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村人勇者の英雄譚  作者: ワカメ
一章 王国生活
32/73

第32話 再び資料館で

 コンコンと扉がノックされ、そこからキエロが入って来た。


「ソウジ様時間になりましたので、呼びに来ました、ってこれは一体⁉︎」


 キエロが驚くのも無理はない。

 なぜなら、三十分ほど前にはあったはずの、武器の数々の全てが無くなっていたのだから。

 まぁ、この部屋の武器が全て無くなっているのは、当然俺のせいなんだけど、ちゃんと言い訳を考えている。


「少し前に、他の人達が来て、ここにあった武器の全てを持っていかれましたよ」


「なっ、そんなはずは、ここにある武器は全ては、っ、いえなんでもありません、そうですか、他の者が回収されたのですね」


 一瞬、動揺のせいで、ここの武器が全て、廃棄品だと言うことを言いそうになったが、なんとか踏みとどまったようだな。

 だが、その反応だけで、こいつが黒なのが分かった。

 そして、この男が属する、王国騎士団も黒だと言ってもいいと思われる。


「それで、ソウジ様の得物は、そちらの剣と短剣ですか?」


 その問いには、首を振るだけで返して、俺はその場を後にしよと歩き出そうとすると、それに気づいたキエロは、再び俺の前を歩き、出口までの案内を行ない。

 出口に着くとキエロは「では、また」と簡単に別れの挨拶をすると、すぐに中に入って行ってしまった。

 そして俺が出て来た事に気付いたフィリスは、俺の元まで駆けつけて、流れるような動作で肩を貸してくれた。

 もう、何も言わなくても、肩を貸してくれるようになっていた。

 俺は当然その行為に甘える事にした。


 そして、次の目的地である資料館を目指し歩き出した。


 その間にも、フィリスとはいろいろな事を話をしていた。

 例えば、俺の武器のことや、キエロがしつこく絡んで来ただの、そんな他愛のない話だったが、それがやけに楽しく感じてしまった。

 そんな事をしていると気がつけば、資料館の入り口前までついていた。

 俺はフィリスにお願いし、扉を開けてもらい中に入り、少し中を歩くと、昨日と同じ場所にリンスさんがいた。

 リンスさんはこちらに気づくと、いつもと変わらぬ、優しい顔でこちらに来てくれた。


「昨日ぶりだね、ソウジ君、それにフィリスも」


 フィリスは簡単に頭を下げ、挨拶を返していた。


「昨日、また来るっていたじゃないですか」


 俺はそんな風に挨拶を返して、本題に入る事にした。


「それで、ここに来た理由なんですけど、実は今日、魔物討伐に参戦する事になたので、その魔物の特徴などを教えてもらいたくて、来させていただきました」


 それを聞いたリンスの顔は険しい物にへとなっていた。

 リンスは険しい顔のまま、先ほどまでリンスが座っていた席にまで案内されたので、そのまま腰をかけた。

 リンスは俺が座るのを確認すると、間合なく話を振って来た。


「先ほどの魔物討伐の件なのだが、それは本当かね?」


 俺が返事を返すと、リンスの顔はさらに険しくなっていき、隣に座っているフィリスがちょっと怯えていた。

 その事に気付いたリンスは、フィリスにお茶をお願いし、フィリスをこの場から遠ざけ、先ほどの話に戻っていた。


「まさか、こんなにも早く動くとは! それよりソウジ君! この魔物討伐の本当の意味が分かっているのか?」


 俺は無言で頷き。


「えぇ、知っていますよ、奴らが今回の魔物討伐で、事故に見せかけて俺を殺そうとしている事を」


 その答えに、リンスは驚きを隠せていなかった。

 それと同時に、かなり険しかった顔が、さらに険しくなり。


「そこまで分かっていて、なぜ断らなかったんだ⁉︎ このままでは本当に死んでしまうぞ‼︎」


 先ほどまで、醜いものを見ていたので、ここまで他人を心配してくれるリンスさんを見ると、心が落ち着いていく。

 そして俺は。


「だから、死なないためにここに来たんですよ」


 俺がいつもと違う、冷静な声で言うと、その意図を分かってくれたのか、リンスは一息つくと。


「なるほど、これから言うことが本命ということか、して、私に何を聞きたいんだ」


 そこまで察していてくれる事に感謝しながら、本命の質問を投げかけた。


「影の騎士団について教えてもらえませんか?」


 それを聞いたリンスはまた驚いた顔をし、少し黙り混み、考えるような動作をしながら。


「それをどこで、などと余計な事を聞くのはやめておこう、影の騎士団についてだが、簡単に言えば、王族直属の暗殺者部隊であり、その者達の実力は、王国騎士団以上だ。

 故にだ、それを知って私はソウジ君を魔物討伐に行かせる事は出来ん。

 行けば必ず死ぬからだ、だから今からでも遅くはない、魔物討伐の件を断って来るんだ」


 リンスの発言には頑なな何かがあった。

 そのため、リンスを納得させるにはそれなりの理由が執拗だと思い。


「それが出来ないんです。

 実は先ほど、その件で、いざこざがありまして、フィリスが殺されそうになったんです。

 それなのに今更、やっぱりなしになんて出来ませんよ。

 それに、今回は運良く逃げれても、奴らは何回でも同じ事をして来ます。

 なら、全てが分かっている今回こそが最大のチャンスなんです」


「チャンスだと? いったい何をいっているんだ?」


 リンスはまだ納得していないようだったので、俺は今回の本当の目的をリンスに話、そのための、奥の手の一つをリンスに見せた。

 それを見たリンスは今日一の驚いた顔を作り、渋々といった感じで納得してくれた。

 そして、そのタイミングで、お茶を入れて来た、フィリスが戻ってきた。

 その後は、リンスにいろいろ聞いたり、魔物の本を読んだりし、ゆっくりとその時が来るのを待った。


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