第二十六話 お怒り2
「では改めて、二つ目ですが」
俺は固唾を飲み込み次の言葉を待っていた。
「それは、修道院での事です」
理由を言われても、全く何のことか分からなかった。
だって修道院では、神託も使ってないから、フェルトを怒らせる事をするわけもないからだ。
「すみません、全く何の事か分からないですけど」
フェルトはそれを聞くと、また少し頬を膨らませ。
「なんで、分からないですか? ソウジは修道院で死にかけたんですよ! 私はその事で怒っているんです」
「でもそれは別にフェルトに迷惑もかけてませんし、フェルトが怒る理由がないと思いますが」
フェルトは呆れたような、それでいてどこか悲しそうな顔をしながら。
「私が言いたいのはそんな事ではありません。
私が言いたいのは、あの時、死にかけていたソウジに何もしてあげる事が出来なかった事です。
私は、貴方を手助けすると言ったのに、いざという時に何も出来ませんでした。
どれだけ心配しても、唯一出来た事は、祈り続ける事だけで、そんな私が私自信嫌になって、怒りを覚えてしまって、それで・・・それでっ」
フェルトの目尻には薄っすら涙が溜まっていた。
「それって俺に対して怒ってませんよね?」
俺はなるべく、いつもみたいな明るい声を出した。
「そうですね、これはソウジじゃなくて、何も出来なかった、私自信に怒っているんです。」
「別に気にしなくて良いんですよ、現に今だってこうして生きてる事だし」
「そうでは無くって!」
本気で泣きそうな顔をしているフェルトの声を遮り。
「はいはい、この話はもお終わり、だからそんな悲しそうな顔をしないで下さい、それにさっきも言いましたが、現に今もこうして生きてますし、要は結果が全てって事ですよ」
「ですが・・・」
まだ納得の行っていないのか、話を続けようとするフェルトに。
「それにですね、俺は好きな人には、笑っていて欲しんです。だから本当に俺の身を安じてくれていたのなら、笑顔でいて下さい。
それが何よりの手助けですよ」
「・・・分かりました」
フェルトはまだ涙を浮かべていたが、いつものような笑顔を浮かべてくれた。
しばらくお互いの間に会話はなかった。
そんな雑音一つ無い空間で俺は一人頭の中で、さっきのキザな発言が何度も頭の中でループし、恥ずかしさのあまり悶えていた。
「ソウジ、ありがとうございます」
俺が脳内で一人悶えていると、急に言葉が聞こえ、そちらを向くと。
もお涙が引き、いつも通りの可愛い顔をしたフェルトだった。
「感謝される様な事はしてませんが?」
当然の疑問を口にした。
「いえ、ソウジのおかげですよ。
確かに、ソウジは何を考えているか分からない、変態かもしれませんが、そのどことない、言葉の一つ一つが人を笑顔にしてくれるんですよ。
私だってその一人ですし、そんな事の出来るソウジは、とても良い人なのは分かります」
良い人ねぇ。
好きな人にそんな事を言われたら嬉しいはずなのに、俺の心は何とも言えない感情があった。
「本当に俺が良い人に見えますか?」
「えぇ、見えますよ、なんでそんな事を聞くんですか?」
「いやぁ〜、何となく」
フェルトに適当な返事を返して、また一人、考えごとをしていた。
フェルトは俺の問いに何の迷いも無く答えてくれた。
その答えを聞いた俺は誰にも聞こえない様な小さな声で。
「俺も人になれたのかな」
それは、二人しかいない空間で、誰にも拾われる事はなく、広い空間の中に消えって行った。
タイトルが適当な感じですみません




