第35話 魔物狩り
俺は魔物達を見据え、身体強化を発動して、後ろにかけている短剣に右手で握り、姿勢を低く構えた。
魔物達もこちらを伺っているのか、一定の範囲から近付こうとして来ない。
このまま、にらめっこをしていても、時間制限のあるこちらの方が不利になると考え、先手を打った。
俺は右手に握る短剣に力を込め。
そして、地を蹴り、一閃。
それは一つの線を残し、目の前のゴブリンまで続いていた。
「ッギ‼︎」
ゴブリンは一種のことで驚いた様な声を上げていたが、その間にも俺は次の行動を取っていた。
腰にさしている短剣を引き抜き、それを目の前のゴブリンの首元に突き刺した。
すると短剣を刺した所から大量の血飛沫が顔を目掛けて飛でき、顔を赤黒く染めたが、そんな事は気にする事はなく、短剣で首を引き裂いた。
「ーーーーーー」
ゴブリンは音の無い声を最後に上げ、魔石とドロップ部位を残し、塵となり消えていった。
それと同時に、短剣も粉々に砕けてしまった。
元々、廃棄品なので、耐久は気にしていなかったが、まさか一回で壊れるとは思っていなかった。
だが、そうだとしても、目の前で仲間をやられたゴブリン達は皆同じような鳴き声を上げ、さっき殺したゴブリンの隣にいた、ゴブリンにいたっては、すでに手に持っていた木の棍棒を振り下ろしていた。
それを紙一重で躱すと、今度は剣に手を掛け、そして一線。
その一撃は、自分で言うのも何だが、目で捉える事が出来ず、こんな廃棄品の剣ですらゴブリンの胴を一刀両断するほどの威力があったが、剣も振り抜くと同時に砕けてしまった。
「チッ!」
舌打ち一つ付くと、バックステップで、敵から距離をとったが、ゴブリン達や他の魔物達も、こちらが丸腰だと思っているのか、直ぐに襲って来るわけでもなく、ジリジリと卑し顔を作りながらにじり寄って来ていた。
そんな行動や顔にイライラしていたが、それと同時に自分の体の違和感にも気付いた。
それは、身体が重くなるわけでも、目の前が霞むわけでもなく、それとは真逆で、身体がさっきより軽くなったような気がしていた。
「これってやっぱりあれだよな」
と独り言のように呟き、ステータスを開くと、予想通りの結果に、ついつい顔がにやけてしまう。
俺が見ていた所には、こう書かれていた。
職業〈村人〉LV12
レベルが上がっていた。
それによって、各ステータスも上昇していた。
それはつまり。
「魔力は二十四か、これが多いいのかはわからんが、やっとこ、俺も魔法が使えるわけだ」
多分、今の俺の顔は、魔物達にも引けを取らないほど、卑し顔をしている事だろう。
「そうだよなぁ〜、ゲームでも、この世界でも、所詮お前らはただの経験値なわけだ」
そんなこと言いながら、ゆっくりと魔物達の方に近づいて行くと、魔物達はその歩みを止め、その顔もさっきまでとは打って変わって、見えない何かに怯えているような顔をしていた。
だが、その内の数匹は、見えない恐怖を無理やり引き剥がそうとしたのか、それとも丸腰の俺になら勝てると思ったのか、それともこの数でなら行けると思ったのか、俺の周りから一斉に飛びかかって来た。
その中には、ゴブリン以外に獣型の魔物もいたが、そいつらには野生の勘や危険感知のような野生動物特有のそれがないことに、内心ほくそ笑みながら、いつの間にか右手に握っていた槍を構え。
そして、右脚を軸にクルリと一周、横に振り抜いた。
槍の一振りは、魔物を一匹もとらえていなかったが、その後、発生した突風と言うよりは鎌鼬にも似たそれにより、飛びかかって来ていた魔物の全ては、多大な切り傷を作り、吹き飛ばされた先で、塵となり消えていった。
その後、もお一度ステータスを確認すると、レベルは三十一にまで上がっており、その上、魔力も減るどころ数百の単位で増えていた。
もおニヤニヤが止まらない。
魔物達も、そんな俺を見てか、怯えたように後退り出し、中には背を見せ逃げ出す奴もいたが、そんな事を許すわけもなく。
逃げ出す的に槍を持っていない左手の人差し指を向け。
「バァーン!」
たったそれだけだった。
だが魔物は一槍の雷光によって撃ち抜かれ、その発生現である、俺の指先からは雷電が走っていた。
そして俺は、左手を下げ、またどこからともなく現れた片手剣を握ると、周辺の魔物達に聞こえるような声で。
「せっかくの経験値を逃がすわけがねぇだろうが‼︎」
それを聞いた魔物達は、一斉に俺に背向けると、我先にと一目散に逃げ出し始めた。
そんな光景を見ながら。
「ヒャッハーー‼︎ 狩の時間だぜぇぇぇぇぇ‼︎」
自分でもおかしなテンションになっていたのが分かったが、今はこのテンションに任せることにし、長く続く狩の時間が始まった。
休日は、何時に投稿するか分かりません。
本当に申し訳ありません。




