第46話 昔話1
遅くなりすみません。
「まぁ、自分で言うのもあれですが、俺の生まれた家は、昔から続く良家でして、こっちで言うとこのかなり高位の貴族みたいなもので、そこで俺はいずれ暁家を継ぐ立場である、長男として誕生しました。
そして、やっと物心がついた時から、父は俺に、『お前は暁家を引き継ぎ、先の世に暁家を残すために産まれた、ただの傀儡に過ぎない、故に傀儡に心は必要無い』と言われ育っていきました。
そのため俺には何かを自由にする権利もなく、父に言われた通りの結果だけを残す、そんな生き方をしていました。
そんな生き方をしていたせいでしょうね。
俺が三歳の時に、妹が産まれましたが、俺には喜びのような感情も何もなく、父に『この子は、お前の妹だ、だからお前が守れ』と言われ、俺は妹を家族では無く、守る対象としか見ていませんでした。
てか、きっと俺には家族と言う概念が無かったのかもしれませんね」
ここで一旦呼吸を整えるために話を切り、フェルトの顔を確認すると、続けて下さいと顔で訴えていたので続きを話し出した。
「で、成長するにつれ俺にも、周囲の人達の俺に対する対応の違いが、少しずつ分かっていきましたが、それは家で働くお手伝いさん達だったので、立場上仕方ない事だと思っていました。
ですがそれは、俺が小学校に入学すると同時に確信に変わりました。
だって、同級生達の俺に対する態度は、どこか目上の人に対するよそよそしさがあり、皆無理をして、俺に話しかけているような感じでした。
まぁ、その頃には、俺も自分の立場を理解してたので、きっと彼らが俺では無く、俺の背にある、暁家にしか興味がない事が分かりました。
正直嫌気がしましたよ。
だって、結局俺は、家でも外でも、人としてでは無く、暁家の次期当主としてしか見られていなかったんですから。
そしてその時から俺は、人を人としてみる事が出来なくなりました。
ですが、それでも俺の生き方が変わる訳もなく、言われた事をするだけの傀儡のまま。
ならいっそ、このまま本当に心など捨てて、傀儡になった方が楽なのでは? と思い、そして、その時から俺は本当の意味で傀儡となりました。
そして、俺は周りの人達に畏怖される存在になりました。
まっ、それも仕方ない事なんですけどね。
だって、母が死んだのに表情を一切変えなかったんですよ、そんな子供を見たら誰だって怖がりますよね。
そしてそれは父も同じでした。
父は俺に、『なぜ涙を流さない? お前の母が死んだんだぞ?』と言ってきましたが、俺には父が何を言っているのか分かりませんでした。
だって、俺から心を捨てろと言ったのは、父だったのに、哀しめなんて言われたって、そんなことができるはずもなかった。
だから俺は父に対してはっきりと、『なぜ涙を流さないといけないのですか? 母は私を産んだだけの存在に過ぎない、それ以上でも以下でもないはずですが?』
それを聞いた父は、どこか落胆したように。
『どうやらお前は、欠陥品だったようだな』
それだけ言うと、父はその場を後にしましたが、俺はその場を動かず、ずっと最後の父の言葉の意味を考えました。
ですが、いくら考えてもその答えは出てきませんでした。
そして最終的に行き着いた答えは、父も所詮は他の者と同じ虫けらに過ぎないだらか、俺に嫉妬しているだけだと。
だから俺は、俺以外の全てを見下しながら生きていきました。
あの日までは。
その日は、急に訪れました。
俺が十二歳になり、いつ戻り学校から帰ろうとしましたが、いつもの迎えの車が来ていませんでした。
俺は、仕方なく歩いて帰ることにしました。
そして、家に着くと、そこには門番がおらず、いつもとは雰囲気が違う事が分かりました。
だが、そんなことは気にせず、俺は、家の門をくぐりました。
そして門をくぐった先で見たのは、人の死体でした。
俺はそれを見ても何も思いませんでしたが、何をすればいいか自分で決める事が出来ませんでした。
そんな時でした、微かに妹の悲鳴が聞こえたのは、それを聞いた俺はその声に向かって歩き出していき。
そして玄関を開けるとそこには、庭よりも無残な光景が広がっており。
俺は靴を脱ぐ事なく、床一面に広がる血溜まりを上を歩いていました。
そしてゆっくりと、声のする方に向かって行き、声がする、妹の部屋の前までつき、中を覗っと、そこには、風邪で学校を休んでいた妹と、それに多い被さるように手足を押さえ、右手にナイフを持っていた男がいました。
男の持つナイフからは血が滴り落ち、妹も必死に抵抗していましたが、子供の力でどうこうなるわけもありませんでした。
