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村人勇者の英雄譚  作者: ワカメ
一章 王国生活
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第39話 王達の場

少し遅くなりすみませんでした。

 俺は足元に転がって来た男の頭を見ていた。


 この男は誰かの手では無く、自分の手で殺した。


 それなのに俺は何も感じなかった。

 それはあの時と同じだった。


 思いでしてしまう、過去の記憶。

 その度に、自分自身が嫌になる、俺はあの時から、人であろうとして来たのに、結局は何も変わってなんかいなかった。


「所詮、俺は出来損ないの傀儡ってことかよ」


 そんな誰かに言った訳でもない、その言葉は森の中に消えていった。


 その後、まずは気持ちを落ち着かせた後。

 そこらに転がる頭を拾うと、道具をしまう要領で、頭を格納庫にしまい。


 次に、毒で死んだ団長の首を取りに向かった。

 そして、団長の前にまで行くと、迷いなく剣を振り下ろした。

 転がる頭の髪を掴み、持ち上げると、今度こそこの森を出ようと、脚を進めた。



 森から脱けると、眩しいほどの夕陽が、俺の目を襲った。

 俺は目を細めながら、マップを確認し、王国の位置を確認すると、その方向に向き、そして全能力上昇を発動し地面を蹴った。


 当然、王国まで、一直線で帰ろうとすると、道ではない所を走らなければいけないため、障害物が多くある訳だが。

 俺の二歩目は、前に進むまず、上に飛んだ。


 そして、数十メートル飛んだところで、何もないはずの空を蹴った。


 何もない所を蹴れた理由は、風魔法で空気の足場を生み出したからだ。


 これのおかげで王国までの最短ルートを進めることになり、その上、スキルのおかげで、その速さは、かなりのものだった。


 そのおかげで、行きは長く感じた道のりだが、帰りは、一時間ちょっとで王宮の前まで戻って来ることが出来た。


 俺はそのまま、王宮の門を通過し、周りに人影がいない所に着地した。


 そして、スキルを解除し、少し怠い体に鞭打ち、王宮の入り口を目指した。


 王宮の入り口付近に着くと、扉を守る二人の兵が手に持つ槍をこちらに向けた。


「キサマッ! 何者だ‼︎ 」


 すでに陽が落ち、ランタンの光ではここまでは照らせないのだろうと思いながら。


「総司ですよ、魔物討伐から帰投しました」


 と言うと、兵たちは驚いたように声を上げ一人が走って扉の中に入って行った。


 俺もその後に続こうとしたが、残った兵に止められた。


「すっ、すみませんソウジさま、急な事でしたので、今もう一人の者が、食堂にいる王達に伝えに行っておりますので、今しばらくここで待っていただけませんか?」


 どうやら王達は食堂にいるらしい。

 なので、兵の制止を無視して中に入ろうとしたが、兵がそれを前に立ち、しつこく止めようとするので、右手に持つ者を兵の目の前に掲げると、しばらくの制止の後、腰が抜けたようにその場に怯えながら倒れた。


 それを見ながら。


「これが腐っちゃうかもしれないんで、先を急ぎますね」


 と告げ、扉をくぐり、食堂を目指し歩いて行った。


 すれ違う者達が皆俺を見ると驚いた様な顔をしていたが気にする事なく、歩いて行き、食堂の近くまで行くと、食堂の方から声が聞こえて来た。


「恐れ多くも! 至急王に伝えねばなりません案件のため! このご無礼お許し下さい!」


 それがきっと俺の事だと気づき、このままでは、俺が現れた時の、奴らの驚いた顔が崇めないと思い。


「いやぁ〜、別にそんなに急がなくてもいいのに、俺が食堂に行けばいいだけなんだから」


 と食堂にも聞こえる様に言った。

 そして気づいた、これでは結局、奴らの驚いた顔が崇めないことに。


 やってしまった! と後悔の念を抱きながら、わざとらしく、足音を立てて食堂を目指し。


 そしてやっと、たどり着いた。


 王達の場に。


「ただいま、日丿輪 総司、魔物討伐の任を終え、戻りました。

 それで、これから王にこれについて、お話したい事があります」


 それが最初の言葉だった。


 そしてそのまま、手に持つ頭を机に置いた。

 きっと俺はこの時の、奴らの顔を忘れる事は無いだろう。

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