第二話 土下座の素晴しさ
日本では、集合時間に遅れた時、会社で失敗した時、不倫がバレた時、こんなの時に役に立つ、最上位の謝罪が存在する。
その名は、DO・GE・ZA
だが、異世界では全く通用しないことを知った。
まぁ、日本でも、後半のは、無理だと思うけど。
「なんですか、それは?」
「自分がいた、世界での最上位の謝罪です‼︎ はい‼︎」
「そうですか、もう顔を上げてください、勇者様」
「いやです、だってまだ、絶対に、姫様怒ってるでしょ?」
「もう、怒ってませんし、夢だと勘違いしてたなら仕方ないことですし」
「本当に、怒ってませんか?」
「本当にです」
「本当の、本当に?」
「本当の、本当です」
「本当の、本当の、本当に?」
「あまりにしつこいと、怒りますよ」
「はい‼︎ 今すぐ、顔を上げさせていただきます」
顔を上げるとる、そこには、天使の微笑みではなく、身体の震えが止まらなくなるぐらいの、絶対零度のスマイルがあった。
「あのぉ、本当に怒ってないんですよね?」
「えぇ、本当ですよ」
「ならなんで、そんなに怖い顔をされてるんですか? やっぱり怒ってるんでしょ?」
「怒ってませんよ、胸を触ったことは」
「えっ?」
全身に悪寒が走り、身体の震えが止まらなかった。
「確か、残念な、まな板幼女って言ってましたよね? 後、この世界での、最上位の謝罪は、死刑ですよ?」
全身から血の気が引き、口から乾いた笑いしか出なかった。
「そんなに、真っ青になってどうかしましたか?」
「ははは、死刑なんて、冗談ですよね?」
「ふふふ」
姫様は、優しい笑みを作り、右手の親指を自分の首にあて、右に振り抜いた。
「いやだぁ⁉︎ まだ死にたくないよぉ‼︎ だってまだ、一度も息子を使ってないんですよ‼︎ 性の喜びも知らないまま死にたくよぉー‼︎」
全力で後ろに後退したが、男達によって捕まった。
男達に慈悲を求めた、視線を送ったが、目をそらされ、「すまない」「自分の罪だ、受け入れろ」「女はいいぞ」と誰も助けてくれなかった。
最後のを言った奴は、死んでも殺してやると誓った。
「ふふふ」
姫様が笑いながら、こちらにゆっくりと近づいて来てる。
「あぁ」
ポンッ
肩に、姫様の手が置かれた。
「あぁぁぁぁぁぁ」
死を覚悟した。
「ふふ、冗談ですよ、さっきのお返しです」
「へえっ?」
そこには、可笑しそうに笑う姫様の顔があった。
「本当に、もう、怒ってませんから、泣かないで下さい」
「うっうぅ、死刑にしない?」
「えぇ、死刑は、仕返しのつもりだったんですが、そんなに本気で、怯え、泣かれたら、むしろこちらがわの、罪悪感がすごかったので、こちらも反省してます」
「ひめざまぁ、ありがとうございますぅ、ズズゥー」
姫様の左手を、両手で強く握りながら、鼻声で感謝の言葉を言えた。
姫様は、困った顔をしていた。
「分かりまし、分かりましたから、これで顔を拭いて下さい」
姫様の右手には、白いハンカチがあった。
「うぅ、ありがとうございます」
感謝の言葉を口にし、姫様から渡してもらったハンカチで、涙と涙跡をふかせてもらい、ついでに鼻もかんでおいた、。
「いやぁー、スッキリした、てっ言うか、姫様の冗談きつすぎますよ、本当に、死を覚悟したんですよ。
あっ、あとこれ返します」
「ちょっ、調子が戻った様でなによりです。
あと、そのハンカチは、受け取れません」
ちょっと黄ばんだだけで、新品当然のハンカチを捨てるなんて、やっぱお金持ちは違うなぁー。
まぁ、俺もいらないけどね。
「なら、捨てますね」
ポイっとハンカチを投げ捨てた。
それを見てた、姫様が小声で「お気に入りでしたのに」とっ言ってたけど、聞かなかったことにした。
ついでに、ついさっき決心したことを口にすることにした。
「聞いて下さい、俺、今回の件で決心しました」
「なっ、なんですかいきなり」
「この世界は、自分のいた世界にはない、決まりごとや、TPOがあることを知りました」
「えぇ、そうですね」
「だから俺は、今度からは、格上の姫様のような方には、胸がまな板だとか幼女だとか、思ったことをすぐに口に出さない様にします」
再び場が凍りつくのを感じ、後ろの男達が、「やっ、やりやがったあいつ」「今度こそ死んだな」「おれたちにできないことを平然とやってのけるっ、そこにシビれる!あこがれるゥ!」などと口々に言っていたが続ける。
「おい、永遠のモブ共は黙ってろ、あと、最後のやつなんでそのネタ知ってんだよ! まったく、でっ、話を戻しますけど、つまり俺が言いたいのは、本当の事は言わず、相手を尊重し、オブラートに包み、相手に伝えることにします‼︎ つまり、姫様は残念まな板幼女では決してありません、例えるなら、そう、ボッ・キュッ・ボンなセクシーな大人の女性です‼︎」
言いたいことも言え、スッキリした顔で、姫様を見た。
姫様は、左手を高く上げ、喜びの笑みではなく、怒りの笑みをうかべていた。
あっれれぇ〜、おかしいぞ? ちゃんとオブラートに包んで、姫様が喜ぶように言ったのに、なんで怒ってるだぁ? しかもこの感じ、さっきもあじわった気がするぞぉ?
「どうして、左手をあげてるんですか?」
「分かりませんか?」
「は、ハイタッチかなぁ?うっ、ウェイー」
姫様のあげられた左手にハイタッチをした。
「ふふふ」
怖い、姫様スマイル、怖い。
「分かりますよね?」
「はい」
素直に返事をするしかなかった。
「あんなことを言った後に言われても、全く嬉しくないわぁ‼︎」
バッチィーン
左頬に新しい紅葉を作り、再び地面に倒れた。