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村人勇者の英雄譚  作者: ワカメ
一章 王国生活
33/73

第33話 初陣

 どのぐらい時間が経ったか分からなかったが、気がつくと俺の前には、見知らぬメイドさんと、その手にはバスケットが握られていた。

 そのメイドさんは簡単に、これが昼食であることと、食後の集合場所だけを簡単に告げると、この資料館から出て行った。

 バスケットの中には、サンドイッチらしき物が入っていたので、それを平らげると、メイドさんが言っていた、場所にいく事にした。

 フィリスの肩に捕まり、資料館の出口前まで近づくと、リンスが心配そうな声で。


「本当に、大丈夫なのか?」


 そんな声に俺はいつものような声で。


「全てが上手く行ったら、必ず最初にここに来ますよ」


 それを聞いて、リンスの心配が抜けていないようだったが、俺は最後に軽く頭を下げて、資料館を出た。


 資料館を出ると、フィリスが話しかけて来た。


「ソウジ様って、リンスさんと仲がいいですよね、それに私の知らないことまで知っているようでしたし」


 フィリスの声は、少しふてているように聞こえてしまったので、軽くフォローする事にした。


「フィリスが思っているような事はありませんよ。

 リンスさんと仲がいいのは、同じ読書好きという共通点があったからですし」


 軽くフォローして見たが、フィリスはまだ納得していないのか。


「別に気にしてませんよ? たとえ二人だけの秘密があったとしても別に構いませんよ」


 なんか余計にふてられた。

 そんなこんなで、話しづらくなってしまい、そこからは、特に会話も無く、歩みだけが進んで行き、そして目的地であった、王宮の出入り口となっている門の前までやって来た。


 そこには、馬車が一台と馭者が一人に、王国騎士団の鎧を着込んでいる者が五人そこに立っていた。

 騎士団の数が思っていたより少なかったが気にせず、その集団に近づくと、彼らもこちらに気がついたのか、ゆっくりとこちらによって来た。

 そして、お互いに会話のできる距離にまで近づくと、騎士団は一人ずつ名乗っていったが覚えるのが面倒だったので、軽く流す事にした。

 そして、いろいろな説明などが終わると、騎士団は俺を馬車まで誘導し、騎士団の肩を借りる事でなんとか馬車に乗る事が出来た。

 その後、騎士団の五人が馬車に乗り込むと、ゆっくりと馬車が動き出した。

 それを見送っていたフィリスの顔が寂しそうに見えたので、笑顔で手を振ると、フィリスも作り笑顔なのは分かったが、手を振り返してくれた。

 馬車は門を超え、その大きな扉が閉まるまで、俺はフィリスに手を振り続けた。

 その後は、騎士団達に少し休むと伝え、寝る振りをし、スキルを奪った。

 スキルを奪った後はする事が無くなったので、本当に寝てやろうか、っと思ったが、本当に寝てしまうと、その間に何をされるか分からないので、狸寝入りをして目的地まで待つ事にした。