そんな光景を俺は黙って見ていることしか出来ませんでした。
そんな俺に妹が気づき、俺に何かを必死に訴えようとしてましたが、口を押さえられ何を言っているのか分かりませんでしたが、それだけで、俺の次の行動が決まりました。
俺は隣に倒れている、お手伝いさんの頭から簪を抜き取ると、躊躇いなく、その男に駆け出しました。
妹しか見ていなかった男は、俺に気づいていませんでした。
だから俺はそのまま、簪を男の耳穴を狙い突き刺しました。
簪は、狙い通り耳穴をさし。
俺はそれだけで、人が死ぬ事を死んでしまう事を知っていました。
そして耳穴からはゆっくりとした流れで血が垂れ落ち、男は力なくその場に倒れました。
男が死んだのは確定でしたが、俺は倒れた男にまたがると、簪を振り下ろしました、何度も何度も。
それが終わったのは、家に駆けつけた警察達によってでした。
そして俺たちは、警察達に保護され、事件の事をいろいろと聞かれ、その時に、俺は一枚の写真を見せられました。
その写真が、妹を襲っていた男だと気づくのにしばらくの時間がかかりました。
警察はその写真を指差しながら『なぜこんなになるまで』と言っていましたが、俺はそれに対する返事が思い浮かばなく、無言でいると、別の警察が現れ、俺は解放されました。
そして警察署から出ると、父が俺を待っていました。
俺は父に案内されるように車に乗り、その中で、今回の件は、俺が勇敢に殺人鬼に立ち向かい、その時に男の打ち所が悪く死んでしまったと言う事になり、正当防衛でケリがついた事を教えてくれました。
そんな事を聞いているうちに車は止まっており、父は車から降り、俺もそれに続き車から降りると、そこには見慣れない建物があり、父はここがしばらくの家だと、簡単に伝え、中に入りました。
そこには、新たなお手伝いさんと妹がいましたが、妹は俺を見ると酷く怯え出しました。
父が何故かと聞くと、妹は『笑っていました、お兄さんは、あっあの男を刺している間、ずっと笑っていました』と怯えながら父に話していましたが、父は見間違いだと妹をあやめて、その日は終わりましたが、本当の悪夢は此処から始まりました。
次の日、昨日の事がニュースなどで取り上げられました。
そこでは当然、昨日父が言った通りの事が取り上げられ、それと同時に、俺の行いは勇気ある行動と取り上げられました。
きっと父が手を回したのでしょう、そんな事を思いながら、父にしばらく学校は休めと言われ、その言葉通り俺はしばらく学校を休む事にしようとしましたが、妹は学校に行きたがり、結局俺もそれに続いてついていく事になり、そしていつ戻り登校すると、いつもとは違い皆俺を見ながら嫌な笑みを浮かべ、自分の席の前まで着くと、机には、〈人殺し〉と書かれており、そしてわざとらしく、人殺しが来たぞなどと囁いていました。
今まで、散々媚を売ろうとしたくせに、いざその相手が悪事を犯せば手のひらを返し、嘲笑う、そんな奴らに嫌気がさしたましたが、でもそれはいずれ治ると思っていましたが、それは違いました。
その時すでに、一枚の写真が、様々な所に流れていました。
それは、俺が殺し、何度も刺され跡形を失っていた男の写真でした。
そして次の日には、過剰な態様などと言われ出しそして私はたった一日で、勇敢な子から、ただの人殺しと呼ばれ始め、それは鎮火する事なく広まって行きました。
きっと皆同じで、やっと暁家に手が出せると思ったのでしょう。
日に日に暁家に対する当たりが強くなって行きました。
ですが、そんな事を暁家が許すわけもなく、そして暁家は一つの決断を下しました。
この俺、暁 総司を追放すると言う事でした。
俺はその決断に逆らう事なく受け入れ、俺は遠く離れた、田舎に送られ、そこから一切出ない事を命じられ、そして二度と暁の名を語る事を禁じられ、代わりに日丿輪の名をもらい、月々の金を渡されると、彼らは足早にその場を後にしました。
そして私は、地位も名も失い、本当に存在意義を失いました。
これにて、暁 総司の話は終わり、そして次からが日丿輪 総司のお話になりますがこの続きをお聞きになりますか?」
そんな問いにフェイトは頷いたので、続きを話す事にした。
「ではお聞き下さい、日丿輪 総司の話を」
そして俺は続きの話をゆっくりと語り出した。
今回は、書き出した日から何日か日を跨いで書き足しているため、おかしな所などがあるかもしれません。
次話の投稿は未定です。
すみません
 




