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村人勇者の英雄譚  作者: ワカメ
一章 王国生活
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第43話 通路で

 資料館に向け物静かな通路を歩いていた。


 当然俺の後ろにはフィリスがいたが、フィリスは何かを聞きたそうにしていたが、何から聞けばいいのか分からないのか、この道の道中で、まだ一言も話しかけていない。


 そんなフィリスのためにこちらから話題を振ることにした。


「そう言えば、食堂で俺に何か聞きたそうでしたが、なんだったんですか?」


 と尋ねると、まだ悩んでいるようだったが、やっと口を開いてくれた。


「ソウジ様には、いろいろと聞きたいことがありますが、今一番聞きたいのは右手のそれのことです」


 と言いながら、フィリスは俺の右腕にある、紋様を指差していた。


 俺も、改めて右腕にある紋様を眺めていると。


「さすがに無知な私でも、それが血の契約だって事ぐらいは分かります。

 なので、一体何を命をかけてまで、王様と契約を結んだのか教えてもらいたくて」


 と言われてやっと、フィリスが何を聞きたいのかが分かった。

 俺はてっきり、この紋様に何か変なところがあるのか、それともギアスの存在を知らないのかと思ってしまっていた。


 フィリスの質問が分かったことなので、その質問に答えるついでに、他にも聞きたいと思っているだろう、いろいろについても答える事にした。


「そうですね、実は魔物討伐の時に騎士団に裏切られまして、その事に王様も関わっていたので。

 これ以上、命を狙われるのも嫌なので、このギアスで互いに命を狙わないために結んだものなんですよ」


 簡単に説明したが、フィリスは納得していないように。


「でも、それだと、ソウジ様はどうやってここまで帰ってこられたんですか? 騎士団が裏切ったとなりますと、魔物と遭遇したら、スキルなどを持ってないソウジ様だと、逃げる事さえ難しいと思いますし。

 それに、騎士団よりも早く帰って来ることができるとは思えませんし。

 後、今まで、あえて聞きませんでしたが、どうしてそんなにピンピンしてるんですか?」


 一答えたら、三増えてしまった。

 一つ一つ答えるのも面倒なので、エルス達にやったように魔法を見せる事にし、歩きながら、指を目の高さまで上げると、火の玉一つを生み出した。


 それを見たフィリスは驚いた顔をしながら立ち止まってしまった。

 なので俺も立ち止まり。


「このように、スキルとしては表示されていませんでしたが、実は元の世界のスキルを使う事が出来たんですよ。

 だから、魔物もなんのその、それに自己回復もできますので、今ではこの通りなんですよ」


 と言った所で、フィリスを見ると。

 フィリスは下を向き、プルプルと震えていた。

 そして耳を刺すような大きな声で。


「すごいです‼︎ やっぱりソウジ様は勇者様だったんですね‼︎」


 と言いながら、俺に飛びついて来そうな勢いで、火の玉を使っていた手を、両手で握り、子供のようなキラキラとした目で俺を見ていた。


 正直、こんな風に手を握られて、見つめらたことが無いので、少し恥ずかしい気分になってしまい、なんと言ったものかと悩んでしまう。


 そんな俺に気づいたのか、フィリスは「すみません」と謝りながら、手を離して、顔を下げ、俺を置いて歩き出した。


 俺もその後に続いて歩き出し、フィリスの横につき、顔を除きこもうとすると「見ないで下さい」と言われ、ソッポを向かれてしまった。


 なにこの子可愛い。


 そんな事を思いながら歩いていると、気づけば目的地の資料館についていた。


 俺が資料館に入ると、ここの主である、リンスさんがいつもと同じところに座っていた。


 リンスさんはこっちに気づくと、勢いよく立ち上がり、走っ掛け寄ってき、そして俺を、両手で抱き込んだ。


 男とのハグは遠慮したいが、リンスとのハグは自然と心地いい気持ちになり、嫌な気分にはならなかった。


 少し惜しいが、隣でこちらを冷たい目で見ているフィリスがいたのでリンスさんの背中を叩きながら。


「リンスさん、苦しいのでそろそろ離して下さい」


 それを聞いたリンスさんは「すまない」と言いながら、両手を離してくれた。


 それを確認してから、俺はここに来たら言いたかった言葉を言う事にした。


「ただいま、リンスさん」


 それを聞いたリンスさんは、嬉しそうに。


「あぁ、おかえり」


 やっぱりここは、心が落ち着く場所だと思いながら、いつもの席に向かった。

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