第32話 再び資料館で
コンコンと扉がノックされ、そこからキエロが入って来た。
「ソウジ様時間になりましたので、呼びに来ました、ってこれは一体⁉︎」
キエロが驚くのも無理はない。
なぜなら、三十分ほど前にはあったはずの、武器の数々の全てが無くなっていたのだから。
まぁ、この部屋の武器が全て無くなっているのは、当然俺のせいなんだけど、ちゃんと言い訳を考えている。
「少し前に、他の人達が来て、ここにあった武器の全てを持っていかれましたよ」
「なっ、そんなはずは、ここにある武器は全ては、っ、いえなんでもありません、そうですか、他の者が回収されたのですね」
一瞬、動揺のせいで、ここの武器が全て、廃棄品だと言うことを言いそうになったが、なんとか踏みとどまったようだな。
だが、その反応だけで、こいつが黒なのが分かった。
そして、この男が属する、王国騎士団も黒だと言ってもいいと思われる。
「それで、ソウジ様の得物は、そちらの剣と短剣ですか?」
その問いには、首を振るだけで返して、俺はその場を後にしよと歩き出そうとすると、それに気づいたキエロは、再び俺の前を歩き、出口までの案内を行ない。
出口に着くとキエロは「では、また」と簡単に別れの挨拶をすると、すぐに中に入って行ってしまった。
そして俺が出て来た事に気付いたフィリスは、俺の元まで駆けつけて、流れるような動作で肩を貸してくれた。
もう、何も言わなくても、肩を貸してくれるようになっていた。
俺は当然その行為に甘える事にした。
そして、次の目的地である資料館を目指し歩き出した。
その間にも、フィリスとはいろいろな事を話をしていた。
例えば、俺の武器のことや、キエロがしつこく絡んで来ただの、そんな他愛のない話だったが、それがやけに楽しく感じてしまった。
そんな事をしていると気がつけば、資料館の入り口前までついていた。
俺はフィリスにお願いし、扉を開けてもらい中に入り、少し中を歩くと、昨日と同じ場所にリンスさんがいた。
リンスさんはこちらに気づくと、いつもと変わらぬ、優しい顔でこちらに来てくれた。
「昨日ぶりだね、ソウジ君、それにフィリスも」
フィリスは簡単に頭を下げ、挨拶を返していた。
「昨日、また来るっていたじゃないですか」
俺はそんな風に挨拶を返して、本題に入る事にした。
「それで、ここに来た理由なんですけど、実は今日、魔物討伐に参戦する事になたので、その魔物の特徴などを教えてもらいたくて、来させていただきました」
それを聞いたリンスの顔は険しい物にへとなっていた。
リンスは険しい顔のまま、先ほどまでリンスが座っていた席にまで案内されたので、そのまま腰をかけた。
リンスは俺が座るのを確認すると、間合なく話を振って来た。
「先ほどの魔物討伐の件なのだが、それは本当かね?」
俺が返事を返すと、リンスの顔はさらに険しくなっていき、隣に座っているフィリスがちょっと怯えていた。
その事に気付いたリンスは、フィリスにお茶をお願いし、フィリスをこの場から遠ざけ、先ほどの話に戻っていた。
「まさか、こんなにも早く動くとは! それよりソウジ君! この魔物討伐の本当の意味が分かっているのか?」
俺は無言で頷き。
「えぇ、知っていますよ、奴らが今回の魔物討伐で、事故に見せかけて俺を殺そうとしている事を」
その答えに、リンスは驚きを隠せていなかった。
それと同時に、かなり険しかった顔が、さらに険しくなり。
「そこまで分かっていて、なぜ断らなかったんだ⁉︎ このままでは本当に死んでしまうぞ‼︎」
先ほどまで、醜いものを見ていたので、ここまで他人を心配してくれるリンスさんを見ると、心が落ち着いていく。
そして俺は。
「だから、死なないためにここに来たんですよ」
俺がいつもと違う、冷静な声で言うと、その意図を分かってくれたのか、リンスは一息つくと。
「なるほど、これから言うことが本命ということか、して、私に何を聞きたいんだ」
そこまで察していてくれる事に感謝しながら、本命の質問を投げかけた。
「影の騎士団について教えてもらえませんか?」
それを聞いたリンスはまた驚いた顔をし、少し黙り混み、考えるような動作をしながら。
「それをどこで、などと余計な事を聞くのはやめておこう、影の騎士団についてだが、簡単に言えば、王族直属の暗殺者部隊であり、その者達の実力は、王国騎士団以上だ。
故にだ、それを知って私はソウジ君を魔物討伐に行かせる事は出来ん。
行けば必ず死ぬからだ、だから今からでも遅くはない、魔物討伐の件を断って来るんだ」
リンスの発言には頑なな何かがあった。
そのため、リンスを納得させるにはそれなりの理由が執拗だと思い。
「それが出来ないんです。
実は先ほど、その件で、いざこざがありまして、フィリスが殺されそうになったんです。
それなのに今更、やっぱりなしになんて出来ませんよ。
それに、今回は運良く逃げれても、奴らは何回でも同じ事をして来ます。
なら、全てが分かっている今回こそが最大のチャンスなんです」
「チャンスだと? いったい何をいっているんだ?」
リンスはまだ納得していないようだったので、俺は今回の本当の目的をリンスに話、そのための、奥の手の一つをリンスに見せた。
それを見たリンスは今日一の驚いた顔を作り、渋々といった感じで納得してくれた。
そして、そのタイミングで、お茶を入れて来た、フィリスが戻ってきた。
その後は、リンスにいろいろ聞いたり、魔物の本を読んだりし、ゆっくりとその時が来るのを待った。




