第38話 脅迫
すごく今更なのですが、ジャンルを間違っていると言う指摘がありました。
なので、ローファンタジーからハイファンタジーに変更させていただきました。
本当に申し訳ありませんでした。
敵さんが最初に放った矢から、今放ち、俺に向かっている矢でちょうど十五発目になるがその矢も、今までの矢と同様に、俺の周りに渦巻く風の壁により、阻まれ、明後日の方向に飛んで行った。
その間も、弓兵の方を目指し歩いていたが、その後の矢が放たれて来なかった。
どうやら敵さんは、矢を全て撃ち尽くしたため、撤退を選んだ様だが。
その判断は少し遅かった。
「みぃ〜つ〜けぇ〜た〜」
その独り言の意味は、やっと敵さんが、俺の視界に入ったと言うことだった。
視界に入ったならやる事は一つだった。
憑依を発動し、敵の体に乗り移ると、まずはスキルを奪い、少し記憶を見せてもらい、そして、地べたに倒れている本体の方へ近づき、亡骸となっている騎士団の腰にさしていた短剣を引き抜くと、少し離れた場所まで行き、そして、短剣を高く振り上げると、そのまま勢い良く、自身の右足に突き刺した。
途端、焼く様な痛みが体を襲った。
それでもまだ体に戻ろうとはしなかった。
痛みをこらえ、何とか呼吸を整えると、再び短剣を高く振り上げ、残る左足に突き刺した。
「ギャァァァアァァ⁉︎」
「っつう!」
俺が本体に戻ると同時に、男の悲鳴と、脚からの激痛が襲って来た。
俺は、倒れた時に木でも刺さったのではと思い、回復魔法を使いながら確認したが、何処を見ても、怪我をしている所は無かった、それに、回復魔法を使っているはずなのに、一向に痛みが引かなかった。
そこで気がついたが、痛みを発している所は、さっき男の脚を潰すために、短剣を突き刺した所だった。
つまりこの痛みは、さっきのフィードバックであり、ただの妄想である事に気付いた。
なので、この痛みのことを気にするのは辞め、さっきから五月蝿いほど、叫んでいる男の方にまで歩いて行くと。
「ヒィィ! クッ来るなぁ‼︎ バケモノがァ‼︎」
バケモノとは失礼なって思ったけどあらがち間違いでないので言い返せなかったので、別の話をしようと話しかけようとしたが、男は俺から逃げようと、残った両手で地面を一生懸命掻いていた。
正直逃げれる訳も無いのに、こんなにも生きようと足掻くその姿は、とても惨めで、見ていて面白いものでは無いので、男の前まで行き、そこにしゃがみ込み、男の髪の毛を強引に引っ張り、俺の顔が見える様にした。
男の顔は、涙と土汚れでグチャグチャになっており、過呼吸のせいで、悲鳴もまともに上げれないと言った感じだった。
だが、そんな事は気にせず言葉をかけた。
「今から言う事をしっかりと聞けよ、まず最初に言っておくが、死にたく無かったらこれ以上騒ぐな、いいな?
次にだ、ここからが重要な話だ。
これから一つ質問をする、質問に嘘なく答えるなら、その傷を治して、見逃してやる。
分かったか? なら今の提案に乗るなら、首を縦に振れ」
男の返答など一切聞かず出した提案を、男は考える時間などなく首を縦に振った。
それを確認すると、まずは回復魔法をかけてやったが、完璧には治さず、痛みを少し緩和させる程度のものだ。
そのおかげか、男も少し落ち着きを取り戻し始めたので、早速質問を開始した。
「なら質問だ、お前は誰に雇われた?」
「俺を雇ったのはそこに死んでる男達が団長と呼んでいたそこの男だ、これでいいのか?」
「そうだな、少し話を変えるが、あんた最近、子供が産まれた様だな、その子は女の子で、名はデイジーかぁ〜、いい名前だと思うよ、それに子供のために家も買ったのかぁ〜、いやぁ〜いいお父さんなんですねぇ〜〜。
でっ、話を戻しますけど、さっきの解答をもお一度、俺の目を見て言えますか?」
男の顔からは血の気が引いた様に真っ青になり、その目は本物の悪魔でも見ているかのように、その上、再び過呼吸の様な症状が出ていた。
それでも、男は何とか声を出そうとしていた。
そしてやっと聞き取れた言葉が。
「俺が、悪かった、ちゃんと素直に話すから、妻や娘には、手を出さないでくれ、頼む、この通りだ」
男は泣きながら、額を地面に押し付けていた。
どうやらこの世界でも土下座は通じるらしい。
そんなどうでもいい事を考えながら。
「どうやら、やっと自分の置かれている立場が分かったようだなぁ〜。
もお一度聞くぞ、お前は誰に雇われた?」
男は俺には嘘が通じないと分かったのだろう、ペラペラと聞いてないことまで話し出した。
「俺を雇ったのは、この国の王、エルス・セシルだ。
王は念には念おと、この国一の弓使いの俺に、もしあんたが行きて森から出ようとしたら、そこらに転がる、猛毒を塗った矢で射殺せと言っていたんだ! これは本当だ信じてくれ‼︎」
それが本当なのは確認済みなので。
「そうか、よく素直に話してくれた、もお脚は治してある」
と言うと、俺は男に背を向け、脚を踏み出した。
男は、俺の背中に向かって、ありがとうございます、ありがとうございますと何度もお礼を言っていた。
そして、俺は二、三歩進んだ所で男にの方へ振り返り、頭を一生懸命下げていた男の前まで行くと。
「お礼はいらない、なぜならお前はここで死ぬからだ」
「えっ?」
男は俺が何と言ったのか分からなかったのだろう、呆けた顔を上げ、そして絶望した事だろう。
男の目の前には、剣に手をかけた、俺の姿があるのだから。
そして俺は男に対し。
「見逃してやると言ったな、あれは嘘だ」
その言葉を最後に男の首が飛んだ。




