〉
所有者〈日丿輪 総司〉
能力
〈自己修復〉〈状態異常付加〉S〈弱体付加〉S〈弱体成功率上昇〉S〈状態異常成功率上昇〉S
所有者のところに俺の名前が書かれている事と、能力が弱体系以外はおかしなところは無い、と思う。
フェルトに尋ねてみると。
「やはり強制装備されていましたか、なら、自分の名前の右に呪い状態と書かれていませんか?」
そんな事はどこにも書かれていなかったので、正直に伝えたが。
信じれないといった口調で。
「そんな訳がありません! 既に所有者がソウジになっている時点で、その弓の呪いは発動しています。
だから、ソウジはその弓を話すことも出来ず、その弓の呪いである、能力をすべてソウジ自身に付加されて、今ごろ様々な状態異常などが起こっているはずなんです‼︎」
そんな事を言われても、今もこうしてピンピンしているから困る。
「フェルトって、そっちからでも武器が見れるんだよね? なら見て見なよ、特におかしなところなんてありませんよ?」
「そんな訳が無いと言っているでしょ! それにさっきだって名の隣にちゃんと呪われた弓と書かれてっ、ませんね。
あれれ? おかしいです、さっきまでちゃんと呪われた武器と書かれていたはずなのに、あれ? あれ?」
フェルトは困惑している様だが、こっちは、端からそんなものがなかったので、にわかに信じがたい。
「見間違えとかじゃ無いんですか?」
「そんな事はありません! 確かに書かれていたんです! 本当です信じて下さい‼︎」
勿論俺はフェルトの事は信じている、だが、ならなぜと思っていると、ふっと左手に握るものが目に入った。
「もしかして、この刀のおかげで呪いから防がれたとかじゃ無いんですか? それなら俺が呪われて無いのも納得がいきますし」
フェルトもそれには同意してくれたが、まだ納得の言ってない事があるらしく。
「確かに、その剣のおかげで呪いを受けなかったのかも知れませんが、それでも弓そのものの、呪い自体は解除出来ないはずなんです。
それが分からないから困っているんです」
「それはほら、俺が異世界人だからでって事で、この話は終わりませんか? 正直このままこの話を続けても意味ないと思うので」
そう提案し、フェルトもまだ納得はしてないが承諾してくれて、無事、刀と弓を手に入れる事が出来た。
これで武器選びが終わり、フェルトにしばしの別れを告げてから、フィリス達の所に戻ろうとしたが、それより早くフェルトの声が聞こえた。
「それにしても、その刀でしたけ? それと長弓を選ぶなんて初代勇者と同じですね。
なんといいますか、これは偶然ではない様な気がしてしまいますね、って、すみませんどうでもいい話をしてましたね」
フェルトの話に出てくる、初代勇者がどんな人なのかは分からないが、俺はきっと、その人の様にいい人ではないと思ってしまう。
「そうなんですか、ではそろそろ、出なくてはならないので失礼します」
適当な返事を返して、別れを告げた。
「そうですね、今はここでお別れですね、ではまた後ほど」
それを最後にフェルトとの会話が終わった。
そして俺も、武器庫から出て、しばし外に出る道を、歩いて行くと、出口の前にフィリスとスパルスが待っていたので、最初に、自分が選んだ武器をスパルスに見せてから、それを見て驚いているスパルスは置いといて、フィリスを連れて外に出た。
俺には、次に行かなきゃ行けないところがあったので、フィリスに資料館でリンスさんと待っててと伝え、隠蔽を発動し、冒険者ギルドを目指して跳躍し、そして門の上を飛び越え、目的地まで最短距離を飛んでいた。
閑話にする必要が無かったんじゃないのか? と思い始めました。