 そして、狸寝入りを始めて、かなりの時間が経った所で、馬車が止まった。

 すると騎士団の一人が俺の肩を揺すって、目的地付近に着いたと伝えられた。

 俺は馬車から降りると、そこには鬱蒼と生い茂る木々が広がっていた。

 それを見ていると、騎士団の一人が。


「ここが目的地の、迷いの森だ。

 後、ここから先は馬車では危険なので俺たちだけでいく」


 と伝えると、騎士団達はその場で用意を始め出した。

 その間に俺は、騎士団達と同じく馬車から降り馬の手入れをしていた馭者の方に向かっていき。


「馭者さん、つかぬ事をお聞きしますが、王宮からここまで、徒歩だとどのぐらいかかるんですか?」


 そんな質問を投げかけると、馭者は何故そんなことを、みたいな顔をしていたが、馬の世話を続けながら「半日ほどだ」と教えてくれた。

 それを聞き終わると、馬車にもたれかかり、そして馭者から騎乗スキルを奪い、俺は騎士団の方に戻ると、ちょうど用意が終わった騎士団達がいた。

 騎士団達は、一人を馭者の護衛に残すと、森の中に歩みを進めた。

 俺も、騎士団の一人に肩を借り、森の中に踏み込んだ。

 森の中は、日がほとんど遮られており、吹き抜ける風は、嫌な涼しさであり、その度に揺れる木々の音色は、この森の不気味さをよりかもちだしていた。

 そんな森を進んでいったが、足場が悪く数度転けそうになったりもしたが、それより気になったのが、今の今までに、一匹も魔物にあっていないことだ。

 俺たちがこの森に入ってから、すでに二十分近くになるのに、未だに魔物の一匹にも遭遇していなかった。

 これが普通なのか、それとも異常なのか分からなかったので、黙ってついていっていると、変な音が聞こえて来た。

 それは、何かの足音のようだった。

 だがその足音は、一つ二つでは無く複数のものだった。

 それに、その足音はまっすぐこちらに向かって来ていた。

 俺は咄嗟に騎士団にその異常を伝えようと、肩を借りている騎士団を見ると、その者は笑っていたのである。

 そして、その騎士団はあろうことか、俺を突き飛ばし、地面に投げ捨てた。

 俺は当然なすすべなく、地面に倒れた。

 だがそれでもなんとか立ち上がろうとしたが、それを騎士団の一人に、頭を踏みつけられたことで阻止されてしまった。

 俺は、立ち上がる事を諦め、この後の成り行きに任せる事にした。

 その間も、足音は近づいて来ていた。

 そして、そのうちの何個かは俺の目の前まで来ているのが分かり、流石にこのままではヤバイと思い、憑依を使おうとした。

 だが、その足音は、俺の前で止まり、俺が、何故かと考えていると、上の方から話し声が聞こえて来た。


「全くいつまで待たせるだよ、お陰でこんなクソの役にも立たない野郎を担いで、ここまで来る事になっちまったじゃねえか」


 その声から、さっきまで肩を貸していた騎士団だと分かったが、その口調は、先ほどからは想像も出来ないものだった。


「こちらも、あれほどの魔物を集めたんだ、時間がかかるのは当然だろうが、それより早く逃げないと俺たちも、あの魔物の群れに襲われる事になるが?」


 今までに聞いたことがない声だった。

 そして、それを聞いていた。騎士団は舌打ちをして、俺の頭から足を離すと、そのまま逃げようとしていたが、それをさっきの声の主が止めた。


「おい、王の命令は、こいつの確実な死のはずだ、なら念を入れて足を切り落とすべきだと思うが?」


 上から恐ろしい会話が聞こえて来たが、それと同時に、これが王の仕掛けた事ということも分かった。


「その必要はねぇよ、見ろよこいつの哀れな姿を、今のこいつは、一人ではまともに歩けもしないんだ、だから別だん俺たちが手を加えなくても、あの魔物達に殺される。

 だから早くいくぞ」


 謎の声の主は、「そうだな」と言い納得したようだったが。


「だが、これだけはちゃんとしておかないとな」


 と、言うと俺の頭に謎の液体をかけて来た。

 それは、腐った卵のような、それよりもとてつもない、刺激臭を放っていた。

 そして、それを最後に他の騎士団と謎の声の主は、俺たちが元来た道に走っていった。

 そして俺も、顔を上げ周りを確認すると、周りには、赤く光る双眸を光らせる、魔物達が俺の周りを陣取っていた。

 その数は、少なくとも百は超えていた。

 俺はさっきの液体に有毒性がない事を確認してから、ゆっくりと立ち上がり、げんなりとした声で「マジかよ」とつぶやき、魔物達と対峙する事になった。

ブックマーク登録数が10人を超えました。

なので、この場を借りて、この作品を読んでくれた皆さんに感謝の気持ちを伝えたいと思います。


この本を読んで頂きありがとうございます。

また、今後もこの作品がもっと面白くなる様に頑張りますので、引き続き読んで頂けると幸いです。

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